【心理学】優秀なリーダーは自分の経験を疑う
優秀なリーダーはメタ認知力が優れている人が多いという事が分かっています。
メタ認知力とは「自分自身を俯瞰して、客観的に観察する力」のことです。
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これは1976年にジョン・H・フラベルというアメリカの心理学者が提唱した心理学用語なのですが、これってとても大切な能力なんですよね。
これは例えば、自分が買い物をしている時に、自分が買った商品を雑に扱う店員に対して
「何こいつ、ムカつくな。」
って思う自分自身を
「あ、今俺ムカついてるな。」
と俯瞰的に認知する事を指します。これがメタ認知です。
この他にもメタ認知力が高い人は
・自分が何が得意で何が不得手かをわかっている
・仕事に取り組むときは、目的や背景を意識している
・自分のやり方がうまくいっているか、確認しながら進めている
・当初の目標に対して結果がどうだったかを確認している
こういう仕事で有利になる特徴を持ち合わせていて、優秀なリーダーはこのメタ認知力が優れている人が多いという事も分かっています。
ただ日本の文化は、知らず知らずのうちにあなたが本来持っているメタ認知力を、下げている可能性があります。
ではその原因は何なのか、どうやって解決していけば良いのか、本日はこれについてお話していきます。
人は無意識に自己評価を間違える
と言うわけで本日も他愛もないお話をしていこうと思うのですが、ここでまず疑問に抱くのが「無意識に間違えるってのはどういうこっちゃ?」って事ですよね。
そんな方はこういうシチュエーションを想像してみてください。
「あれ、前はこうやったら上手く行ったのに今回は失敗した。なんでだ?」
「この前あの上司(目上の人)〇〇って言ってたのに今回は△△って言っていたよ。どっちなんだ?」
「なんで自分ってこうなんだろう。てか自分って何なんだ?」
こういう上に挙げた例を経験した事がある方は多分読者の皆さんの80~90%の方々が「あれ、おっかしいなー」って疑問に思う経験された事があると思うのですが、無意識の自己評価のズレってこういうことなんですよね。
まあ元々無意識のことなので鮮明なイメージを持つ事って難しいのですが、なんとなくイメージできたり「あ、そんな体験ある」って思われたと思います。
そしてこの上に挙げた事が大体人が自己評価を無意識で間違える3つの原因です。
自己評価を無意識で間違える3つの原因
てな感じで80~90%の人って意識的だけでなく、無意識でも自己評価を間違えてしまうものなのですが、じゃあその原因になってるのはナンジャラホイって事ですよね。
昨日の記事でもお話してきたように、組織心理学者のTasha Eurichが約5000人の参加者を対象に行った研究では、80〜90%の人の「自分はこういう人間である」っていうセルフイメージは間違えているという事が分かっています。
要するに80~90%の人のメタ認知力は低いって事なんですよね。
なぜ人がそうやって自己評価を間違えるのかと言うと、人が無意識に自己評価を間違える原因は3つあります。それは何かと言うと
・経験
・権力
・内省
この3つが原因で人は「自分はこうだ!」とか「自分はこの能力が高い」という自己評価を間違えるんですよね。それもこの際言ってしまうと、大体人って自分を過小評価するのではなく過大評価して自己評価を間違えるのです。
・大体の人は自分を過大評価する
自分を過小評価するなら損することはあっても失敗することはありませんが、自分を過大評価してしまうと損をするし失敗もするんですよね。
例えば「俺の能力ではこの事業はできない」って自分を過小評価して新規事業を諦めたとして、もしかしたら成功したかもしれませんが失敗をすることもありません。
逆に「俺ならこの事業は成功させられる」って自分を過大評価して自分が持ち合わせている能力以上の新規事業に突っ込んで行けば、能力が足りないので失敗をするし損もするのです。
だからまあ極論の話ですが、過小評価と過大評価なら過小評価の方がまだマシなのですが、大体の人って自分を過大評価してしまう事がこのTasha Eurichらが行った研究でついでに分かってるんですよね。
そしてもっと言えば自己評価は過少すぎず過大すぎず、正しく正確にする事に越したことはないことはもうこの記事のシリーズを通して僕は自分の耳にすらタコができる程お話ししましたよね。
なので1つ1つこの3つの原因を紐解いていこうと思います。
経験は必ずしも学びではない
ということで、世間一般では「経験」って良いものっていう通念があると思うのですが、2002年にスウェーデンのウプサラ大学心理学部が行った実験では
経験から学ぶ人は、これは前もって調べておこうっていう事前の下調べや、これは間違えているなぜならこうだからだ、という反証的証拠の探求や、果たして自分の考えは正しいのだろうかと自分の思い込みを疑ってみるなどの自己評価の正確性を上げるための能力が低い。
という事がわかったんですよね。
こうやって経験から物事を学ぶって思っている人に限って必要な所で考える事を怠っちゃったりするんですよね。
そしてまた2007年にコロンビア大学が行った実験では
527の組織の3,217人のマネージャー(業務を管理・統括する責任者)とそのマルチソース評価者(複数の人から同じ条件で評価をしてもらう事)からデータを収集した結果、経験がより豊富なマネージャーは経験の浅いマネージャーよりも、リーダーシップ能力に関する自己評価の精度が低かった
という事がわかっています。
という感じで、経験で確かに得することもあるし世の中では経験を頼ることに良い事だとされているのですが、実は経験に学ぶ事や経験が自分は多いという自覚はデメリットの方が多いんですよね。
だからたまに「僕(私)はめちゃくちゃ色んな人生経験をしてきたから君より凄いんだよ」とか「長年の経験は大事だ」みたいなこと言っている人を見かけるのですが、別に経験が多いからと言って精神年齢が高くなるわけでもないし、経験が長いからと言って言っている事が正しいというわけでもないのです。
経験によってメタ認知力は下がるのです。
でも日本には年上の人を敬うという謎ルールがあるので、どうしても事実よりも経験年数が重視されてしまうのが現状です。
人間関係はそれでも破綻しませんが、ビジネスとか経営とかって感情や根性論で動かないわけです。なので「経験」に頼った考え方を取り入れても、デメリットの方が多くなるという事が分かっているんですよね。
経験に頼ったり、経験を重要視する事って大して大切ではなく、本当に大切なことって
「これはそもそも本当に正しいのか?」
「違うやり方はないのか」
というように批判的思考を持つこと(前提を疑うこと)なんですよね。
こうやって物事を考える思考を批判的思考・クリティカルシンキングというのですが、これができると物事をいろんな角度や視点から見る能力が養われるので、これは近年ビジネスで重要視されている能力です。
大切なのは経験ではなく、フィードバックの積み重ねで、そうしてフィードバックを繰り返すから人は自分の弱点や短所を克服できたり、さらに自分の強みを伸ばしていけるのです。
という感じで「経験」って世間では良いものと考えられているのですが、ちゃんと調べてみると「そうでもないよね」って事がわかっているので、自分の経験を過信したり経験豊富だと思うのではなく、大切なことって「自分の経験では確かにこうなんだけど、本当にこれは正しいのか?」って批判的思考を持つ事なんですよね。
ここまで読んでくださった方はその批判的思考(クリティカルシンキング)とは何か、どれぐらい重要なのか、という事を理解されたと思います。
・批判的思考・クリティカルシンキングのやり方
では具体的にどうすればクリティカルシンキングができるようになるのかというと、まず大切なのはクリティカルシンキングとは物事を人とは違った観点から見る事が前提なので、他の多数の人と違う意見を自分が持つ事を許容する事が必要になります。
ただ日本は集団主義国家なので、皆んなと自分は同じでありたいという思考が強い人が多いのですが、それをけろっと無視して、自分の独自の道に行く必要があるのです。
そこからがスタートラインなんですよね。
これより詳しいこのクリティカルシンキング・批判的思考のやり方に関しては、明日の記事でお話していければなと思うので、もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
それでは、最後まで読んでくださりありがとうございました。