子供のためのオルセー美術館(71)誰の手?/動きを見る目・追求するドガとアングル
このふたつの手は誰の手?
びっくり、手だけの絵!
この手は、バレエの絵で有名なドガが描きました。
人はどんな表情をするのか、手や足はどういう動きをするのか。
ドガは、いつも細かいところをよく見て、とても正確にデッサンをするので有名でした。
手の表現も素晴らしかったのです。
でも、今日のこの手は、バレエのじゃないみたい。
さあ、このふたつの手はいったい誰の手でしょう。
実は、この絵の中のどこかに描かれているんです。
なんでみんながいろんな方を向いてるの?って評判になった、ちょっと変わった家族の肖像画。
見つかった?
ここと
あとここに。
そして1人だけこっちを見ている女の子の手も
何度も下絵を描いてできあがりました。
ドガの尊敬する昔の画家、アングルもまた、手を描く練習をたくさんしていました。
シェイクスピアの手もあるんだって!どれだろう。
画家たちは、大きい絵を描く前に、細かい動きまで表現できるように何度もスケッチをしてから、大きな本当の絵を描いていったのです。
Edgar Degas
Étude de mains 1859-1860
エドガー・ドガ
手の習作 1859-1860
Edgar Degas
Portrait de famille dit aussi La famille Bellelli
Entre 1858 et 1869
エドガー・ドガ
家族の肖像 1858-1869
Jean-Auguste-Dominique INGRES
Études pour L'apothéose d'Homère (1827, Louvre) : mains de Virgile, Corneille, Euripide et Shakespeare 1826-1827.
ジャン=オーギュスト・ドミニク アングル
ホメロスの神格化(1827年、ルーヴル美術館)のための習作:バージル、コルネリウス、エウリピデス、シェイクスピアの手 1826-1827 ルーブル美術館
お読みいただきありがとうございました。
研究熱心なドガの、人間の動きをとことん追求する一面をご紹介しました。
ドガは第一回印象派展から参加、印象派の画家たちとも交流をしていましたが、その様式は印象派とは違うのがお分かりいただけると思います。比類ない見事なデッサン力、知的な様式はさながら古典ともいうべきところですが、革命的な近代主義者でありました。このなんとも不思議な家族の肖像をはじめ、当時の古いスタイルに真っ向反発しながらも、サロンの審査員をも納得させる伝統的な技術も持っていてサロンにも入選するわけです。
この家族の肖像画は手だけでなくご紹介したいところがあるドガの傑作ですのでまた改めて取り上げます。
それにしても今日の参考作品、皆様にも人気の青のバレリーナ、舞台袖の様子も華やかで可愛らしいですね。
でも今日はどうぞ、ルーブル美術館からの巨匠アングルの絵と共に「手」をご覧ください。