"主体的なキャリア形成"が求められる背景とは。
近年、日本は急速な少子高齢化による労働力人口不足に対応するため、キャリア形成支援に積極的に力を入れ始めています。
具体的には、社会に出る前の段階から自分の生き方設計するための力をつけることを目的とした「キャリア・パスポート」と言われる制度が、2020年から全国の小・中・高校に導入されています。
また社会人に対しても、「教育訓練給付制度」や「人材開発支援助成金」など、キャリア形成にあたって必要な支援やスキル取得に対して、一部費用を負担する制度もあります。
今回は、国が今最も力を入れていると言っても過言ではない"キャリア形成"を主体的に行う必要になった背景について紹介していきたいと思います。
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⚫︎従来のキャリア形成
従来のキャリア形成は、「社会に出て何をしたいか」ではなく、「どんな会社に入るか」という時代で、終身雇用・年功序列が当たり前だったため、同じ企業でどうやって昇給・昇進するかというのが、一般的なキャリア形成でした。
つまり、「組織内での評価=自分自身の価値」である傾向が強かったといえます。
そのため、企業側は、従業員の雇用安定を保障し、自社に適した人材を育てることを目的として、スキルアップ研修などを行ってきました。
また、従業員側は、雇用の安定や研修等のスキルアップの機会が保障される代わりに、転勤や希望しない部署への異動も受け入れ、仕事をしていました。
したがって、従業員は企業の提示したキャリアを受け入れ、年功序列的なキャリアを形成していくという、企業が主導のキャリア形成が従来の形です。
⚫︎今後のキャリア形成
しかし、近年は企業側が、企業に長く所属しているだけのスキルもない従業員に対して、65歳の定年まで高い給料を払い続ける体力がなくなってきていることや、より良い給料や福利厚生を求めて転職や独立するのが当たり前の時代になったため、企業が従業員に対して研修等の教育を提供するのが難しくなってきました。
※転職希望者はかなり増加傾向だが、実際の転職者数はそこまで変化なし
※フリーランス人口はコロナ以降増加している
実際に、令和2年度以降は、OFF-JTに出資している企業が減少傾向にあります。
※OFF-JT:職場や日常業務から離れ、外部講師等を呼んでセミナーや研修を行うこと。
一方、今後OFF-JTや自己啓発を支援する費用を増やしていきたいという企業が多いのも事実です。
※自己啓発:自らの知識や能力を向上させるための自発的な行動のこと。
しかし、これは現在国が「教育訓練給付制度」や「人材開発支援助成金」に積極的にお金を出しているため、「助成金が出るなら出資してもいいな」と思っている企業が多いからでしょう。
つまり、国から「教育訓練給付制度」や「人材開発支援助成金」が出なくなったり、助成額が少なくなったりすると、一気にOFF-JT&自己啓発支援に出資する企業が少なくなることが予想されます。
⚫︎ジョブ型雇用の増加
また最近では、ジョブ型雇用が増加しています。
ジョブ型雇用とは、企業が用意した職務内容に対して、必要なスキルや経験がある人を採用する雇用形態のことです。
従来のようなメンバーシップ型雇用から、ジョブ型雇用に移り変わろうとしている今の時代では、1つの企業に長く勤務すること自体には価値がなく、高いスキルや知識、付加価値を持っているかどうかが重要です。
また、終身雇用が崩壊したにも関わらず、私たち日本人は人生100年時代に到達し、定年の引き上げや年金受給額の減少など、これまで以上に働く期間が長くなり、お金も必要になります。
つまり、従業員は「自分のスキルをどのように磨き、どう働いていくか」というのを主体的に考え、企業に頼らずに、自ら雇用の安定を確保していく必要が出てきたのです。
(エンプロイアビリティ(=組織を問わず適応する能力)の開発)
「終身雇用・年功序列の崩壊」や「人生100年時代」については、下記のブログで詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
⚫︎まとめ
ここまでの内容をまとめると、終身雇用と年功序列が崩壊したことによって、スキルがなくても1つの企業で長く働いていれば、安定した雇用と高い給料を手に入れるというシステムが無くなりました。
その結果、労働者は雇用の安定を確保とより良い待遇を受けれる会社への転職、または独立が進んでいるため、企業が主導でスキルアップや研修の機会を難しくなってきました。
そのため、私たちはもう企業に依存することなく、自律して主体的なキャリア形成をしていかなければならないのです。
自分の価値を高めてくれるのは、企業ではなく自分です。
「転職なんか考えていない」という方もいると思いますが、そんなことは関係なく、いつでも転職できるように自分の市場価値を高めておくことが重要です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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