九條です。
仏教では、心(魂)の在り方について10種類(10ランク)の世界観を説いています。ここで言う「世界」とは「境涯」すなわちその人の心の住処(魂のベースとなっている世界)の事です。
この10の世界(境涯)を「十界」といいます。「(旧約聖書の)十戒」ではなくて「十界」です。
この「十界」の教えは古くから仏教の中にありましたが、中国は隋の時代の智顗(天台大師)というお坊さんが分かりやすく纏めました。それを「十界論」といいます。
この「十界論」はその後、大陸・日本の多くの仏教宗派に多大なる影響を与えました。
では、以下に具体的に心の中の10の世界すなわち「十界」を下から上へ(魂のレベルの低いほうから高いほうへ)順に、ごくごく簡単にみて行きたいと思います。
一般的な仏教では、同じ境涯(ランク)の人どうしが集まりやすい(群れを作りやすい)と言われています。
そして私たち凡人はまず「二乗」を目指し、そのうえで「二乗」に満足することなく「菩薩」の修行(菩薩行)をひたすら実践することによって仏に救われる(仏としての悟りを開いて「仏界」の住人になれる)といわれています。二乗に満足して菩薩行を怠っていては絶対に救われない(二乗不作仏)と説いている経典もあります。
私(九條)が学び信仰している古代仏教の南都六宗のひとつである法相宗(唯識仏教)の教えでは、これら10の世界すなわち「十界」は、自分の外にあるのではなくて、全ては自分自身の心の中の世界、すなわち心のありか、その時その時の心の状態を現したものだとされています。
人は何千回、何万回も生まれ変わりながら、ずっとずっと長い間「六道」をグルグルグルグルと行き来しながら(六道輪廻しながら)少しずつ魂のレベルを上げて行く。
そうして行くうちに「六道輪廻」から抜け出せて「二乗」へと進む。そこでまた何千回、何万回も生まれ変わりながら、少しずつ仏教に縁をして仏教を学びながら魂のレベルをさらに上げて行く。
すると、やがて人間の姿はしているけれども心は「菩薩」となってこの世に生まれて来る。そうして人々を救いながら修行(菩薩行)をすることによって、やがて仏に救われて行く(仏の力に包まれて揺るぎない幸福な境涯を得ることができる)。
などと教えています。
さてさて、いまの私(九條)の魂は、どのへんのランクなのでしょうかねぇ?
※もしよろしければ、こちらの記事もご覧になってください。^_^
【おもな参考資料】
◎『望月仏教大辞典』1974年
◎志磐『仏祖統紀』(『大正新脩大蔵経』49 普及版 1990年)
◎護法『成唯識論』(竹村牧男『成唯識論を読む』2009年)
※その他、興福寺仏教文化講座で学んだことなど
©2022 九條正博(Masahiro Kujoh)
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