小説 #13 ソル、FHと対峙する。
僕は再びFHの屋敷を訪れていた。また夕刻。今日も庭師が灌木の剪定をしていた。僕の眼には、庭木はもうきっちり整っているように見えるのだが、庭師からすると、毎日どこかしら直すべきところがあるのだろう。
「あなたは記憶を無くしてなどいないと思います」僕はフェイ・フュー(FH)に言った。
また今日も紅茶が出され、ベルガモットの馥郁たる香りが部屋を満たす。
「どうしてそう思う?」ティーカップをそっと下ろして、FHが僕に聞き返す。
「なぜなら、僕にはあなたの世界を見ることができる