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SF小説|Being Covered

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仮想空間にある文学バー《Chatsubo》に集う、カラフルな人物たちの物語。あらゆる出来事が、タロットのカードのように表象的になる一方で、モノの質量は増加を続ける。物質⇆非物質の…
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今日の《Chatsubo》。ソル、FH、壺井、アルジズ・・・。いつもの顔ぶれが仮想的文学バー《Chatsubo》で飲んでいる。濃密な茶室的空間がいや増す。まったりとした夜の時間はまだまだ続く。今日は誰が打ち明け話を始めるのだろう・・・?

chatsubo
1年前
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小説 #01 依頼はあくまでも困難で高額。

ある日、ソルにエージェントのアルジズから依頼が来た。アルジズはソルのゴーストライターとし…

chatsubo
1年前
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小説 #02 ソル、クライアントに会う。

僕は新しいシャツを着てFH(フェイ・フュー)の屋敷を訪れる。彼女と会うまでに、無意識裡にいろ…

chatsubo
1年前

小説 #03 stray sheep

作家FH(フェイ・フュー)が、僕を雇う理由を話し始めた。 「・・・自伝を書こうとしているの。途…

chatsubo
1年前
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小説 #04 ゴーストライターは影として何をするのか。

僕はフェイ・フューの屋敷で彼女の話をヒアリングしている。彼女が書こうとしていることが、ど…

chatsubo
1年前
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小説 #05 アーカイヴ屋・壺井が記憶のアクセスを伝授する。

ゴーストライターである僕は作家FH(フェイ・フュー)を担当することになった。FHは、自分の記憶…

chatsubo
1年前

小説 #06 ソルは図書室でグリーンマンと遭遇する。

ゴーストライターのソルが、自身に去来する記憶を語る。 僕はかつて、図書室でグリーンマンに会った。緑色のふさふさした毛が生えていた。まるでセサミストリートに出てくるクッキーモンスターを緑にしたようなやつだ。グリーンマンとの出会いが、僕の軌道を決定的に変えてしまうことになる。 僕はその日、大学院の図書室で調べものをするところだった。図書室は地下にあり、施設の充実ぶりをアピールするための未来感を発光しているメインの図書館とは全く雰囲気が違って、そっけない場所である。用事のある院

小説 #07 壺井少年@アメリカ議会図書館

大学院生だった僕はその日、修論の資料を集めるために議会図書館を訪れた。当時、フィールドワ…

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1年前

小説 #08 壺井と若い衆とヴィークル。

壺井は、人の記憶をアーカイヴしておくアーカイヴ業を営んでいる。顧客たちの多くは、裕福な女…

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1年前

小説 #09 アルジズと「プラムとイノシシ」の記憶

わたしは文芸エージェントをしていて、作家フェイ・フュー(FH)を長く担当している。FHは極めて…

chatsubo
1年前
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小説 #10 FHの古層の記憶

ソルが作家フェイ・フュー(FH)の記憶をたどるために、彼女の記憶世界へ没入する。 ダイヴは深…

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1年前

小説 #11 ソルは冗長性のパラメータをいじる。

小さな巻き毛の女の子が、わっかを棒で転がしながら走り回っている。 ああ、明るい場所だな~…

chatsubo
1年前
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小説 #5-2 フェイ・フューが記憶をヴィークル社に保管する理由。

・・・フェイ・フュー(FH)がいつものように、ノートにペンを走らせている。時刻は朝の4時半。彼…

chatsubo
1年前
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小説 #5-3 彼女はヴィークル社でトポロジーを解析された。

作家・フェイ・フュー(FH)は、人の抽象世界の情報をストレージしてくれるという、ヴィークル社の壺井を訪れる。 彼女がそのような決断をした理由は、まだ杳として知れないが、作家としての自らのキャリアのために何かしら資するところがあると考えたのかもしれない。もしくは、フェイが懇ろにしている女友達、裕福で知性に溢れ、でもどこか惓んでいる女たちは、みな記憶を抽出されたがっている。そんな女たちの気まぐれな性癖に倣ってみただけかもしれない。 壺井のスタジオは、チャイナタウンにある大きな中