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【H】【翻訳】アーヴィング・フィッシャー 『100%マネーと公的債務』(7)
本記事は以下の記事の続きです。
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銀行家はどうやって暮らしていくのか
大きな恐慌を社会から取り除くことは、銀行家も含めてあらゆる人を助けるだろう。というのも、銀行家の不安定な準備システムが私たち全員を恐慌に陥らせるとき、銀行家は自分で自分の首を絞めているからである。
100%システムには銀行家にとって特別に有利な点もある。たとえば、100%準備を貨幣局からの無利子の貸付として調達すれば、銀行家は3.5%システムをなんとか管理することに付随する労苦・不安・出費といったことから解放されるだろう。100%システムのもとでは、銀行は、単にお金を保管して小切手によって振込するだけなので、ある銀行家が言ったように「たった一人の人間」しか必要としないだろう。
すると銀行はどこから実質的な収入を得るのだろうか?また銀行はどうやってお金の貸出を行えるのだろうか?ほとんどすべての人がこう質問する。
しかし、これには簡単に答えられる。そもそも(商業銀行家を除く)すべての金貸し業者は、すでに存在するマネーを貸しており、自分で作ったマネーを貸しているのではない。投資銀行家でさえ、すでに存在するマネーを貸しているのだ。投資するために彼らにお金を渡した顧客は、それが実際に金庫に「預けられている」かのように、それを背景にして小切手を振り出すことで、そのお金を自分自身のものとして使い続ける、そういうことはできないのである。同様に、貯蓄銀行が住宅ローンで貸出すのは、預金者から得たお金だけである。貯蓄銀行の無知な顧客は、自分のお金を預金するときに実は投資しているのだと、あるときに気づくかもしれない。それでもまだ彼はそのお金は「銀行の中に」あると考えるかもしれない。しかし、彼はそのお金を小切手で使い流通させることはできないことを知っている。彼がお金を使うには、お金を「引き出す」しかない。それが実際に意味することは、債権などの他の投資商品を売るのと全く同様に、彼の持っている投資商品を売ることなのである。
借りたものだけを貸す借入機関の例があるわけだ。商業銀行家に関していえば、小切手に使えない貯蓄預金や定期預金で彼も確実にこれと同じことをできる。彼は自己資本を貸出すこともできる。残る唯一の疑問は、100%システムのもとでも、彼が今しているように、小切手に使われる預金の背後にある現金を貸出せるかどうかである。これは確かにノーだ。その現金は彼のものではないからだ。その現金は一セントの例外もなく全て当座預金者のものなのだ。商業銀行家がこの現金を使用したりコントロールしたりする唯一の方法は、現在の所有者からそのお金を商業銀行家に送金してもらうことである。たとえば、その現金の一部はローンの支払い、あるいは債権その他の証券の支払いで、商業銀行家に送金される。(小切手で使えない)貯蓄口座の預金として送金されることもある。[100%システムが採用されて]こういった設定になったとして、銀行は明らかに得をするのであって、損をするのではない。というのも、要求払い預金者の払い戻しの願いに対して、それがいつどんな額であっても、それに応じられないかもしれないという恐怖を銀行はもはや少しも抱かないだろうからである。そしてまた、大きな好況と恐慌から解放されたがゆえに、より多くの貯蓄があるだろうし、よって銀行に持ち込まれるマネーも増えるだろう。それを銀行の貯蓄・投資部門は貸出すことができるのだ。
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