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仏像の基本を知ると美術鑑賞や古文がより面白くなる
トーハクで開催されていた「京都南山城の仏像」展に行った時のことです。それまで仏像にはさほど興味がなく、鑑賞のスコープ外でしたが、せっかくの特別展なので行ってみました。展示室から出て何気なく新書版の仏像のハンドブックを買って家で読んでみました。
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仏像の成り立ち、種類、特徴、が簡潔に写真入りで書いてあります。もっと早く仏像の基本を知っていれば日本美術の鑑賞が深まったのに、と悔やまれると同時に、自分の無知ぶりを自覚しました。
仏像は下記に分類され、それぞれ種類があります。
如来:悟りをひらいた仏陀
菩薩:悟りをひらく前の釈迦の姿が基本
明王:悪を打ち砕き仏の教えを伝える使者
天部:仏法の守護者
座り方は、結跏趺坐(けっかふざ)、半跏趺坐(はんかふざ)、などがあり、手の形には施無畏印(せむいいん)、与願印(よがんいん)、定印(じょういん)などがあり、それぞれに意味があります。
このような仏像の基本知識があると、「この寺には薬師如来の立像があるんだな」とか、「ここの毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)は結跏趺坐で定印なんだな」とか分かってきます。更に「この十一面観音像の由来は?」とかもっともっと知りたくなります。
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10月に所用があり京都に行きました。三十三間堂にはなんとしてでも行きたいと思い、時間を工面して訪れました。「十一面千手千眼観世音菩薩(じゅういちめんせんじゅせんげんかんぜおんぼさつ)」が目的です。
月並みな表現ですが、圧巻、絶句、です。世界に誇る美術品だと思います。
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こうなるとトーハクの特別展の仏像をもっとじっくり見たくなり、再訪しました。仏像の基本的な知識があると、鑑賞の仕方が全く違ってきます。また、これだけの貴重な仏像をよく東京に集めることが出来たものだと、特別展の価値にも気がつきました。
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日本美術は仏教と源氏物語の影響を受けている、ということを読んだことがあり、源氏物語はその通りだと思っていましたが、仏像を知れば知るほど、源氏物語以上に仏教は日本美術のベースになっていることにも得心します。
それは美術だけでなく、古文にも。
源氏物語の末摘花の帖に、末摘花のことを表した記述があります。
「まづ、居丈の高く、を背長に見えたまふに、さればよと、胸つぶれぬ。うちつぎて、あなかたはと見ゆるものは鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ。あさましう高うのびらかに、先の方すこし垂りて色づきたること、ことのほかにうたてあり。色は雪はづかしく白うて、さ青に、額つきこようなうはれたるに、なお下がちなる面やうは、おほかたおどろおどろしう長きなるべし」
容姿が普賢菩薩の乗り物の白象のようだ、と末摘花のことを醜女だと言っていますが、普賢菩薩は白い象に乗っているという仏像の基本を知っていれば、思わずにやりとしてしまう箇所です。
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トーハクの法隆寺宝物館にもよく行きますが、これまでは展示室を俯瞰的に見たり、この空間で静かに沈思していましたが、1体1体の仏像を前後左右からじっくり見るようになりました。
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10月以降、仏像関係の本を何冊も買いました。出張にも仏像の本を持参して飛行機の中で読んでいました。仏像の知識はワインの知識のようです。仏像を見たくて寺巡りをしたいと思っていますが、人生100年とはいえ残りの時間は限りがあります。還暦近くなってから仏像の基本を知ったことが悔やまれますが、今年の最大の成果でもあり、まだまだ勉強中ですがこれからの楽しみが増えました。
参考文献 「よくわかる仏像ハンドブック 池田書店」
写真は、トーハクで展示されている文殊菩薩騎獅像および侍者立像(もんじゅぼさつきしぞうおよびじしゃりゅうぞう)。