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加平小学校(東京都足立区)の栄養教諭に聞く、学校給食に込めた子どもたちへの思いとは

「おいしい給食」を推進する足立区。各校の調理室で手作りされる給食は、子どもたちの体も心も豊かにすることを目指しています。東京都足立区の加平小学校では、おいしくて、栄養バランスのとれた献立、栄養教諭によるランチルーム給食や食育指導の実施など、学校給食を通して子どもたちの社会性も育んでいます。食べることだけでなく、食に関する環境問題や食への関心も高める給食の時間。どのようなお考えをもって学校給食や食育指導に取り組まれているのか、取材しました。

お話をうかがったのは
東京都足立区立 加平小学校
栄養教諭 杉本 なおみさん 

※2023年11月取材。本文中の肩書きは取材時のものです。

より近い距離で、子どもたちと関わるために

まず、私の職種である「栄養教諭」についてですが、学校給食の運営管理と食に関する指導、この2つを大きな仕事としています。学校給食と食育指導を一体感をもって進めていく立場にあり、栄養士が「教員」として学校に携わることになります。つまり、子どもたちに対して栄養や食事などに関する授業を行うことができるのです。私自身もともと栄養士として学校給食に携わっていたのですが、より近い距離で子どもたちに食に関することを詳しく伝えたい、関心を持ってもらいたいと思いまして栄養教諭の資格を取得し現在に至っています。健康の保持増進、望ましい食習慣を養うなど、学校給食には7つの目標があります。学校給食が担う役割は常々大きいものだと感じています。

学校給食に携わる上で特に留意しているのが、食物アレルギーについての配慮ですね。食物アレルギーをもっている子どもたちにも同じ給食を提供するだけに、安全性を最優先に栄養士さんたちと共に献立の考案から神経を使うところです。

給食室の様子 ※給食室は室外から撮影。


もっと、おいしい、たのしい学校給食を目指して

どのようにして子どもたちに食への関心をもってもらうか。例えば、郷土料理や世界の料理を提供することで、楽しく食文化にふれられるような献立を考えたりしています。この月末(※)にはインドネシアの日を設けていて、ナシゴレンやガドガドなどの献立を予定しています。学校給食の盛り付け方やポイントは「きゅうしょくつうしん」で紹介するようにしています。他に行事食や和食の日、セレクト給食などを企画しています。セレクト給食は、献立の一部を、主菜の魚はフライと焼き魚どっちにするか、別の日には、デザートは2種類の中から1つ選ぶなど、自分で食べたいものを選ぶワクワク感を狙ったものです。もちろん、子どもたちの選択の偏りによって食品ロスが生じてはいけないので、事前アンケート調査を行って予約制としています。

※取材日:2023年11月16日

ランチルームの前に掲示されている「きゅうしょくつうしん」。
今日のメニューで使用している食材の美味しい食べ方、栄養についてなどが
優しい言葉で書かれている。

各学年、全てのクラスで定期的にランチルーム給食を実施しています。そこではクラスメイトとの給食の時間の後に、板書やテレビモニターを使った食育の授業も行っています。牛乳であれば牛乳パックのリサイクルにまつわる一連のストーリーなど、教材は全て自作で用意しています。子どもたちが興味や共感を抱きやすいように、学校給食で提供される料理や食材に関連づけたトピックを紹介するようにしています。

普段から担任の先生とは、子どもたちの好き嫌いの状況や食物アレルギーの有無についての情報共有をしています。たとえ嫌いでも、これだけは食べてもらいたいという量はあるのですが、無理をさせて学校給食まで嫌いになっては大変です。みんなと同じように盛り付けて残されると食品ロスにもつながります。それよりも自分が食べられる量を知るという判断に重きを置いています。食べられないうちから、「残さないで食べて」はかえって良くありません。その分、食べたいと思う人がおかわりする方がいいですし、嫌いであってもまずは食べることを大切にしてほしいと思っています。また、食物アレルギーがある子については配膳の順番に配慮をしています。間違えて口にしないように先に盛り付けてもらう取り決めになっています。

一列に並んで給食を受け取っていく子どもたち。
配膳当番の子どもたちもテキパキとおかずをよそっていく。
給食の後に行う食育の授業。


今後も広がりをもって、食への理解を子どもたちへ

栄養教諭の喜びといいましょうか、やっぱり「おいしかった」「楽しみ」っていう言葉を聞くと嬉しいですね。食べるということは、一生涯ついてくることですし、自分の体を健康にするための食べ方というのは、幼少期の頃からの理想的な食習慣が身に付いてこそ継続していくと思います。そのポイントとなる学校給食に携われるのは、私自身のやりがいでもあります。もっと栄養教諭が増えてくるといいですね。

おかわりの列が途切れないのは給食がおいしい証拠。
片付けが終わった後は、杉本先生に挨拶をして教室へ戻る子どもたち。

足立区では「おいしい給食事業」の推進も手伝って、普段から他校との交流の機会があります。子どもたちに好評だった献立、その作り方などをはじめ、お互いより良い学校給食を目指して、栄養士、栄養教諭たちが積極的な意見交換を行っています。

その他に「おいしい給食メニューコンクール」というのがあります。区の取り組みでもありますが、家庭科の先生から夏休みの宿題として出されます。このような連携においても、子どもたちの食に対しての興味や関心を高めるきっかけづくりに努めています。家族やグループでの参加もできて、実際に栄養価や栄養のバランスを配慮した優秀な作品は学校給食の献立に採用されます。

廊下には「おいしい給食メニューコンクール」の作品が掲示されている。
代表に選ばれたメニューの一例。

栄養教諭になってから子どもたちや先生たちと深く関わっていけるようになったと実感しています。一方でそれは、食育リーダーとして牽引していくことでもあると自覚しています。今後もさらに学校給食を通して子どもたちの心と体を育むために、学校内外の連携、区の取り組みなども交え、先生と子ども、家庭を結びつけるコーディネーターとしても貢献できたらと思います。何より学校給食が楽しい時間になるように、より子どもたちに近い距離から精一杯努めてまいります。


取材協力:東京都足立区立加平小学校
執筆:山本洋平(株式会社アバランチ
取材:明石麻穂(ロスをロスするProject
   山本洋平(株式会社アバランチ
撮影:羽田幸平(株式会社エンビジョン


足立区「おいしい給食事業」の取り組みについてはこちらで紹介しています。


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