英語学習者にクリエイティブ・ライティングがおすすめ!3つの理由と始め方
クリエイティブ・ライティングとは?
クリエイティブ・ライティング(Creative Writing)は、日本語だと「文芸創作」。そう聞くとかなりハイレベルに聞こえるが、英語圏では小学校の授業に取り入れられることもある。
日本の大学などでもこの片仮名の専攻名も増えてきている。アメリカやイギリスではかなり前から存在し、アメリカの大学院ではfine arts(芸術)の学位(イギリスでは文学系の学位が多い)になっている。
英語で書く作家で、クリエイティブ・ライティングを大学や大学院で修めた人は多い。カズオ・イシグロも、イースト・アングリア大学大学院の創作学科出身だ。
クリエイティブ・ライティングが(演劇も)、美術や音楽のように芸術科目として日本の義務教育に取り入れられるといいのにと思う。
英語学習者にクリエイティブ・ライティングをすすめる理由
英語のクリエイティブ・ライティングは、高度な英語力を持つネイティブスピーカーなどのためだけにあるのではない。むしろ、英語を学んでいる人にやってみることを強くすすめる。その理由は3つある。
①意外と取り組みやすく、1段落から始められる
②ライティング力はもちろんスピーキング力も上がる
③日常生活について書くよりもネタ切れしない
①意外と取り組みやすく、1段落から始められる
英語圏のクリエイティブ・ライティングはある程度メソッド化されていて、「ライティング・エクササイズ」はその典型だ。英語で「creative writing exercises」と検索すれば、たくさん出てくる。
ライティング・エクササイズとは例えば、次のようなものだ。
・1枚の絵を見て、描かれているものについて書き、それを基に絵には描かれていないことも書いてみる。
・眠っているときに見た夢の中で印象深かったものについて書く。
・地の文のない、2人の会話だけの話を書く。
・人ではない、何かの物になった視点で書く。
・電話の一方の人が話している言葉を書く。
・手紙を書く。
縛りがあると書きやすく、完全に自由に書くよりもかえって想像力が膨らみ、創造性が発揮できる。
悩むより、まず書いてみるのがポイントだ。1段落でも、最初は1文でもOK。
下記のようなサイトで、気になるエクササイズを探してみよう。
https://thejohnfox.com/2016/05/creative-writing-exercises/
②ライティング力はもちろんスピーキング力も上がる
英語をアウトプットすると、語彙力や文法力が鍛えられる。学んだことを使える力にするために、アウトプットは必須だ。
アウトプットは大別するとライティングとスピーキングに分けられる。英語を話したいというのが目標でも、ライティングは断然おすすめする。
なぜなら、ライティングには次の特徴があるからだ。
・相手がいなくても1人でできる。
・「これはなんて言うのかな?」と時間をかけて考えられる。
・自然な言い回しなどを調べられる。
・自分で見直しができ、人に添削してもらうこともできる。
書くことで、「自分が表現したいこと」を英語でどう言えばいいのかを蓄積でき、スピーキングのときもそのストックを活用できる。
話すときは言葉だけでなく顔の表情やジェスチャーでも伝えられる部分があるが、書くときは言葉で表現するしかない。その分、きちんとした英文で正確に伝える力が磨かれ、スピーキングのときにもそれが生きてくるのだ。
あとは、口語表現などを取り入れていけば、スピーキング力も上がっていく。
特に人前で話すのがあまり得意ではない人にとって、アウトプットをライティングから始めるのは非常に効果がある。
できれば、英語が流ちょうでライティングが得意な人に添削してもらうと、学ぶところが多い。知人に頼める人がいなければ、オンライン英会話で講師に頼んだり、ネットで安価な添削サービスを探したりすることもできる。語学交換アプリやサービスでも、うまくいけば添削し合えるランゲージ・パートナーが見つかるかもしれない。
③日常生活について書くよりもネタ切れしない
「でも、書くなら日記(ダイアリー)でもいいのでは?その方が書きやすそう」と思うかもしれない。
もちろん日記をつけるのもいいが、そうすると、書く内容が限られてくるのではないだろうか?平日は毎日、学校や職場に行き、休日は映画を見る、あるいはマラソンをする、という人は多いだろう。毎週違うことをしているという人はそうそういない。
すると、日記がマンネリになってきて、書くのもつまらないし、使える英語表現も増えていかない。飽きてしまって継続できないし、続けたとしてもあまり勉強にならない。
それに対してクリエイティブ・ライティングなら、エクササイズを手掛かりにすれば新鮮なネタが毎日見つかるし、課題を与えられなければ思いも付かなかったことを書きたくなり、幅広い英語表現を身に付けられる。
日記に、夜見た夢について書くことからも、クリエイティブ・ライティングは始められる。
もしそれを楽しめたら、ほかのエクササイズも試してみよう。
クリエイティブ・ライティングを知る本・サイト
クリエイティブ・ライティング関係の本やサイトはたくさんあるが、ここでは3つ紹介する。
■『The Art of Fiction』David Lodge
日本語版『小説の技巧』デイヴィッド・ロッジ著、 柴田元幸/斎藤兆史訳
イギリスの小説家で英文学者の著者が、小説の名作の抜粋とともに、50のポイントを解説する本。小説を読んだり書いたりするときに役立つ、小説の「要素」「観点」を知ることができる。
■『I Am a Pencil: A Teacher, His Kids, and Their World of Stories』Sam Swope
日本語版『エンピツは魔法の杖―物語・詩・手紙・・・ニューヨークの子どもたちに「書くこと」を教えた作家の奇跡のような3年間』サム・スウォープ著、金 利光訳
スランプに陥ったアメリカの作家が、ニューヨークのクイーンズにある小学校で、ルーツがさまざまな子どもたちに3年間、「クリエイティブ・ライティング」の授業をした記録。
家庭環境や経済状況が大変な子どもたちもいるが、創造的に書くことで、子どもたちも作家もいろいろなことを学んで、自由になっていく。収録されている子どもたちの作品は、難しい英単語も英文法も使われていない。それなのに胸に迫る。
シンプルな英語で深く豊かな世界が表現され得ることを教えてくれる本だ。
日本語版が絶版なのが残念。
■Scottish Book Trust: Creative Writing(ウェブサイト)
イギリス、スコットランドの「スコティッシュ・ブック・トラスト」のクリエイティブ・ライティングのページ。
小説や詩の書き方のヒントなどが英語で書かれている。
ほかにも検索するなどして、情報を集めてみることをおすすめする。
日本で受講・実践できる英語のクリエイティブ・ライティング講座
■テンプル大学ジャパンキャンパスの生涯教育プログラム(講義・講座、東京)
アメリカ出身の講師によるコース「クリエイティブ・ライティング: ストーリーの伝え方(ICW102)」が毎年(秋学期に)開講されている。フィクション(小説)を英語で書くための講座だ。
受講前に志望動機などを英語で書いた短いエッセイを提出し、問題なければ受講できる。
受講生は日本の人や日本在住の外国人など。英語が第1言語でない人もいて、上級レベルの英語力が必要ではあるが、ネイティブレベルではなくても受講は可能だ。
講義は10回で、1回約2時間。内容は英語圏の大学などで一般的に行われているものを基にしていると思われる。毎回、課題(宿題)として、「描写」「登場人物」「視点」といったテーマに基づく物語(10ページ程度など)を読み、ライティング・エクササイズを行い提出する。授業では、物語についてディスカッションし、受講生の1人(全員に順番が1回は回ってくる)が提出したストーリーについて、みんなでフィードバックを行う。
受講生は、すでに書きたい物語がある人、書いている物語がある人もいるが、物語は明かり書いたことがないという人もいるようだ。受講すれば、クリエイティブ・ライティングを始めるきっかけにできるかもしれない。
受講料は51,999円で、生涯教育プログラムを始めて受ける際には初回のみ入学金10,980円(税込)が必要だ。早期申し込み割引や「Friend of TUJ 割引制度」(勤務先に手続きをしてもらうことで利用可能)もあるので、活用したい。
■「クリエイティヴ・ライティング入門講座」(ウェブ連載)
立命館大学の吉田恭子さんによる、2021年3月にスタートしたウェブ連載。
毎回、文芸創作エクササイズが出され、応募作品の一部について、次回の記事で講評が掲載される。英語のクリエイティブ・ライティングを気軽に試してみることができる記事だ。
※「日本で学べる英語のクリエイティブ・ライティング」を追記(2021年4月)