小説/桜色のマニキュアとハチワレの空
桜色のマニキュアだった。
ター子の汗ばんだ手のひらの上に置かれたそれは、今の季節にピッタリの、お化粧なんかしたことない私たちにピッタリの、小さな瓶にめいっぱい詰まった、薄いピンクのマニキュア。
「かわいい。どうしたの、これ」
笑顔で聞く私と対照的にター子は怒ったような真っ赤な顔で私に言う。
「どうしたのって! ボンちゃんが言ったんじゃん!」
「私が? なんて言った?」
そんな顔で怒るから男子にター子じゃなくてタコって呼ばれちゃうんだよって言おうかと思ったけど様子がおかしか