【H】【翻訳】アーヴィング・フィッシャー 『100%マネーと公的債務』(6)
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政府の財政
現在、私たちの国の主要なマネーは、一万五千行の銀行による衆愚政治のなすがままとなっている。これらの銀行は一万五千の民間の造幣局に等しく、それらが毎日、それぞれ独立に国のマネーを創造し破壊しているのであって、政府は自らの[貨幣発行]特権がこのように簒奪されているのをなすすべなく傍観しているだけなのである。というのも、100%準備システムがなければ、政府は実際になすすべがないのである。政府が紙幣を発行したら、必ずや破滅的なインフレを起こすことになるのだ。要求払い預金に対する現在の3.5%準備システムのもとでは、兵士に20億ドルのボーナスを新規のドル紙幣で支払うと、それは「法定通貨」として、最大で570億ドルもの新規の小切手帳マネーに対する3.5%準備となりうるのだ!そういうわけで、小切手帳マネーに対する100%未満の準備を許可する限り、政府は財布マネー[=紙幣]を発行するという自らの主権的権利さえも十全に行使し得ないのである。ルーズベルト大統領が、より多くのドル紙幣を求める一切の要求を黙殺したのは、部分的にはまさにこのことを考慮したためだったに違いない。
他方で、[マネーが極端に不足する]マネー飢饉のさなかには、同じ部分準備システムのゆえに、政府は何十億ドルもの国債を銀行に売却した。その目的は、銀行が新しい小切手帳マネーを製造すること、またおまけに銀行がこのことの見返りに一種の貢物を受け取ることだった。ここでいう貢物とは国債に対する利払いのことである。このようにして私たちは100%システムと[貨幣発行という国家の]主権的権利の回復という目的に向かう代わりに、そこから離れていったのである。
これらすべては簡単にひっくり返すことができる。一つの方法は、エンジェル教授が提案したような資金の貸付によってではなく、新しい準備金を対価として銀行が所持している国債を買い戻すことによって、今後必要となる100%準備を銀行に供給するというものである。その後には当座預金の取り扱いに関して手数料を取ることを銀行に許可しよう。そうすれば負担するべき者がコストを負担することになろう。すなわち、サービスの受益者がコストを支払うことになるのだ。
この方法で政府債務の大半はほとんど一夜で償還されうる。これが100%システムを導入することで即座に得られる利点の主要なものの一つだろう。
もう一つの方法として、[エンジェル教授の提案のように]政府が銀行に新しい準備を貸出すこととし、銀行がいま所有している国債を保持し続けることを許して、そうすることで国債に対する利払いという形で貢物を受け取り続けることを許すと想定してみよう。新しいシステムによって政府債務は削減されるだろうか。明らかに最初は減らない。しかし、大きな恐慌が起きなくなり、それゆえに経済的な繁栄が急速かつ中断されることなしに増進していくのだから、痛みを伴う物価下落を起こさずに国中の成長するビジネス取引を処理するために、毎年より多くのマネーが必要となるだろう。そのようにして必要とされるマネーは、国債の購入という形で、政府によって貨幣局をつうじて発行されうるし発行されるべきである。このマネーで政府債務への利払いと[元本償還の原資となる]減債基金の積立の双方に十分だろう。
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