在ロンドン大学院生のとある1日
起床からウォーキングとビリー
小鳥のさえずで眼を覚ますというベタなドラマのオープニングのような朝から私の1日は始まる。ヴィム・ヴェンダース監督のPerfect Daysで役所広司が演じる平山にとってのそれが近所の路地を掃く竹箒の音であったように、野生化したインコ(正確には、リングネックパラキート)のさえずりが私にとっての目覚まし時計になっている。
時間は大体6時を少し過ぎている。それで起きれなくても課金したAutoSleepが否が応でも起こしてくれる。日本から送ってもらった目薬を差してから、昨日の白ワインがまだ残っているのを感じながら、「しじみの入った牡蠣ウコン+オルチニン」を4-6錠ほどを、Radnor Hillsのガラス瓶ボトルに入ったBRITAのポット型浄水器で濾過された豊かでよりおいしい水で流し込む。
UNIQLOのパジャマを脱ぎ去り、東南アジア駐在時に友人にトレッキングに誘われた際に購入したThe North Faceで揃えたウェアに着替え、気持ち分サイズの小さいこれまたThe North Faceの靴にビルケンシュトックのサンダルから履き替えることができればもうこっちのものだ。最近はもっぱら家を出る時に空を見上げ微笑む。なんて完璧な日々なのだろうか、と。
テムズ川に合流するその支流が私の家の前に流れている。ちなみに、休みの日には窓を開けてその小川のせせらぎを楽しみながら本を読んでいる。水面にはカモの親子がドラクエのパーティのように並んで次の目的地を目指している。私も負けじとApple WatchのWorkout(Outdoor Walk)を起動した後、AirPods Pro(第2世代)から映画『バービー』のサウンドトラックである"Barbie the Album"が流れたらウォーキングをスタートさせる。もちろん目指すはテムズ川だ。
テムズ川沿いのウォーキングコースを既に確立している。LizzoのPinkで歩き始めた私はBille EilishのWhat Was I Made For?に差し掛かる頃には、もう、そろそろ今日は歩いて帰ろうと思える時間になる。ちなみに、"Barbie the Album" は"What Was I Made For?"の後にもう5曲ほどあるのだが、それ以上聞けないぐらい"What Was I Made For?"の歌詞が毎回私を刺しに刺してくる。
「前は飛べてたのに、今は落ちていくだけ、前は分かっていたのに、今は分からない、私が何のために作られた(生まれてきた)のか」から始まり「だって気持ちの整理がつかないから。でも、やってみたい、もしかしたらいつか分かるかもしれないから」(拙訳)というかなり、現在の私の環境と重なり合う部分が多い歌なので、本当に好きで好きでたまらない。そしてBillie自身もこの曲は映画『バービー』のために書いていたはずだったが、結果として自分のために書いていたと後から気付いたとApple Musicのインタビューで答えている。後から遡及的に過去を発見するのは近代の特徴でもある。
朝食から午前の授業とアンジェラ
確立されたはずのウォーキングコースから逸れてしまった。ここで再び、歩みを進めよう。帰宅後にApple WatchをBelkin BoostCharge Proで充電するためにシャワーを浴び、少しだけストレッチをしていると、もう8時過ぎだ。次のエネルギー補充は私のターンだ。
朝食は、マッシュした皮付きサツマイモとハチミツを合わせたもの(1食当たり約58円)を、冷たい無脂肪牛乳(0.4 pint=227 mlあたり約28円)にMyproteinのImpact Whey Protein Power(Natural Chocolate、1スプーンあたり約95円)を溶かしてシェイクしたものにフレンチプレスで作ったコーヒー(Italian Style Strength 4、1杯あたり32円)を入れたやつで流し込み、あとは、ブルーベリー(15粒あたり約107円)とマスカット(15粒あたり約72円)をいただく。なければキウイ(2個あたり約63円)かバナナ(1本あたり約43円)だ。そんなこんなで9時過ぎだ。
10時から授業がある曜日、つまり火曜日から木曜日は、ここからイングリッシュ・ブレックファスト・ティーバッグ(1袋あたり約12円)にたっぷりのお湯を注いだ水筒を片手に、Samsonite 3 Way バッグにMacbook Air M1とBoYata Laptop Standが入っていることが確認でき次第、大学に向かう。徒歩で10分もかからない。Audibleでアンジェラ・デイヴィス本人がナレーションをしている"Angela Davis: An Autobiography"あたりをちょっとずつ聞く。彼女は生粋のストーリーテラーだ。
昼食から午後の授業と消化
午前の授業が午後1時に授業が終わると、一度帰宅しランチにする。昼食はオリーブオイル(5mlあたり約8円)でカンバーランド・ソーセージ(2本あたり約127円)に焼き目をつけた後、たまご(2個あたり83円)を落としそこに少し水を加えて蓋をして蒸し焼きにしている間に、ちょうどレンチンしておいたブロッコリー(150グラムあたり約63円)も蒸し上がっているのでそれらにプチトマト(8粒あたり約57円)を添えれば完成。朝に少しだけ残しておいたコーヒーを食後に摂取した後、10-15分ほど昼寝をする。そんなこんなで気がつけば1時50分過ぎだ。2時からの授業に出席するために大学に向かう。
午後の授業が5時に終わると、直接大学近くのスーパーマーケットで(主にフルーツ、野菜、もも肉、たまごやワインだ)買い出しをして帰宅する。もし翌日の授業用の必読文献をまだ読めていないのであればその時間に充てるし、既に読めているなら、オススメ任意文献で気になっているのものか、自分の研究向けの優先順位の高い本を読む時間に充てる。あっという間に7時すぎだ。
夕食から就寝と夢と小鳥のさえずり
7時半か8時頃に夕食をとる。夕食は決まって作り置きしていた最強の完全メシことラタトゥーユ(1食あたり約302円)にしている。オリーブオイルでニンニクを炒めた後に、玉ねぎを飴色になるまで炒め、にんじんとブロッコリーとプチトマトを加え蓋をする。プチトマトの水分でにんじんとブロッコリーを蒸していくイメージだ。そこにトマトソース、パプリカ、セロリ、シイタケを加えてもう一煮立ち。食感を残したいアスパラガスとオクラをこの辺りで入れて、最後に一口サイズの鶏むね肉をたっぷり入れて弱火でじっくり煮込んだら完成。休日にたっぷり作って、それを平日に消費していくというルーティーンをとっている。飽きる心配は全くない。ラタトゥーユに飽きたらカレーパウダーをかけてカレーにすればいい。カレーが飽きてきたらまたラタトゥーユに戻せばいい。それだけのことだ。夕食を食べた後にまた読書に戻るとなんやかんやで10時過ぎだ。
Amazon UK、Netflix 、Kanopyから映画(またはドラマ)のウォッチリストからその優先順位やそれを上回る自分の気分に従って観ていく、アメリカンIPA(500mlあたり約401円)と白ワイン(375mlあたり約1,002円)を飲みながら。または最近は映画を見る代わりにこうしてnoteを書くようにもなった。そして、気付けば午前零時過ぎだ。雨上がりの冷気を感じた後、大人の子守唄こと深夜ラジオのラジカルな音を聴きながら眠りにつく、そしてまた、もう一度、ここで再び夢を見るために。そして、また小鳥のさえずりで目を覚ますことを夢見ながら。
おまけからパブとボードゲーム
ちなみに授業のない曜日、つまり金曜日から月曜日は何をしているのかというと、基本授業の時間を本を読む時間に充てている。違いがないと言えば違いがない。週に合計6つの授業(それぞれ3時間なので2コマというのかな?)から2つ履修しなくてはならないのだが、どれも面白過ぎて結局開講されている授業はすべて出席している(履修してない授業はその担当講師に許可を得て聴講生として参加している)。聴講生でも必読文献を読んでくるのが参加条件なので、この6つの授業の必読文献+気になったオススメ任意文献を消化するのに4日間はそれでも少ないぐらいに感じている。
あと、木曜日の最終授業後、つまり午後5時以降に毎週必ずといっていいほどイベントが開催され、博士課程の学生の発表、他大学の先生の講義やセミナーがあり、それが終わった後に必ずパブで議論の続きをするという伝統みたいものがある。私は大体ラガー→IPA→ギネスの順で飲んでいく(4pintsあたり約4,772円)。
イベントがない木曜日の授業後は気の知れた仲間と読書会を開いて、そこではギネススタートのギネスエンドにしている(2pintsあたり約2,309円)。他には、月曜日だけカスクエール(木製樽からハンドポンプで汲み上げる式)が3.5£(約668円、4pintsあたり2,672円)になるカスクデーを設けているパブが大学近くにあるので、そこで毎週月曜日は気の合う仲間とボードゲームを楽しんでいる。私も含めたみんなのお気に入りはSecret Hitler, CodenamesとBangの3つだ。それぞれ近代の哲学者に求められている能力でもある、つまり外交力、抽象化力と決闘力である。
そのサポートは投資でもなく、消費でもない。浪費(蕩尽)である。なぜなら、それは将来への先送りのためでも、明日の労働のためでもなく、単なる喪失だからである。この一瞬たる連続的な交感に愛を込めて。I am proud of your being yourself. Respect!