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おばさん部長、転職でうまくいかない日々、スイッチを入れてくれたのは部下の力でした

 私より、無謀でおっちょこちょいな転職をする人っているのかしら。
 6年前、40代半ばのおばさん部長にして、古き良き日本企業から、いわゆる外資系企業に、思うところあって転職。管理職転職は本当に難しいと言われているのに、外資系、しかも異業種という別世界でした。リスクも覚悟の上で、2.3年しかもたないかもしれないけどやってみようと.

 いやー、想定以上の、それこそ天と地がひっくりかえるような転職でした。会社のタイプもカルチャーも全く違って。七転八倒して、泣いて怒って、3年必死で働いて、5年サバイバルして、まあんなんとかなって。人として会社員として復活したので。転職して苦労してる人や、失敗しちゃったなーと思ってる人、特におじさんやおばさんで転職して辛い思いをしている同胞に、これ読んで少し気が楽になってもらえたらなと思って書いています。



 管理職で外資系で異業種に転職、壁にぶち当たりまくりました。

 まず異業種の中ではマイノリティなので理解されず、正当な評価を得るのが難しい。
 私はクリエイティブのできる人材が必要ということで望まれて期待されて採用されたのに、入社してみれば完全アウェイで、99%の人はクリエイティブがなんだかなんてわからない、興味もない、私が、具体的に何ができないかもわからない。できないことをたくさん求められ、得意なことなんてほぼ求められない。毎日毎日、理解されず評価されないことへの怒りに満ち溢れていいたと思います。

 そして異業種でさらに管理職だと、その会社、その業界ののビジネスの基礎を誰も教えてくれず、力を発揮するのに時間がかかること。
 さらに実力発揮できないまま、メンバーの信頼を得て強いチームを作らなくてはいけないこと。
 そんな中で、自分はビジネスパーソンとして全くできない人で、馬鹿なんじゃないかと、自分をダメだと感じる気持ちを止めることができませんでした。いつも見方を変えようと努力していたけど、不安定で、ベースをポジティブな気持ちにすることが難しかったのです。

 そして外資系。正確には外資との合弁会社なのですが、カルチャーは勢いのある外資系企業的。事業が成長し大きな利益を上げているエクセレントカンパニー。つまりは、成果とポジションで給料は一桁、二桁違い、社員に競争させ、桁違いのお金が絡んだ競争は人の嫌なところを炙り出す、という世界。炙り出されなくても良かったような小狡さや意地悪さやパワハラや自己保全やをたくさん見て、私は会社の7割の人が嫌いになりました。



 ネガティブな精神状態、理解され評価されないことへの怒り、アグリーな面が見えてしまう周りの人たちへの不審、それらが悪循環していました。その上、実力は発揮できず、自分はできてない、と感じているまま。

 そのまま3年働きました。石の上にも3年で、3年はそれでもなるべく何にも考えずただ働こうと思っていたから。習うより慣れろで慣れてきました。辛い思いもしたけど、担当のプロジェクト自体には、情熱も、楽しさも、期待もあったから。それから、いろんな人や本や言葉にヘルプを求め、どんどん強くなりました。
なかでも「できてることに目を向ける」という、カウンセラーのアドバイスは
は効きました。そして徹底的に完璧主義をやめて、6割よければ十分だと考えるようにしたこと。それから支えてくれた優しい夫と息子。こんな幸せな人生と生活を大切にして楽しもう、と思うようになりました。
 その間に、それなりに評価され、給料も多少上がりました。



 そうやって、少しずつ私はエネルギーを取り戻していったのですが、本当に復活させてくれたのは、チームのメンバー(部下)でした。仕事においての悩みのほとんどは実は人間関係だという説がありますが、私の場合、仕事で大きな力をくれものも人間関係でした。

 それは5年目の「360度評価」で二十数人の自分のチームのメンバー(部下)+アルファの同僚たちの私への評価が、レポートラインの上司に「こんなスコア見たことない」と言われるほど高かったことでした。「上司として信頼できる」「尊敬している」「方向性が明確でフィードバックがわかりやすい」「いい物を作ろうという気持ちが伝わってくるので、一緒に頑張ろうと思える」「仕事も家庭も両立していて自分のロールモデル」といったコメントが溢れるほどたくさん書かれていました。

 転職して初めて、嬉しくて泣きました。転職後、おばさんにもなって、辛くて悔しくて泣いたことは数えきれなほどあったけれど、嬉しくて泣いたのは初めてでした。十分にチームを引っ張っていってあげられてないのではと思ってきたのに、自分はできてないと思ってきたのに、周りの人はアグリーで信用できないと思ってきたのに、理解され評価されていないと怒ってきたのに。一番身近にいる自分のチームのメンバーが、できているところを理解して評価してくれ、信頼してくれていたのでした。私が自分なりに当然のこととして貫いてきたこと、人に喜ばれるいいものを作ること、部下には心から寄り添い楽しくモチベーション高く働けるようにサポートすること。それもちゃんと理解され評価されていたのです。

 結局、私を完全に復活させてくれたのはチームのメンバーたちでした。この子たちのために頑張らなくてはいけないな、と思わせてくれたことに感謝の気持ちが湧いてきました。そして転職して初めて、私の中でポジティブな感情の好循環へのスイッチが入ったのです。意外な方向から、意外な形で、そのスイッチは入ったのです。



 会社員として、うまくいかなくても3年5年やること、葛藤すること。ピッタリの適性や相性ではなくても、まあまあ合ってると思えば、いいところを見つけて続けてみること。そうすると、意外な方向から、素敵なものが降ってきて、明るい光のさす出口が見つかる、そんなこともあるのです。そして私は、そうやって6年会社員としてサバイブした自分を心の底から誇りに思っています。おばさんにもなると、誰も褒めてくれないけれど(夫と息子と一部の友人だけ。十分ですね。)、自分をうぬぼれではなく真に誇りに思うことは少ないから、これは私をとてもしなやかに強くしてくれた、なかなかいい経験なのではないか。後から振り返ると、きっとしみじみそう実感するのではないかしら、と思っているのです。

#会社員でよかったこと   

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