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母の手をはなれて | 小説『想いを結わう』収録
お手本のような秋晴れだった。
私は手を借りてタクシーからゆっくりと降りる。雲ひとつない空のもとで、ひやりとした風が頬をかすめた。赤く染まり始めた葉が日の光にあたってきらきらと光っている。
朝九時とはいえ、浅草はもう観光客で賑わっている。何人かが私たちに気づいて、遠くから写真を撮っているのが見えた。
「ゆっくりで大丈夫ですからね」
付き添いの女性に声をかけられ、はい、と返事をしてそろそ
お手本のような秋晴れだった。
私は手を借りてタクシーからゆっくりと降りる。雲ひとつない空のもとで、ひやりとした風が頬をかすめた。赤く染まり始めた葉が日の光にあたってきらきらと光っている。
朝九時とはいえ、浅草はもう観光客で賑わっている。何人かが私たちに気づいて、遠くから写真を撮っているのが見えた。
「ゆっくりで大丈夫ですからね」
付き添いの女性に声をかけられ、はい、と返事をしてそろそ