うつの診断を受けた「いい子」のるり
睡眠外来であっさりとうつの診断
2023年3月。るりは初めて、大学病院を受診しました。かかったのは精神科の中にある睡眠外来です。
その頃のるりは、とても疲れて重苦しい様子でした。昼間は強烈な眠気に襲われ過眠するものの、夜になると目が冴えてしまう、と。「ママが隣にいると寝られる」と言って、夜は私のそばにいたがりました。
るりと私は、一人ずつ診察室に呼ばれ、私は最近のるりの様子を伝えました。そして、最後に二人で一緒に診察室に呼ばれると、医師から「うつ傾向です。」と告げられました。
るり自身は「やっぱりそうだったんだ」と思ったようですが、身体的な病気であってほしいという私のかすかな希望は打ち砕かれました。やっぱり、メンタルなものだったんだ。わかっていたけれど、とてもショックでした。
医師は「勉強や課外活動を頑張りすぎて、無理が生じたのではないかと思います。これは骨折のようなもので、折れているのに使い続けたらより悪化してしまう。まずは2週間、しっかり休んで様子を見ましょう。必ず治るから、症状が重くならないうちに休むのが大切です。」と言いました。
娘がうつになってしまった。母としてとてつもない衝撃でした。
精神薬の投薬に悩む
うつ病か…。どうしたらいいんだろう。のちのち、投薬をするかどうかということも、親として判断をしなければいけなくなるんだろうか?
私は以前、元夫の不倫から離婚に至るまでの期間に抑うつ傾向に陥り、3年半ほど、精神安定剤を飲んでいました。るりが3歳から7歳ぐらいまでの頃です。薬のおかげでなんとか仕事や育児をしていましたが、睡眠や不安の克服を薬に頼っていたため、断薬するのには勇気が必要だったことを覚えていました。まだ成長途中のるりに精神薬を飲ませ、依存しないだろうかと心配になりました。
また、私自身は、薬よりもカウンセリングで自分の気持ちを整理するほうが本質的な解決につながったため、薬だけ飲んでも思春期の複雑な心のモヤモヤは解消されないだろうと思い、るりにカウンセリングをすすめました。
早く投薬治療を始めたかったるりは、投薬治療に否定的だった私のことを、「母も私のためを思って色々考えてくれていたのだと思いますが、知識や理解がないというのは怖いことでもありますね」とブログで、書いています。
でも、るりは私のすすめに応じて、カウンセリングを受けに行ってくれました。
私とるりの苦悩とは裏腹に、例年になく早く開花した桜が、満開を迎えていました。ヘッダーの写真は、るりとの最後になった花見で見た桜です。るりとは毎年欠かさず、花見をしていました。るりの好きなおいしいパンを買ってレジャーシートを敷いて、普段だったら喜んでくれたのに、るりは体も心も重く、しんどそうでした。それでも桜の写真を何枚も撮っていたのは、るり自身も、生きたい、楽しみたいと願っていたからでしょうか。
カウンセリングで語ったことは本当の悩み?
初回のカウンセリング後、カウンセラーさんから、「るりさんと相談の上、お母様にお伝えしたいことがある」と電話がありました。
その内容は、「担任の先生の圧が強くてとてもしんどいので、高3に進学したらこの先生が担任にならないようにしてほしい」というものでした。私は、「え?相談した内容は担任のことなの?」とあっけにとられました。
確かに、担任の先生は生徒に必要以上に接近し、勉強や部活などに関して強い指示を出しては、生徒や親に「行きすぎた指導だ」と言われることがありました(一部の親や生徒には「面倒見がよく熱心な先生だ」と好評でしたが…。)が、これがうつ病になるほど大きな問題だとは思えませんでした。
私から見て、るりは、本当に辛いことをなかなか人に伝えることができなかったように思います。自分自身でも、辛い問題を直視して認めたり言語化したりすることができなかったのかもしれません。それに蓋をして、担任がしんどいというような、相手に理解されやすいストーリーを自分の悩みとして語ってしまうところがあったように思います。あるいは、そのストーリーは本当の問題をほのめかすヒントだったのかもしれません。
担任が一番の悩みとは思えませんでしたが、このカウンセラーさんのすすめで学年主任に抑うつ傾向にあることを早く報告し、その後、連携できる体制ができたことはとても良いことでした。学年主任は、るりが精神科にかかったことを聞き驚きましたが、クラス替えにあたり、なるべくストレスがかからないように担任やクラス編成を考慮してくれました。
辛いと言えない「いい子」
医師の指示通り、なるべく休むようにしましたが、るりの精神状態はどんどん悪化していきました。にもかかわらず、るりは、「自分だけが悩んでいるわけではないのに、自分だけ苦しいというような『わがまま』を言ってしまっていいのだろうか」とも言っていました。「わがまま」なんかではないのに。
小さい頃から、るりは聞き分けがよく、我慢強く、「いい子」でした。めったに怒らず、いつも気分が穏やかで安定しているように私には見えていました。印象的だったのは、小さい頃から、病院で注射をする時に全く泣かなかったことです。我慢できる自分を誇りに思っているようでした。
今から思えば、るりの幼少期、私が離婚前後に抑うつ状態だったため、ママのことを心配して、そうせざるを得なかったのでしょう。「辛い」と言えない子にさせてしまいました。それが発症につながった気がしています。
小さい頃、子どもらしく、自分の欲求を思うがままに言える環境だったら。ごめんね、るり。我慢させて、ごめんね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?