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私たちの未来予測は盛り傾向らしい。


捕らぬ狸の皮算用


まだ捕まえてもいない狸の皮を売ることを考えること。手に入るかどうかわからないものを当てにして計画を立てることのたとえ。

コトバンク

このコトワザにあるようなヒトの未来予測は、どうやら”盛り傾向”にあるようです。

この記事では、未来予測の心理として「インパクトバイアス」について考察します。


▶この記事を書いた人

1)インパクトバイアスを知る


ヒトは、未来に起こり得るだろう出来事を想像したとき、ワクワクや不安などの感情反応を先取りして感じることがあります。

例えば…

①クリスマスが来る前に、当日のクリスマスパーティーをイメージし、楽しい感情やワクワクして興奮する感情が湧くことがあります。

反対にネガティブな感情としても

②励んできた資格試験に落ちてしまった時、この先の人生は苦悩でしかない。お先真っ暗だ…と不安に苛まれることがあります。

実はこの未来の感情予測は、『過大推測』であることが分かっています。
では、上述した未来予測の結果(現実)とは。

ー*ー

①クリスマス当日、仕事終わりに慌ただしく準備して、パーティー会場に向かう途中は交通ラッシュ…
満員電車でギュウギュウになりつつ街を目指し、駅に着いたとたんに「遅刻しちゃう~」と焦る気持ちで、ダッシュ。
息切れしつつ会場に到着したときには疲労困憊。

②資格試験に落ちた…
ただ、夜になると眠くなるし、朝が来るとお腹もすく。
友達とのおしゃべりは楽しくて笑えるし、遠出して自然を感じると癒される。
日々、やることはあるし、なんだかんだ充実しちゃってる。

ー*ー

上記は創作したストーリーですが、現に”クリスマスに感じる嬉しいという気持ちを、実際にクリスマス当日に感じるよりも過大推測していた”と報告する研究成果があります。

こういった未来感情の過大推測をハーバード大学教授ダン・ギルバードは『インパクトバイアス』と提唱しています。

インパクトバイアスの原因①【焦点化】

焦点化とは、感情反応を引き起こす未来の出来事を予測する際に、自身が着目したい点ばかりに焦点をあててしまい、他の出来事を考慮できないことを言います。

確かに、クリスマス当日はパーティーだけがあるわけではありませんし、資格試験に失敗しても日常は続いていきますね。

インパクトバイアスの原因②【心理的免疫システムの無視】

ネガティブな出来事がどれくらい人生にマイナスの影響を与えるかについて過大推測することは、心理的免疫システムの働きを無視しているからと言われています。

心理的免疫システムとは、心の防御システムとも言えます。
もっとかみ砕くと、前向きに過去を見るチカラとなります。

ここでも一つ例題をあげます。
もしも、自身が交通事故で下半身麻痺になってしまったら…と想像すると、どのように未来予測するでしょうか。

「もう歩けないなんて、これから先どうやって生きていけばいいのか…」「こんな人生は不幸でしかない」

おそらくは、このように絶望の感情を抱えるのではないでしょうか。

ギルバート教授らは、大地震で被災する・交通事故で下半身麻痺になるなど、極めて困難な状況に陥ったときでも、半年後には以前と変わらない程度の幸福度に落ち着くという研究成果を発表しています。

極めて困難な過去の経験も、時間の経過によって意味を見出して、前向きに捉えることができるようになるようです。

補足すると、心理的免疫システムに「免疫」という言葉が使われている理由は、身体に働く免疫機能と同じように、自身で意図して発動せずとも勝手に働いてくれるからとの事。

そうやって無意識に働いてくれるため、私たちは心理的免疫システムを考慮することが出来ずに、ネガティブな未来予測を過大に行ってしまうようです。

2)インパクトバイアスを生かす


インパクトバイアスを知ったうえで、どう生かしていくのか考えていきます。

例えば、人生を左右するような大きな決断をする場合、「後悔しないようよく考えてから」と慎重になる場合がありますね。

そういった「石橋を叩きすぎて渡れないよ~」状態になってしまった時に頭に入れておきたいことこそ、このインパクトバイアス

もしも、その重大な決断が失敗に終わったとしても、その後悔の想像は実際より多く見積もっているということ。
また私たちは、心理的免疫システムによって、前向きに過去を見るチカラを持っているということ。

これを知っていれば、「えいやっ」と行動してみる勇気が出てくるのではないでしょうか。

インパクトバイアスや心理的免疫システムのことを知っているだけでも、世界の見え方が少しだけポジティブに変わらないでしょうか。

■あとがき


今回の考察は、ダン・ギルバード教授の著書であるこちらを参照しました。

本書では、少しでも正しく未来予測をする方法にも触れています。
言い換えると、「取らぬ狸の皮算用」の精度をあげるには、となりますね。

自分を時間軸の前方へ投影し、出来事が起こる前にそれを経験できる能力のおかげで、誤りを犯すことなくそれを評価できる。想像は自然からの最高の贈り物だ。
それでも、未来の自分と状況をシミュレーションする能力は完璧とは程遠い。先見はもろい能力だ。
だが、心配はいらない。なぜなら、すでに経験してそれについて喜んで語ってくれる人が大勢いるからだ。
自分自身の感情を予測する一つの方法は、自分が予測している出来事を今まさに経験している人を探して、どんな気持ちか尋ねることだ。

『明日の幸せを科学する』より編集して抜粋

この方法が推奨されている理由は、経験に基づく感情は未来予測の過大推測ではなく現実だからです。
すでに経験したの人からアドバイスをもらうことが、”最も失敗しない未来予測である”としています。

手っ取り早くインパクトバイアスを攻略するためには、『素直に人のアドバイスに耳を傾ける』ことも重要なようです。

最後までお目通しいただき、ありがとうございました。

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