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大きな人

河合 隼雄さんと小川洋子さんの書いた本
「生きるとは、自分の物語をつくること」
を読んだ。

河合 隼雄さんは、臨床心理学者の先生で、
カウンセラーもなさっていた人。

その本の中に、
聴くことの難しさ、大切さが書かれていた。

河合先生は、患者さんに「寄り添う」ことを大切にされていたようだった。

その人の世界から出ない。
切り離さない。

重たい精神病を抱える患者さん相手に、
無理に話を聴き出すでもなく、
勝手に相手の状況を予想して、
「頑張ってね、また明日」と切り離すようなこともしない。

無理に元気づけようとするのも、
弱っている患者にはたまったものではないとのこと。

相手が話出すのを黙って待つというのは、
とても難しく、訓練が必要なことらしい。

黙っている間、そこに心が無かったら、
(別のことを考えていたり)
その人の世界からは出てしまったことになる。

その人の世界にずっと留まった状態で、
黙っているということは、とても難しいことだ。

そんな風に、患者さんに寄り添ってあげられる精神科医やカウンセラーさんってどれくらいいるんだろう。

河合先生の人としての大きさに驚いた。

患者さんと同じ場所まで降りていき、
その世界に留まるということは、
絶対簡単じゃない。

そして、対応を間違えれば、
その人は死に至る。

河合先生は、戦いだと仰っていた。

また、カウンセラー中に見聞きしたことは、
誰にも漏らしてはいけない。

本書の中で、小川さんが、(博士の愛した数式を書かれた作家さん)アンネフランクを匿った人が、
何が一番大変だったかと聞いたとき、
「匿っていたことを隠していること」と答えたそうだ。

食事の手配や、生活の大変さではなく、
「秘密」を抱えているということが辛かったと。

誰にも言えない秘密を抱えることは、
人にとって負担が大きい。

(だからこうして、思いの丈をnoteに書くのかもしれない。)

河合先生は、
「僕はアースされているから大丈夫」
という。

どんな秘密も、重たい出来事も地球に返してしまうのだと。

だから、すぐに忘れてしまうし、でも必要な時には、思い出せたらしい。

自分で抱えているわけではないという。

「寄り添ってもらえる」ということは、
人にとってどれほど救いになるだろう。

一般社会で生きていたら、いちいち出会う1人1人に寄り添っていることなどとても出来ない。

それどころか、
たった1人にも私は寄り添える自信はない。

あんまりひどい愚痴を聴かされ過ぎて、
体調を崩して、弱り、40度の熱出たことがあるし、

それくらい人1人の重さというのは、
重たいと思うのだ。

それを思うと、
河合先生は、とてもとても大きな人であったのだと思う。

精神的に悩んだことのある方は、
是非一度彼の著作を読んで欲しいと思うくらい、
押し付けがましくなく、温かく寄り添ってくれる方だ。
(会ったことはないし、もう亡くなっている方だけれど、その著作にお人柄が滲み出ている。)

「アースする」力、私も欲しいなあ。

もちろん簡単に身に付くものではないと思うけれど。

他人の感情を拾い過ぎて、
疲弊しないように努力しているけれど、
それでもやっぱり疲れるから、

「アース」出来たら、
全部「地球お返し」できたら、
もっとイキイキ元気健康的いられそう。

イメージだけでも、
ネガティブな思いをぶつけられそうになったら、
「地球に返す」と思おう。

とても、私1人では受け止められないから。

そして自分の中に溜まったネガティブな思いも、
地球に返すのをイメージしよう。

また、河合先生は、自分が患者を治すという心持ちではなく、

患者さんによって、教えられ、鍛えられ、
訓練されていると仰ってる。

あらゆる人間関係もそうかもしれない。

あんなに立派な先生なのに、
そういう謙虚な姿勢を崩さないところも、
大きいなあと思うのです。

この本の最後の小川洋子さんのあとがきに、
レベッカブラウンさんの「家庭の医学」
という、レベッカさんが、ガンのお母さんの最後を看取った時のエッセイ本の紹介があるのですが、

それを読んで、私も読んでみたくなり、
大きな本屋さんへ行ったところ、

「家庭の医学」はなかったのですが、
同著者の「体の贈り物」という本を見つけたので、
さっそく読んでみました。

重病で動くこと、食べることがままならないような患者さんのホームケアワーカーとして働く主人公が、患者さんと接する日常の中で、
私たちが与えられている贈り物について気がついていく様子を描いた小説なのだけれど、

著者が実際にホームケアワーカーだったこともあり、胸に迫る、でもとても温かい物語でした。

汗の贈り物
充足の贈り物
涙の贈り物
肌の贈り物
飢えの贈り物
動きの贈り物
死の贈り物
言葉の贈り物
姿の贈り物
希望の贈り物
悼みの贈り物

どれも、健康なうちには、
気がつかないものばかり。

1話1話は短いけれど、

陳腐な物語ではなく、
本当に良い本なので、
是非、多くの人に心からオススメできる本だと思いました。

このレベッカさんという方も
とても大きな心を持った方だと思います。

心と体。

寄り添うことの温かさ、
それによって、
お互いが得る救いについて、
考えさせてくれる2冊の本でした。

心の大きな方の書いた本は、
人の心を救うことがあるんじゃないかと、
私は思っています。

そして、救われた人から、
小さな平和の輪が広がっていくんじゃないかなって、勝手に思っています。











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