ラーンテックラボ

高校世界史のデジタル教材を企画開発中。 とりあえず,商材開発用のメモとして使用。

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マガジン

  • 世界史シリーズ vol.1 古代オリエント

    世界史の単元ごとのまとめです。 「古代オリエント」の通史について,順次オリジナル記事を掲載していきます。

最近の記事

[世界史探究] 新教科書⑷ -イスラームとヨーロッパのこと-

 高校新科目「世界史探究」の新教科書に関する記事の第4回です。  今回は,従来の「世界史B」教科書と比較する上で,必ず押さえておきたい「イスラーム世界」と「ヨーロッパ世界」の取り扱いの変更について記したいと思います。 ▼前回の記事はこちらから 重かったイスラーム&ヨーロッパ 世界史B教科書では,「イスラーム世界」と「ヨーロッパ世界」について,第2部の中で,時間軸をかなり長くとって扱っていました。  「イスラーム世界」については,これまで,7世紀の発祥からアラブ征服を経

    • [世界史探究] 新教科書⑶ -古代文明と諸地域のこと-

       高校新科目「世界史探究」の新教科書に関する記事の第3回です。  今回は,教科書本文初っぱなの「第1部 諸地域の歴史的特質の形成」について,その内容を具体的に探ってみたいと思います。  ザックリ「古代」に当たる大項目です。  なお,教科書によっては,第1部に「世界史へのまなざし」を位置づけていることがあり,その場合,この大項目は「第2部」になります。ご留意ください。 ▼前回の記事はこちらから 何を「古代文明」として扱うのか? 「世界史B」の教科書を使い慣れた人が「世界

      • [世界史探究] 新教科書⑵ -枠組が変わったこと-

         高校新科目「世界史探究」の新教科書に関する記事の第2回です。  今回から,新教科書の具体的な内容や「世界史B」との相違点などについて,学習指導要領の記述を参照しながら見ていきます。  なお,一連の記事内容は,第1回の記事で挙げた5冊の教科書を通覧しての情報です。新教科書は全部で7冊あり,残り2冊は未確認です。あらかじめご了承ください。 ▼第1回の記事はこちらから 「人類の進化」は外されたのか? 本をパラパラとめくりながらザックリ中身を確認するとき,たいてい巻頭の特集

        • [世界史探究] 新教科書⑴ -5冊見たこと-

           いま高校では,新学習指導要領に対応した新しい教育課程への改編が進行中です。  この改編は令和4年度入学生(現1年生)から始まっていて,この4月からの新年度に2年生までの新課程への切り替えが完了します。  そしてそれに伴い,この春,新学習指導要領に則った各科目の新しい教科書が出揃います。  個人的に,新科目「世界史探究」の主要教科書を閲覧していますので,気づいたことなどを,何回かに分けて記したいと思います。 高校「地理歴史科」の枠組み大改編 まず,新課程における地理歴

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        • 世界史シリーズ vol.1 古代オリエント
          16本

        記事

          [夜話05] 「冷戦の残骸」としての戦争 〜世界情報戦40日〜

          ▶︎ 心晴れないこの40日  ここしばらく受託開発の案件が正念場を迎えていて,ずいぶんと間が空いてしまいました。  まあ,具体的に収入になる仕事でもあり,個人開発の重責もあり,そちらに注力するのは当たり前なわけですが…  それも概ね目処が立ち,少し一息つけるかなという状況になりました。  一方でこの40日ほどは,世界的な危機到来のなか,御多分に洩れず,日々ニュースを追いながらヤキモキという状況でありました。  ここ数日の停戦協議やロシアの戦略変更でようやく光明が見え始

          [夜話05] 「冷戦の残骸」としての戦争 〜世界情報戦40日〜

          【古代オリエント16】 アケメネス朝⑵ 〜世界帝国の完成者〜

           アケメネス朝ペルシアの2回目は…  キュロス2世が基盤を築き,カンビュセス2世がエジプトまで拡大したペルシア帝国を,真の「世界帝国」として完成したとされるダレイオス1世の事績を追います。  そして,その中で帝国のしくみの大枠を捉えていきます。 1) ダレイオス大王とは何者か?▶︎ ダレイオス1世即位の謎  エジプト征服を達成したカンビュセス2世は,3年間のエジプト滞在後,前522年にペルシア本国への帰途,謎の死を遂げます。  その後を継いだのはダレイオス1世とされ

          【古代オリエント16】 アケメネス朝⑵ 〜世界帝国の完成者〜

          【古代オリエント15】 アケメネス朝⑴ 〜帝国の創生〜

           「古代オリエント」の最終章として,アケメネス朝ペルシアを3回に分けて取り上げます。  初回は,ペルシア帝国前史からキュロス2世による帝国創建,カンビュセス2世のエジプト征服までです。  アケメネス朝ペルシアは,同じオリエントの大国でも,エジプト王国やアッシリア帝国のような千年単位で時を刻んだ老成国家とは異なり…  東方の辺境に忽然と現れ,オリエント全土を一気に征服して超大国を築きながら,わずか220年で消滅してしまった謎多き国です。  また,ペルシアのある王は旧約聖

          【古代オリエント15】 アケメネス朝⑴ 〜帝国の創生〜

          【夜話04】 ”戦争って起こるんですね”とは…

          ▶︎プーチン氏の怨嗟と狂気  ここしばらく,前の勤務先から受託したWeb教材アプリの開発にハマっていて,「世界通史メモ」には手が回らない日々が続いていました。  久々のがっつりプログラミングは楽しく,「世界史」研究に煩悶する日々のストレスを解消し,リフレッシュする効果はありました。  そして,そろそろ「本業」に気持ちを戻さねば,と思っていたところへ,よもやのプーチン氏乱心!  またも,世界史上に「戦争」の汚点を刻み込む蛮行。  今回のプーチン氏は何だか妄想に取り憑か

          【夜話04】 ”戦争って起こるんですね”とは…

          [夜話03] メソポタミア完結後のジレンマと「使命感」

          ▶ジレンマをかかえつつ…  現在,ノロノロと追加更新中の古代オリエントシリーズも(欠番10を除いて)ようやく14回を数えました。  この時期になって,まさか最初の1シリーズすら完結していないとは,当初,思いもしませんでしたが…  もともと商材開発のための基礎研究であり,目的は実用的ナレッジベースの構築なので,急いでいい加減な記事を上げるわけにもいかず…  しかしながら,そのために費やす時間は膨大でもあり…  一方で,別に受託開発案件が入って,今後,なかなか多くの時間

          [夜話03] メソポタミア完結後のジレンマと「使命感」

          【古代オリエント14】 メディア, リディア, 新バビロニア

           前612年の新アッシリア帝国の滅亡後,オリエントは4つの王国が分立する時代に入ります。   ペルシア帝国の先駆者ともいわれるメディア王国,世界初の硬貨鋳造で知られるリディア(リュディア)王国,メソポタミア最後の光芒を放った新バビロニア王国,古代エジプト最後の繁栄期とされる第26王朝。  のちアケメネス朝ペルシアに征服されるこれら4王国のうち,一般にあまり知られていないメディア,リディア,新バビロニアを取り上げ,その興亡史を掘り起こしておきたいと思います。 1) メディ

          【古代オリエント14】 メディア, リディア, 新バビロニア

          アッシリア史 補筆 〜王の事績簿 & 帝国の構造〜

           過去3回のアッシリア史の記事では,おもにオリエントの国際関係を背景とした王朝の興亡を,年代順に書き連ねました。  かなり端折ってはいますが,それでも登場する王が多く,また,何度も同じような戦争が繰り返され,整理しないとよく分からないと思います。  一方で,帝国の社会・経済のしくみなど,興亡史だけでは扱えない内容が残ってしまいました。  この「補筆」では,覚書程度に,上記の内容について整理・捕捉しておきたいと思います。 1) おもな王の事績簿 世界史教科書に登場するア

          アッシリア史 補筆 〜王の事績簿 & 帝国の構造〜

          【古代オリエント13】 新アッシリア⑵ 〜世界帝国とその崩壊〜

           アッシリア史の3回目(最終回)は,新アッシリア帝国の絶頂期と,そのあまりにも呆気ない幕切れについて紐解きます。 1) 「世界帝国」完成へ サルゴン2世の治世までに獲得した広大な領土をもとに,史上初の「世界帝国」に成長した前7世紀初めからの約70年間は,アッシリアにとってまさに絶頂期でした。 ▶︎センナケリブ 〜ユダ攻撃とバビロン破壊〜  サルゴン2世の没後,皇太子として父王を補佐してきたセンナケリブ(前704〜681)が王位につきます。  センナケリブは,父王が遠征

          【古代オリエント13】 新アッシリア⑵ 〜世界帝国とその崩壊〜

          【古代オリエント12】 新アッシリア⑴ 〜「帝国」への道〜

           前回の「アッシリア帝国前史」に続き,前1000年紀の新アッシリア帝国について2回に分けて記します。  これ以降のオリエント世界は,強大な「帝国」が栄枯盛衰を繰り返す時代に突入します。 1) 「帝国」への序章▶︎前1000年を挟む混乱期  前2000年紀の終わりに,メソポタミアを襲った大飢饉とそれに続くシリア砂漠周辺からのアラム人(西方セム語系)の流入で,アッシリアは大打撃を受け,急速に領土を奪われました。  また,ヒッタイト滅亡後,アナトリア南東部からシリア北部やユー

          【古代オリエント12】 新アッシリア⑴ 〜「帝国」への道〜

          【古代オリエント11】 アッシリア帝国前史

           古代メソポタミア史は,「アッシリアとバビロニアの興亡の歴史」であるとも言われます。  今回は,古代オリエント世界に初めて「世界帝国」を築いたアッシリアの前史(中アッシリア時代まで)を,周辺地域との関わりの中で追ってみたいと思います。 1) 「アッシリア」とは… メソポタミアはバグダードの北方を境に大きく南北2つに分けられ,北部をアッシリア,南部をバビロニアと言います。  アッシリアは,ギリシア語で「アッシュルの地」を意味します。  「アッシュル」はティグリス川中流の

          【古代オリエント11】 アッシリア帝国前史

          アッシリア vs. バビロニア ~1200年の「空白」~

           古代エジプト史の呪縛からやっと逃れて,自分本来の興味・関心の対象である「アッシリア史」に移れると思った矢先,思わぬ障害が…  もはや持病になってしまったのか,右腕のしびれが酷くなり,記事を作るのが難しくなってしまいました。  1年半ほど前,まだ会社員だった頃,コロナ渦の在宅ワークで,Adobe Illustratorによる開発作業にみっちりハマっていたときに発症。  よくあるマウス症候群かなと思い,しばらく安静を心がけて,1~2か月で回復したのですが… それから1年以上

          アッシリア vs. バビロニア ~1200年の「空白」~

          古代エジプトの神々

          古代エジプトの神々