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ゆるやかな古典ブーム

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個人の判断で古典とみなした本たち
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#読書の秋2020

『ゴリオ爺さん』を読んでみた〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜

『ゴリオ爺さん』を読んでみた〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜

一生をかけて光文社古典新訳文庫をじっくり読んでみる。そんなシリーズを始めてみようと思います。

1814年、ナポレオンに代わってルイ18世が即位。王政復古の名のもと貴族制度が復活したフランス。物語の舞台は、社交界が息づき、お金と見栄と、ゾンバルトもびっくりするような恋愛と贅沢が蔓延るパリ。

小麦商人のペール・ゴリオ(以下、ゴリオ爺さん)は革命と隣り合わせの不安定な社会を乗り切り、製麺業で財を成し

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『嵐が丘』を読んでみた〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜

『嵐が丘』を読んでみた〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜

一生をかけて光文社古典新訳文庫をじっくり読んでみる。そんなシリーズを始めてみようと思います。

著者のエミリー・ブロンテは29歳で『嵐が丘』を出版し、肺結核を患い30歳の若さで亡くなった。

イギリスの片田舎で魂を削りながらしたためた一冊。生涯で小説はこの一編のみ。彼女の死後、『嵐が丘』は世界文学を代表する一冊と称されるまでに至った。

出版時の著者と、いま読者の自分は時代は違えど29歳の同い年。

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『アンナ・カレーニナ』を読んでみた〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜

『アンナ・カレーニナ』を読んでみた〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜

一生をかけて光文社古典新訳文庫をじっくり読んでみる。そんなシリーズを始めてみようと思います。

毎日、本の感想を書いていると長編の小説には手が出しにくい。というわけで自由気ままに読むスタンスに変えました。

これまでの反動もあって一発目に選んだのは大長編『アンナ・カレーニナ』。本棚にひっそり眠っていて、ようやくです。

トルストイが描く同時代ロシア貴族社会の人物群像劇。タイトル同名の女性、アンナ・

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全体主義的システムの周到さにいまさら驚くディストピア小説『一九八四年』(ジョージ・オーウェル)

全体主義的システムの周到さにいまさら驚くディストピア小説『一九八四年』(ジョージ・オーウェル)

訳者あとがき曰く、英国での「読んだふり本」第一位が本作らしい。漫画版の『村上春樹の「螢」・オーウェルの「一九八四年」』を最近読んだものの、小説の方は学生時代に図書室で読んだ程度で、記憶もおぼろげ。

たしかにビッグ・ブラザーだとかキーワードさえ知っていれば「読んだふり」はできそう。ドキッとして笑ってしまいました。

さて、舞台はビッグ・ブラザー率いる党が支配する全体主義的近未来(1984年)。主人

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で、なんで待ってるのかわかりまてん!『ゴドーを待ちながら』(サミュエル・ベケット)

で、なんで待ってるのかわかりまてん!『ゴドーを待ちながら』(サミュエル・ベケット)

TBSラジオ、ライムスター宇多丸さんのムービーウォッチメン「桐島、部会やめるってよ」の映画評。

たしか「シンボルとなる人物が劇中の最後まで登場しない」という共通点で本作がかるく紹介されていて、ずっと気になっていました。

不条理演劇の代名詞にして最高傑作。デュシャンの泉のようなメインに対するカウンター的存在が、いつの間にか演劇史のなかでどっしりと鎮座している、そんな印象。

本書の解説にある通り

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