ぼくの机には庭がある。 日々風呂日記#18
ぼくの机の上には庭がある。
そんなわけは、もちろんない。
いや、あるのだけれど。
最近、後ろで髪をくくれる程には髪が伸びてきたから、髪を縛るためのヘアゴムを常備している。
ぼくは机の上の物の置く位置を、ざっくりと決めておくことが好きで、そのヘアゴムも例外ではない。
そんな几帳面か神経質かわからない習慣の上で、今日もヘアゴムを所定の位置に戻そうとしたところに、
相方を無くしたイヤホンのイヤーピースと、コードを束ねていた針金だろうか、がそのヘアゴムの位置に居座っていた。
ここで几帳面なり神経質なりと前述したぼくの面目は完全に潰れることになる。
さて、その二者が、その時まるで迷子の子が知らないところに迷い込んだように、なんだかもの寂しげに見えたので、
そのヘアゴムで優しく保護してあげるかのように、囲ってやった。
その途端、ぼくの机の上にある異変が起きた。
そのヘアゴムで囲まれた部分が、何かしら「内」と呼べそうな空間になったからだ。
そうすると、それ以外の部分は「外」になるだろうか。
そして、さらにその囲んだヘアゴムをまた取り除いてあげると、
そこにはとても大きな、机全体という空間が現れた。
そうした途端、その子たちはまた大きな野原に放たれて、またよりどころを無くしたような寂しさを醸し出す。
その景色に、なんだか少し自分の心情が重なって物悲しくなったのは、ここだけの秘密である。
さて、ここのどこに庭があるというのか。
ぼくは庭とは、その庭を介して意識を、足元の草やさらにはそこに住む小さな虫へ、そうしながら果ての背景となる風景まで広げてくれる存在だと思っている。
このヘアゴムを置くことで、ぼくの意識は行ったり来たりし、ヘアゴムから、ヘアゴムの外の机という領域へ、
そしてそこにとどまらず、そのさらに外側にいる自分を捉えて、もっとさらにその外にだって世界はあるということを自覚させ、果ての宇宙までを旅する。
これはぼくにとって、間違く庭と呼べるコスモロジーだ。
なんだかこの少し閉塞感を感じるいつもの机が、大きくみえてきた。気がした。
そうであるならば、今この机の上で直向きとはいえないまでも、せかせかと行っている作業が、大きな外の世界に繋がってくれるだろうか。と少し前向きな気持ちになれた。
そんな小さな希望を頼りに、今日もぼくはぼくという未知の庭に向かって種を撒くように作業を進める。
今日ののぼせ具合は90%.
最近あったかいから眠いですね。
それでは。