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#175 「会社」が溶けてゆく時代

昨日、中間管理職の仕事は真っ先にAIに置き換わる、という日経新聞の記事を紹介しました。

こんな話、そういえばトーマス・フリードマン著「遅刻してありがとう」にあったな、と思ったので、ざっと再読して考えてみたことを、メモ。


1、「雇用とスキル」の関係

本書第8章でボストン大学法科大学院ジェームズ・ベッセンの労働市場の研究、特に「雇用とスキル」の関係について紹介されています。

☑️ テクノロジーは、すべての労働者のスキルの価値を高めるわけではない。一部のスキルだけが貴重になり、その他のスキルは時代遅れになる
☑️ 仕事はなくならないが、いい仕事に必要とされるスキルが高くなっている

その上で、著者フリードマンは「ミドルクラスのすべての雇用が、一度に4つの動きを見せている」として、その4つを以下の通り挙げています。

☑️ ミドルクラスの仕事は急速に引き上げられ、高度化する
☑️ ミドルクラスの仕事は急速に引き離され、細分化する
☑️ あらゆる仕事は機械、あるいは中国やインドの労働者、と奪い合いになる
☑️ あらゆる仕事はそのままではアウトソースされ、すぐに時代遅れになる

つまり、仕事は高度化、細分化(専門化)するので、それらに対応したスキルを持つ人材は少数となる。一方で、教育、学習のコスト、アクセスは改善しており、一般の(従来の)仕事をこなせるスキルを持つ労働者は増え、仕事の奪い合いになる。しかも、その仕事でさえ、すぐに時代遅れになる、ということです。


2、「社員の学びを促す」具体例としてのAT&T

また、すでにこのような事象が起こっている例としてAT&Tが紹介されています。

☑️ AT&Tでは、30万人の社員のうち、毎年10%が「35年勤めたから、もう新しいことを学ぶつもりはない」といって辞めていく。
☑️ 効果的に指揮をとれるスキルを持つ社員、テクノロジーについて十分な知識を持つ社員、の数は十分とは言えず、毎年、3万人社員を雇う。
☑️ 社内の人事異動や昇格でさらに3万人埋め合わせる。
☑️ 社員がその意欲に合わせて学習(かなり専門的な内容も含む)し続けることができる仕組みを複数の大学と協力して作り上げ、社員に提供している
☑️ 自発的な学びをすれば、それが登録され、次の異動の際に優先的に配属されるという仕組みも導入し、社員の学習のインセンティブにしている


3、まとめ

この本が書かれたのは2016年。すでに昨日ご紹介したような状況が予測、あるいは一部は実例となっていることが分かります。

本書では、過去の事例から、必ずしもテクノロジーの発達が雇用を奪う、という単純な構造ではなく、コストの低下による需要増や新たに必要とされる仕事などにより総雇用自体は減らないかむしろ増加する可能性が高い、としています。

しかし、前述の通り、新しいテクノロジーを使いこなせるスキルは一部の労働者にしかなく、使いこなせない労働者の労働力はコモディティ化し、機械や国境を超えた海外の労働者と奪い合うことになる。


しかも、テクノロジーの発達は教育のコストやアクセスも劇的に改善するので、海外の労働者の競争力も高くなり仕事の奪い合いは激しくなる。

このような背景から、我々が現状を維持するには、必要とされる高度な内容を学習する(しかも常に)必要がある、ということです。

これらに、昨日ご紹介した、現在のギグエコノミーを成立させているプラットフォームの技術を適用すれば、会社という枠組みが溶けていく時代まで意外と時間がかからないのではないか?という感想を持ちました。

「ジョブ型雇用」も、こうした文脈に置くと、妙に納得感のあるものになります。なぜなら、「ジョブ型雇用」の次は「ジョブ」を都度「外注」する段階になるからです。

しかも、これまで難しいとされていた、業務の割り振り、明確化、などは、「AI分業コーディネーター」の得意とするところですし、一度社員として雇用すると活躍してもらうためにAT&Tのような膨大な再教育、継続教育の手間とコストがかかりますが、社外も含めて業務ごとに発注できるようになれば、「会社」として必要なのは、本当に「アイディア」だけになります。

と、ここで、だから副業だ!という前に、個人的には、現時点でまだ、「会社」という枠組みの中にいてできること、「会社」というリソースを使ってできること、を考えたいと思います。本当に「会社」が溶けちゃう前にしかできないですから。

あ、こっちも溶けちゃわないように、「学習」も必要ですね。


最後までお読みいただきありがとうございました。

勝手な妄想ですが、何か参考になるようなところがあれば嬉しいです。

「会社」に関しては以下のような投稿もしてましたのでご興味がありましたら。


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