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読後寸評

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読んだ本で感じたことを綴っています。 好きな作家はラディゲですが、最近よく読むのはジェンダー論。A4用紙1枚程度で、800〜1000字程の感想文です。
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#小説

三島由紀夫が描いたスノビズムとデカダンスの長編「鏡子の家」

三島由紀夫が描いたスノビズムとデカダンスの長編「鏡子の家」

本(鏡子の家)(長文失礼します)

三島由紀夫の長編小説です。文庫本で620ページ程もあるので、なかなか読み進まず読了まで1カ月近くかかってしまいました。資産家の令嬢である鏡子の家に集まる4人の男性の変貌を描いたもので、物語は1954年から56年までの2年間がその舞台となります。

この作品の書評を読む限りでは、作品としては成功作といえず三島自身もそのことを気にしていたとのことですが、確かに私も読

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時代を超えて読み継がれる太宰治の自伝的小説「人間失格」

時代を超えて読み継がれる太宰治の自伝的小説「人間失格」

本(人間失格)

太宰治の自伝的小説と言われ、太宰の代表作とも評される作品です。ある資料によれば新潮文庫の歴代ベストセラーを夏目漱石の「こころ」と競っているとのことですが、それほどまでに近代日本文学では多くの読者に読み継がれている名作です。

正直私は太宰の愛読者ではなく、本書を読むきっかけになったのは、三島由紀夫の同様な自伝的小説である「仮面の告白」との対比で「人間失格」が登場したことであり、い

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恋愛とエゴイズムの葛藤を描いた文豪夏目漱石の名作「こころ」

恋愛とエゴイズムの葛藤を描いた文豪夏目漱石の名作「こころ」

本(こころ)

文豪夏目漱石の長編小説です。有名な小説であり、私も学生の頃、日本文学の教科書的意味合いで読んだと思いますが、恋愛とエゴイズムの葛藤といった漠然とした記憶しかありません。

今回再読しようと思ったのは、読書グループでの三島由紀夫の「仮面の告白」の感想文を読み、同様の自伝的作品に挙げられていたのが、太宰治の「人間失格」とこの本でした。「こころ」は正確には自伝的というよりは自己投入型の作

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三島由紀夫が描いた衝撃の結末!小説「愛の渇き」

三島由紀夫が描いた衝撃の結末!小説「愛の渇き」

本(愛の渇き)(敬称略)

三島由紀夫の小説で、「文豪ナビ 三島由紀夫」で作家の小池真理子が、印象に残った作品として「金閣寺」や「春の雪」を始めとする「豊饒の海」の他に、「獣の戯れ」と共にこの小説を挙げていました。

「獣の戯れ」はフランスの作家ラディゲを意識した心理小説でしたが、この作品も主人公・悦子の心の葛藤を描いています。病死した夫の義父の計らいで、義父家族が住む別荘兼農園に移り住みますが、

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三島由紀夫がラディゲに対抗した小説「獣の戯れ」

三島由紀夫がラディゲに対抗した小説「獣の戯れ」

本(獣の戯れ)

三島由紀夫の長編小説で、昭和36年6月から9月まで13回に渡って週刊新潮に連載され、その後単行本として出版されました。「文豪ナビ 三島由紀夫」ではこの小説を、フランスの小説家ラディゲに対抗した作品との解説があり、その影響を受けたとも書いてあります。

個人的にも大学生の頃、当時女子大生の間でラディゲブーム(多分)が起きており、私も読んでみましたが「ダイヤモンドのような硬質で華麗な

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人生の別離を描いた短編集の直木賞作品「夜に星を放つ」

人生の別離を描いた短編集の直木賞作品「夜に星を放つ」

本(夜に星を放つ)(ネタバレありです)

今年下半期の直木賞受賞作品です。同時に発表される芥川賞は文藝春秋で読んでいますが、直木賞の方はオール讀物では全文が掲載されないので、単行本を買ってまで全文を読む機会はなかなかありませんでした。
ただ今回はその書評を読み、冒険物や時代活劇ではない内容に惹かれ、単行本を買って読んでみました。

本の題名は短編集のもので、各タイトル5作品が収められており、タイト

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本「この30年の小説、ぜんぶ読んでしゃべって社会が見えた」

本「この30年の小説、ぜんぶ読んでしゃべって社会が見えた」

本(この30年の小説、ぜんぶ読んでしゃべって社会が見えた)

作家の高橋源一郎さんと文芸評論家の斎藤美奈子さんが、雑誌で対談した記事を1冊にまとめた本です。雑誌「SIGHT」で、2003年からその年に発行された小説の中から、両者と編集者が選んだ本について、年末に総括するという企画です。

その中から本書に収められているのは、東日本大震災が発生した2011年~2014年、さらに休刊後の2019と20

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読んでみました‼️話題の節約小説「三千円の使いかた」(^-^)

読んでみました‼️話題の節約小説「三千円の使いかた」(^-^)

本(三千円の使いかた)

新聞の書評欄で紹介された話題の本ということで、原田ひ香著、文庫本だったので買って読んでみました。本の帯に「節約」家族小説と書いてある通り、家族の日常の生活を描きながら様々な節約術や財テクが出てきます。

登場人物は祖母、母、長女、次女のそれぞれの日々の生活が描かれていますが、その生活の背景も世代別で様々です。祖母は夫を亡くした後、年金に加え夫の退職金や預貯金が生活の支えで

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