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2025年施行!育児介護休業法改正にどう備える?法改正を経営チャンスに
12月も半ばを迎え、診療所や歯科医院の先生方も新年度の計画を立てる時期ではないでしょうか。
2025年度には、育児介護休業法の改正が施行されます。
この改正は、育児や介護を抱えるスタッフが働きやすくなる環境整備を促すもので、4月と10月に段階的に施行されます。
医療業界は人手不足や急な対応が多く、柔軟な働き方の導入に慎重な傾向がありますが、今回の改正は義務化されるものであり、就業規則の見直しや労働環境の整備が必須となります。
今回は、施行時期ごとの改正内容を整理し、現場で実践できる具体的な対応策についてまとめました。
この法改正をただの義務と捉えるのではなく、働きやすい職場づくりやスタッフの定着を促すきっかけとしてぜひご活用いただければと思います。
2025年4月施行:育児・介護支援の拡充
まずは、2025年4月1日に施行される主な改正内容を確認してみましょう。
この改正は、育児や介護を抱えるスタッフへの支援を強化することを目的としています。
【改正内容】
残業免除の対象拡大
これまで「3歳未満の子どもを持つスタッフ」のみに適用されていた残業免除が、「小学校就学前の子どもを持つスタッフ」まで拡大されます。
看護休暇の取得要件緩和
看護休暇の対象年齢が「小学校3年生」まで広がり、取得理由には学校行事や学級閉鎖も含まれるようになります。
介護支援制度の強化
介護休暇が勤続年数に関係なく取得可能に変更になります。
また、介護休業や介護両立支援制度の申出が円滑に行えるよう、個別に適切な支援を行う義務が事業主に課されます。
具体的には、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。(複数講じることが望ましい)
介護休業や支援制度に関する研修の実施
相談窓口の設置
介護休業の取得事例の収集・提供
制度利用促進に関する方針の周知
また、申出を行ったスタッフに対しては、介護休業制度の内容を個別に説明し、制度利用の意向確認を行うことが義務化されます。
さらに、介護休業や介護両立支援制度に対する理解と関心を深めるために、40歳頃を目安に従業員へ早期の情報提供を行うことも求められます。
【職場で取り組むべきこと】
• 業務の効率化・分担の見直し
例えば、効率的な導線を確保したり、診療後のカルテ整理や片付けなどの作業手順を精査したりすることでスタッフの負担軽減を図ることが必要です。
また、日常業務の優先順位を明確化し、「必要不可欠な業務」に集中する体制を整えることが求められます。
• 急な休暇への対応体制づくり
急な休暇にも柔軟に対応できるよう、業務の属人化を防ぐ取り組みが求められます。
標準化された作業マニュアルを作成し、誰もが業務をカバーできる環境を整備することで、現場の混乱を最小限に抑えられます。
• 日常の対話や面談でスタッフの状況を把握
介護支援の必要性を早期に察知するためにも、会話や面談を通じてスタッフの状況を把握しておくことが重要です。
普段から信頼関係を築いておけば、安心して相談できるようになり、離職防止にもつながります。
2025年10月施行:柔軟な働き方への対応
次に、2025年10月1日に施行される主な改正内容を見ていきましょう。
この改正では、さらに柔軟な働き方を実現するための制度導入が義務化されます。
【改正内容】
柔軟な働き方の導入義務化
3歳以上小学校就学前の子どもを持つスタッフに対し、以下のいずれか措置を2つ以上を導入することが求められます。
・始業時刻の変更(時差出勤など)
・短時間勤務制度
・テレワーク(月10日以上)
・新しい休暇制度(年10日以上)
・保育施設の設置運営など
3歳未満の子どもを持つスタッフには、上記の柔軟な働き方の選択肢を個別に周知し、制度利用の意向を確認することが義務化されます。
育児休業後の復帰時や、短時間勤務利用中にも定期的な面談を実施し、制度の適用状況を確認することが求められます。
仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮
さらに、スタッフ本人や配偶者の妊娠・出産の申出時、および子どもが3歳になる前のタイミングで、業務量や労働時間、勤務条件の意向を個別に確認する必要があります。
これは、育児休業後の復帰時やスタッフからの申出があった際にも実施することが推奨されています。
【必要な準備と実践方法】
• テレワークの導入・業務の柔軟化
予約管理や経理業務など、患者対応以外の作業をテレワーク化することで、働き方の幅を広げることが可能です。クラウド型予約システムやオンライン請求ツールの導入を試験的に進め、スタッフの負担を軽減しましょう。
• 妊娠・育児中スタッフへの配慮を仕組化
妊娠中や育児中のスタッフが安心して働けるよう、無理のない業務内容をリスト化しておきましょう。例えば、重い荷物の運搬や長時間の立ち仕事を避けられるような配慮を事前に整備しておくことで、スタッフの健康を守りながら生産性も維持できます。
診療所・歯科医院が取り組むべき具体策まとめ
育児介護休業法の改正に対応するため、以下の取り組みを進めましょう。
①就業規則の見直しとスタッフへの説明
改正内容に基づき、就業規則や労働条件を見直し、スタッフに分かりやすく説明する
②業務の属人化を防ぐ仕組みづくり
標準化された業務マニュアルを整備し、チームで業務をカバーできる体制を構築する
③部分的なテレワークの導入
患者対応を除く事務作業や予約管理業務をテレワークで対応できるようにし、柔軟な働き方をサポートする
④定期的な意向確認とスタッフ面談の実施
育児・介護に関するスタッフの意向を定期的に確認し、働きやすい環境を提供する
⑤管理職の意識改革
「勤務時間の長さ」ではなく、「業務の成果」を重視するマネジメントを導入し、柔軟な働き方を推進する
改正を活かす経営的メリット
2025年の育児介護休業法改正は、診療所や歯科医院にとって単なる義務ではなく、経営基盤を強化する機会でもあります。
柔軟な働き方を導入することで、育児や介護を理由に離職するスタッフを減らし、貴重な経験を持つ人財を長期的に雇用できるようになります。
また、スタッフが安心して働ける職場は信頼感を高め、職場の雰囲気改善やチームワークの向上につながります。
こうした取り組みがスタッフのモチベーションを向上させることで、患者さんへの医療サービスの質が高まり、患者満足度や信頼感の向上に直結します。
さらに、柔軟な制度をアピールすることで、地域での評判が高まり、求人応募者の幅が広がります。育児や介護中の潜在的な優秀人材の採用にもつながるでしょう。
今から具体的な準備を始め、スタッフが働きやすい職場環境を構築することで、法改正による影響を最小限に抑えつつ、診療所全体の運営改善を進めていきましょう。
参考サイト
厚生労働省 「育児・介護休業法について」
中小企業育児・介護休業等推進支援事業のセミナー
「中小企業育児・介護休業等推進支援事業」(厚生労働省委託事業)では、育児・介護休業法をはじめ、関連する法改正のポイントや事例を交えたセミナーが随時開催されています。
詳細は以下リンクよりご確認ください。