【H】【翻訳】アーヴィング・フィッシャー 『100%マネーと公的債務』(4)
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通貨管理
預金準備率を100%に引き上げたからといって、ゴールドへの兌換については何かを変更する必要はない。すなわち、金本位制を維持するか変えるかという問題は、100%マネーとは独立の問題なのである。だから、管理通貨制の問題もこれとは独立の問題だ。100%システムはマネーの量の不安定性の主要な原因を自ずから取り除いてくれ、結果としてマネーの流通速度の不安定性の原因、さらに結果として貨幣単位の価値の不安定性の原因をも取り除いてくれるだろう。
100%マネーへの転向者のなかには、ここ、つまり、100%準備に必要なお金を発行し、その後はそれを増やしも減らしもしないことで終わりとすることで満足だという人もいるだろう。そのような通貨は、量が絶対的に固定され決して変わることがないので、なんらの管理も管理者も必要としないだろう。議会制定法がシステムを一度固定して、それがずっと続くだろう。それはこれまでの金本位制のどんな形態よりもずっと「自動的」だろう。
しかし、私は個人的には、100%準備に加えて、スウェーデンのもののような公式の指数による貨幣管理システムがあったほうが良いと思う。100%準備システムと組み合わせれば、そのような貨幣管理はドルの購買力を安定化させることに高度な正確性を与えてくれるだろう。
国際収支上の決済に必要となる場合以外、ゴールドの利用は放棄し、市場実勢価格に任せておくのがよいのではないかと思う。しかし、これらは先に述べたように独立の問題であるから、100%マネープランの一部として論じられる必要はない。
しかしながら、ここでついでに、金本位制は100%プランのもとで、現在やこれまでの部分準備システムのもとでよりも、はるかに安定するだろうということを指摘しておきたい。ジョージ・ウォーレン教授のように、金本位制の国における物価の浮き沈み、したがってビジネスの浮き沈みを、もっぱらゴールドの商品価値の変化で説明しようとする人たちがいる。これはそれ自体では正しいが、その正しさは以下の事実を考慮にいれなければ射程の狭いものとなる。すなわち、ドル金貨の価値は、金貨だけではない、市中に流通している全てのドルの総量に大きく影響されるということ、そしてこの総量はというと、現在の部分準備システムのせいで、非常に激しく増減しているという事実である。世界中でゴールドの価値を上昇させ、ゴールドの保蔵を引き起こした最大の要因は、アメリカにおける80億ドルの小切手帳マネーの破壊だったのである。アングロ・サクソン圏におけるこの預金通貨の崩壊が、一オンスあたりのゴールドの商品価値を上げることによって、世界のほぼ全ての金本位制の国に恐慌をもたらしたのである。金本位制でない中国は難を逃れた。いくつかの金本位制の国はすぐに金本位制を止めるか、金貨の価値を下げることで部分的に難を逃れたのである。(6)
(6)1934年にロンドンで開催されたL’Institut International De Statistiqueの第12セッションでの私の「好況と恐慌は貨幣の本位制を通じて国際的に伝播するか?」という発表をみよ。
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