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1965年のダイバーシティ&インクルージョン&イノベーション

私はおおいなる歴史の流れを感じることがとても好きで、過去の偉人の偉業や名言を眺め、深夜に想いを馳せる癖があります。
IVS2023京都への道中、昔の同僚のつながりもあり、オムロン京都太陽の見学に伺い、深く感銘を受けたので以下に記します。(会社としてではなく、個人の感想になります。)
転職してはや6か月が過ぎ、業界の歴史と働くことの奥深さを感じています。

1965年、太陽の家設立。誰もが自分の能力を発揮できる社会へ

1960年代、「パラスポーツ」はおろか「リハビリテーション」という言葉すら日本にはなかった時代、「障がいがあると働けない」とされていた時代。「保護より機会を」「世に身心障害者はあっても仕事に障害はあり得ない」このスローガンを元に、日本の障がい者スポーツの父と呼ばれた中村裕先生が立ち上げた社会福祉法人、太陽の家。中村先生はスポーツでも仕事でも、誰もが自分の能力を発揮できる社会を目指していました。

賛同した今も煌めく企業たち

この趣旨に賛同した企業が当時にまだまだ大きくなかったソニーの井深大、ホンダの本田宗一郎、オムロンの立石一真らの気鋭の実業家たち。これらの企業と共同出資した会社を設立して障がい者を雇用し、通常の工場と同様の製品の生産を行っていくことになったそうです。
当時はかなりいろんな批判を浴びたそうですが、この時代にこれをやり切るって、ものすごい強い意志というか、当時から発想がイノベーティブでありチャレンジングであり、DX・SX・IXな取り組みだったのではないかと遠い目をしながら思いを馳せておりました。

オムロン立石一真氏

その中の一人、オムロン創業者、立石一真氏。数年前に「SINIC理論(1970年発表)」を知った時は、この人は未来から来た人なんじゃないかと思ったぐらい先見の明があるスーパー経営者。

前置きが長くなりましたが、今や年商8000億円を超えるオムロングループ、その一グループである「オムロン京都太陽」に訪問していろいろと話をお伺いしてまいりました。

1970年代、企業から仕事がなかなか集まらず困っていた中村裕先生から打診を受けた立石氏は悩んだ挙句、「やるなら本気でやる」と1972年、太陽の家と合弁で会社をつくり、日本発の福祉工場を打ち立てたそうです。
従業員全員が株式を持ち合うという画期的な仕組み。社憲といわれるオムロンの企業理念に基づくと障がい者雇用も社会課題解決の一つであるとのこと。そして、これをきっかけに、ソニー、ホンダ、三菱商事、デンソーなど現代の名だたる企業も太陽の家と合弁会社を設立。

「業務に人を付ける」のではなく、「人に業務をつける」

オムロン京都太陽は1985年に設立され、現在の生産従事者は182名、うち障がい者数114名が在籍しております。
業務に合わせて人をつける、というのが普通の考え方だと思いますがオムロン京都太陽での考え方は、「人に業務をつける」。つまり、人間の機能・スキルに合わせて、業務プロセスを変えていく、という考え方。業務プロセスに問題や障がいがあればそれを取り除くために「機械をカスタマイズする」「補助具を作る」「ラインを分割する」などの改善を施していく。
おもしろいのは、この機械のカスタマイズや補助具をつくる、という事を利用者自身が考えて作るというところ。専用の部屋もありました。
立石氏の「本気でやる」というのは徹底的に「働く人たちに自律を求めている」=「障がいは特別な存在ではない。」=「人の可能性を信じている」というようなメッセージにすら見えてきました。
実際にそういった仕組みを取り入れたことで、障がいをお持ちでない方が作業するよりも130~140%も生産効率がアップしたこともあったようです。これはすごいことだと思います。

システムによる可視化×究極のコミュニケーション

オムロン独自の技術や外部ツールを使って動きや能力を可視化し、システマティックに生産ラインを組んでいることに加えて、人の手も介した「究極のコミュニケーション」と呼んでいるサポートを行っているそうです。
システム+上司、職場メンバー、人事総務全員で障がい者をサポート。自己を理解し、自己開示し、お互いの違いを認め、日々相互成長をしていく究極のマネジメントであり、このマネジメントを経験した人は、どこの職場でもマネジメント能力が上がるのではないかといわれているそうです。

脈々と受け継がれるオムロンの企業文化

オムロン京都太陽の現社長の三輪さんから聞いた以下の言葉がとても印象的でした。
50年たって、トップも経営層も従業員も時代も大きく変わっているのだけれど、企業としての障がい者との取り組みはずっと続いているんですよね。
誰かがもう辞めようぜ、って言ってもおかしくない。でも続いているんです。不思議とやろうという気持ちになるんです。

中村裕先生と立石一真氏の本気の想いから始まった取り組みは、50年たっても脈々と受け継がれ進化している。企業文化とは何か?を深く考えさせられます。
オムロン全社では現在障がい者雇用は234名(2022年6月現在)。2023年現在の企業に求められる障がい者法定雇用率は2.3%ですが、オムロン社は3%以上を目標にしているそうです。(2022年6月20日時点で3.12%)
また経営全体における人材戦略においても「人的創造性」という独自の指標を設け、取り組まれております。(人的創造性=付加価値額(売上から変動費を引いた値)を総人件費で割った人件費当たりの付加価値額)

歴史を学ぶと今がみえる、未来がみえる。

50年前から続く太陽の家の歴史、中村裕氏と立石一真氏の考え方や行動、オムロンの考え方や取り組みに学ぶ点はとても多い気がしました。VALT JAPANの事業にも活かしていきたいし、企業文化を作っていく、という視点でもとても参考にしていきたい、そしてもっともっと多くの人たちに知ってほしいと思いましたー。
きっかけを作ってくれたSさんありがとうございました(゚∀゚)

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