
Photo by
koukichi_t
冬の雨の下で
傘の柄握る手に
沁みる冷たさ
冬の雨
白くたなびく吐息も
雨滴の向こうに消えていく
灰色の景色の中
通りは車で混み合い
クラクッションが鳴り響く
明滅を繰り返す明かりの群れ
傘を忘れた人たちが
路肩に寄せられたタクシー
に吸い寄せられては
街に消えていく
滴る水滴
まあるい輪っか
水たまりの波形は落ち着かず
雨足はひどくなるばかり
人の姿もまばらな街の片隅
普段は人の喧騒で賑やかな
街も今日は雨音一色
そんな雨音に浸るように
僕は一人立っている
灰色の音の中
冷たい水滴が弾けては
滴り足元で満ちては
溢れて再び流れていく
どこにいくのだろう
僕もまたいつかは
歩き出さなければいけない
雨足が早くなる
僕を置いて
雨粒はすでに
どこかに行こうとしている
僕はまだ動けない
どこにもいけないまま
ここにいる
雨で濡れる街の片隅で
雨が止むのを待っている
瞬く信号機の赤や青の点滅を
眺めながら
僕は雨空を見上げている