2023.11月(5冊ログ)
毎月、読んだ本から「5冊」紹介しています。
1. #禅の言葉とジブリ
大のジブリファンでもある若き僧侶がジブリから禅を読み解く書。これからの禅の世界を背負うと目される細川晋輔氏からのメッセージ。エンターテイメントの解釈はいつだって自由。ジブリの中にどんな問答が存在し、そこにどんな禅が隠されているのか。
ジブリに対する深さは計り知れない。だれもがそう思っている。色々な人が様々な角度からその中に見えた哲学を語ることが多く、だからこそ長く残っていく。特に、ほんの一瞬にしか描かれていないことやそう言われてみればその点と点はつながるけれど、本当にそれを想定されていたのだろうか?と思うマニアックな部分も多い。
ここで思うことは、明確にその意図が作者になかったとしても、作品の中には『入り込んでいた現象としての禅』じゃないかと。そして年齢を重ねて何度も観るごとに新しい解釈を発見できる、ジブリ作品はすばらしいという改めての理解。
2. #経営 稲盛和夫、原点を語る
京セラ創業、KDDI躍進、JAL再建。稲盛和夫さんの経営者人生の集大成。1970年代から2010年代に至る膨大な講演から、稲盛経営論の中核となるエッセンスを抽出した書籍。
4cmの分厚さに、稲盛和夫さんの経営思想と原理原則を完全網羅。とてつもなく今更ながら『あ、そういう事だったのか!』と思うことが多々。誰かの解釈を通じて私の中に入ってきた稲盛経営論を、稲盛和夫さん本人の言葉で理解することで得るものは大きく、自分で本を読んで、自分なりに理解をする、そのことの意義を感じた。
経営論という立派に作り上げられるもっともっと手前の、現場で何が起こっていたか、その現場で何を見て何を考えたか、その話がものすごく現場で。どの業界でも基本的な『現場あるある』は同じなんだと。規模感は違えど、大きな場所でも小さな場所でも毎日いろんなことが起こる。それを見逃さず、諦めず、信念を持って、人間であること、人間には美しい心があると信じ、大切にしてきた日々。尊い。
稲盛和夫の経営を理解するためのブックガイド、稲盛和夫の経営年表付き。これは歴史資料館の書籍版。本当に本当に日本が誇る経営者、稲盛和夫さん、経営人生お疲れさまでした。
3.#スペインの宇宙食
「他のなにものも、私を癒すことはなかった。しかし、この本だけが私に力をくれたのだった」と、よしもとばなな氏が解説したこの本。ここまで自分を極限まで開放して生きていける才能がある人が存在していることに心底驚いた。これは物語じゃなくてエッセイなの?アートの中に生きてる・・としか思えない。
海外作品が日本語翻訳されているような文体と構成も天然だろうけどワールドが全開だった。少し読むのに時間がかかった。細部にわたってぜんぶが正気の沙汰じゃないから。
しかしその中に出てくる食事の描写が繊細で敬意を感じた。日々の出来事や感情は感覚的複雑さが現れているのに、食べ物を見るときの感覚はすごくシンプルで無邪気に思えた。こういうところが著者のズルさなのかもしれない。一方で、音楽に関してはとても造詣が深く、この部分こそが著者の品格につながっているから全体を通して美しくまとまっているのだと感じた。それにしても本当に自由に生きるってこういう事だな、と思った。
4. #新版 ずっとやりたかったことを、やりなさい
人間は全員がアーティストである、創造的に生きていこう。という前提で「創造的な子ども」を見出し、育てる=「ずっとやりたかったこと」という表現の書籍。「やりたいことがわからない」という人におすすめしたい。
「そもそも自分がずっとやりたかったことは何なのか?」を見出すところから始まる。自己啓発、コンサルティングのようで、メソッドとしてはその分野ではある。ただ、自分との対話をひたすらする手法が具体的だから、この本を読んだからと言ってすぐに、明確に見つかることはなくて、やるしかない。
12週間のワーク。何かのセミナーでも受けて人生変えようかな!と思うのであれば、その前にこの本でワークを実践してみる方がリーズナブルで効果は高そう。このワークができない人はセミナーを受けても変わらないと思うほど。
5.#新版 ずっとやりたかったことを、やりなさい。(2)
1と2があってこちらは続編。1とつながっているし、1を終えてからの方が良さそうではあるけれど、私はこの書「2」の方がのびのびとして自由で、開放感があって好きだった。具体的に自分自身が創造するものが明確に見えているわけではないけれど、もしかしたら、そんなものって明確に見えないんじゃないかと思ったというか。
「創造」と聞くと、作品を生み出すアーティストで世の中に認めれられていないといけないように思ってしまう。しかし、日常の中に創造を入れていくことだけで目の前のことが少しずつ変わって見える。
結論とまではいかないけれど、おそらく人間が生きていく中で創造活動をすることは実はとても簡単で、ともすると何だって創造活動にできるって話なのかもしれない。日々を楽しいと思えることは、自分が自分の意志で毎日の言動を選択し続ける事。そこに創造があるかないか、で充足感が変わることは確かなのかもしれない。
おわり。
今月も読んでくださってありがとうございました。来月も書きますので良かったら遊びに来てください。
喜びます、ありがとうございます。