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読後寸評

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読んだ本で感じたことを綴っています。 好きな作家はラディゲですが、最近よく読むのはジェンダー論。A4用紙1枚程度で、800〜1000字程の感想文です。
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2022年8月の記事一覧

職場の人気関係を描いた芥川賞受賞作品「おいしいごはんが食べられますように」

職場の人気関係を描いた芥川賞受賞作品「おいしいごはんが食べられますように」

本(おいしいごはんが食べられますように)

今年下半期の芥川賞受賞作品です。毎回受賞作は文藝春秋を買って読んでいますが、今回は職場の人間関係を取り扱ったもので、筆者自身が会社員のためか、実体験を基にしたと思われる描写が数多くあります。

文体は、三人称と主人公の男性と同僚の女性が語る一人称の3つに分けられて、それぞれが職場の人間関係への本音を吐露しながら、物語は進行していきます。

まさに実際の会

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わかりやすく簡潔な短文を書くための指南本「朝日新聞記者の200字文章術」

わかりやすく簡潔な短文を書くための指南本「朝日新聞記者の200字文章術」

本(朝日新聞記者の200字文章術)

副題が「極小コラム「素粒子」の技法」というもので、朝日新聞夕刊1面の「素粒子」担当執筆者だった筆者が、文章をいかに短くわかりやすく、簡潔に書くかを指南した本です。 

先ずは日本語の特徴を捉えた修辞的技法を説いています。具体的には主語や形容詞、接続詞を省略して、必要最低限の文章構成とします。また最近の文章では一般的になったオノマトペ(犬の「わんわん」や心臓の「

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「ポパイ」や「ブルータス」でお馴染みの編集者・都築響一さんの新刊「圏外編集者」

「ポパイ」や「ブルータス」でお馴染みの編集者・都築響一さんの新刊「圏外編集者」

本(圏外編集者)(長文失礼します)

雑誌「ポパイ」や「ブルータス」で活躍した編集者の都築響一さん著の本です。学生の頃から「ポパイ」で編集アルバイトを始めて、その後フリーの編集者となり数々の話題の本を出版している気鋭の編集者といえます。

私自身も「ポパイ」や「ブルータス」の編集者時代から名前は知っていましたが、やはり一躍注目されたのは写真集の「TOKYOU STYLE」だったと思います。それまで

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ほっこり癒される昼飲み‼️の本「ランチ酒」(^ ^)

ほっこり癒される昼飲み‼️の本「ランチ酒」(^ ^)

本(ランチ酒)

ランチを食べながらお酒を飲む昼酒の本(小説)です。主人公の女性は夜の仕事ですが、お水関係ではなく、見守り本舗に勤める夜中の見守り屋という設定です。30歳過ぎのアラサーのバツイチで1人暮らし、娘は祖父母と同居する父親が引き取り、月1回の面会が許されています。 

見守り屋の営業時間は夜の10時から朝の5時までで、何かこう書くと思わず深夜食堂を連想してしまいます。多少の仕事時間の変更

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元記者の内部告発ノンフィクション本「朝日新聞政治部」

元記者の内部告発ノンフィクション本「朝日新聞政治部」

本(朝日新聞政治部)(長文失礼します)

朝日新聞の敏腕記者だった鮫島浩さん著の本です。将来を嘱望された政治部記者でしたが、福島原発事故の吉田調書報道問題で退社し、現在はフリーのジャーナリストとして、ツイッターなどのメディアで発信を続けています。

京大法学部を卒業後に朝日新聞に入社してから、退社するまでを異動などを交えて時系列的に綴っていますが、本の帯にもあるように内部告発のノンフィクションとな

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