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2021年4月の記事一覧
物語のはじまり『千代女』
女は、やっぱり、駄目なものなのね。女のうちでも、私という女ひとりが、だめなのかも知れませんけれども、つくづく私は、自分を駄目だと思います。
そう言いながらも、また、心の隅で、それでもどこか一ついいところがあるのだと、自分をたのみにしている頑固なものが、根づよく黒く、わだかまって居るような気がして、いよいよ自分が、わからなくなります
『千代女』太宰治
自己肯定感の低い女性の一人語りではじまる。
春の読書『一歩前進二歩退却』
いちばん高級な読書の仕方は、鴎外でもジッドでも尾崎一雄でも、素直に読んで、そうして分相応にたのしみ、読み終えたら涼しげに古本屋へ持って行き、こんどは涙香の死美人と交換して来て、また、心ときめかせて読みふける。何を読むかは、読者の権利である。義務ではない。それは、自由にやって然るべきである。
『一歩前進二歩退却』太宰治
「高級な読書」っていうのは「素直に読んで」
とあるように、自分が感じたことを
そこにある居場所『誰』
ここに暫くとじこもって一つの仕事が出来あがると私は、そそくさと三鷹を引き上げる。逃げ出すのである。旅に出る。けれども、旅に出たって、私の家はどこにも無い。あちこちうろついて、そうしていつも三鷹の事ばかり考えている。
三鷹に帰ると、またすぐ旅の空をあこがれる。仕事場は、窮屈である。けれども、旅も心細い。私はうろついてばかりいる。
『誰』太宰治
旅に出たら考える自分の故郷のこと。
故郷に居たらまた
うつくしい景色『懶惰の歌留多』
数ある悪徳の中で、最も顕著の悪徳は、怠惰である。これは、もう、疑いをいれない。
よほどのものである。
…
よ、夜の次には、朝が来る。
『懶惰の歌留多』太宰治
どんな夜も明けない夜はない。
どん底でも楽しいことはある。
辛いなーとか寂しいなっていう夜が続いても
一晩眠ればまた仕事をしなきゃという一日が始まる。
どれだけ夜泣いたとしても次の日の朝は
何もなかったかのように普通の生活ができる
季節について『魚服記』
春の土用から秋の土用にかけて天気のいい日だと、馬禿山から白い煙の幾筋も昇っているのが、ずいぶん遠くからでも眺められる。この時分の山の木には精気が多くて炭をこさえるのに適しているから、炭を焼く人達も忙しいのである。
『魚服記』太宰治
今日、手帳を見て思ったこと。
春の土用。
春のさいごの穀雨。
穀雨のはじまりの葭始生。
季節が春から夏に変わる季節。
私は夏になる瞬間のちょっとだけ暖かく
私でなければ、わからない『きりぎりす』
私は、あなたこそ、その天使だと思っていました。
私でなければ、わからないのだと思っていました。
『きりぎりす』太宰治
私だけが知ってる魅力。
他の人にはわからない、だから美しい。
尊いものって実は誰しもが持ってる。
所有欲とか、独占欲とは少し違っていて
「理解者」であって「唯一の共犯」であって。
小さい頃、秘密基地を作った友達とは
距離が近くなるようなそういう感覚に似てる。
誰も知らない
言うも言わずも同じこと『正義と微笑』
ゆすぶるような強いものではなかった。ひどい興覚め。絶対孤独。いままでの孤独は、謂わば相対孤独とでもいうようなもので、相手を意識し過ぎて、その反撥のあまりにポーズせざるを得なくなったような孤独だったが、きょうの思いは違うのだ。まったく誰にも興味が無いのだ。ただ、うるさいだけだ。なんの苦も無くこのまま出家遁世できる気持だ。人生には、不思議な朝もあるものだ。
『正義と微笑』太宰治
文句を言いながら働
自分に甘くする『一日の労苦』
あたりまえの生活をしているのである。
かくべつ報告したいこともないのである。
舞台のない役者は存在しない。
それは、滑稽である。
このごろだんだん、自分の苦悩について自惚れを持って来た。自嘲し切れないものを感じて来た。
『一日の労苦』太宰治
忙しい。
漢字で描くように「心」を「亡くす」くらい
目の前のことに向き合い続けた結果
「わたしのやりたいことって何?」
「何のために仕事してるんだろう
どうにか生きる『鴎』
「なんだ、太宰って、そんな変ったやつでも無いじゃないか。」と大声で言うのが、私の耳にも、ちらとはいることがあった。私は、そのたびごとに、へんな気がする。私は、もう、とうから死んでいるのに、おまえたちは、気がつかないのだ。たましいだけが、どうにか生きて。
『鴎』太宰治
「私は、もう、とうから死んでいるのに」
「おまえたちは、気がつかないのだ。」
やっぱり、わかってくれるのは太宰の作品だと
心か
丁寧なくらし『ロマネスク』
嘘のない生活。その言葉からしてすでに嘘であった。美きものを美しと言い、悪しきものを悪しという。それも嘘であった。だいいち美きものを美しと言いだす心に嘘があろう。あれも汚い、これも汚い、と三郎は毎夜ねむられぬ苦しみをした。
『ロマネスク』太宰治
綺麗に正しく、美しく生きようと思うほど
「欲」があるから、そんなうまくはいかない。
ここ数日神社仏閣に行った影響で
「欲」とか「生きる」とかいつもより
家族について『花燭』
もし、いま、私の手許に全家族の記念写真でもあったなら、私はこの部屋の床の間に、その写真を飾って置きたいくらいである。人々は、それを見て、きっと、私を羨むだろう。
『花燭』太宰治
今年で30年の結婚記念日なのに、私も入って
久しぶりに両親との旅行。
家を出るまでの二十数年間の当たり前の時間が
非日常になって、1人で過ごすことが日常になった。
30年。
同じ人と一緒にいることを選ぶということは