#313 「ビジネス頭の体操」 今週前半のケーススタディ(5月24日〜26日分)
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
5月24日(月) 日本のゴルフ人口は世界第○位!?
1903年のこの日、日本初のゴルフ場「神戸ゴルフ倶楽部」がオープンした、「ゴルフ場記念日」です。
ゴルフ場。
この環境下、始める人が増えていることが報道されています。
実際のところどうなのでしょう?
経済産業省の「2回目の緊急事態宣言下でも活況だったゴルフ練習場・ゴルフ場」で分析がなされていますのでデータをご紹介します。
まず、様々なサービス業の活況度を示す第3次産業活動指数から、スポーツ施設提供業の内訳業種の推移データです。
主に屋外でプレーするゴルフ場やゴルフ練習場は、ともに1回目の緊急事態宣言の際は大幅に低下したものの、夏にかけて急速に回復し、2回目の緊急事態宣言が発出された後も好調が続いている一方、室内となるボーリング場やフィットネスクラブは低調となっています。
次に、売上高の推移データです。
こちらも1回目の緊急事態宣言で3〜5割近く減少した後、急回復していることが分かります。特に、練習場の回復が早い、というか、プラスに転じていることがわかります。
これは、売上高は「利用者数」×「一人当たり売上」に分解すると、練習場は利用者増がそのまま回復につながっているものの、ゴルフ場では、利用者は回復したものの、飲食やキャディーをつけないなどの感染症対策によって1人当たりの売上高が以前より低くなっていることが要因です。
もう少し長期のゴルフ市場についてみてみます。
経済産業省の「令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(個別スポーツの需要喚起策可能性調査)報告書」によると、1996年には約2.5兆円あった市場規模は2018年には1兆3,210億円と半減しています。そのほとんどがゴルフ場に対するものです。
ゴルフ参加人口はどうでしょうか?
同報告書によると、1991年に1,784万人、参加率17.8%でしたが、2016年にはそれぞれ890万人、同7.9%となっています。
ちなみに、ゴルフダイジェストオンラインの決算資料の「世界のゴルフ市場」によると、日本はアメリカに次ぐ第2位のゴルファー数だそうです(下図)。
こうしたゴルフ市場ですが、将来を占う上では年齢構成も重要な要素です。
2016年には50代以上が占める割合が半数を超えていますので、若者の取り込みが課題といえます。足元、新たに始めた人たちを定着させられるか、がゴルフ市場の将来を左右しそうです。
最後に、矢野経済研究所のゴルフ用品の市場についてのデータをご紹介します。クラブの種類別のデータもあります…
→足元で始める人が多いゴルフだが、正常化後も継続してくれるようにするためにはどのようなマーケティングが考えられるだろうか?
5月25日(火) アフリカの面積は日本の○○倍!?
1963年のこの日、アフリカ統一機構(OAU、現 アフリカ連合(AU))が発足した、「アフリカデー」です。
アフリカ。
知っているようで知らないアフリカの統計を調べてみました。
農林水産省の地域別情報「アフリカ統計データ集」によると、
☑️ 人口:12.1億人
☑️ 面積:3,031万㎢
☑️ 名目GDP:2.2兆ドル
☑️ 1人あたりGDP:1,809ドル
となっています(いずれも2017年)。
ちなみに、日本は、人口1.2億人、面積37万㎢、名目GDP4.8兆ドル、1人あたりGDP 38,440ドル、ですので、人口で10倍、面積で80倍、名目GDPで約半分、1人あたりGDPで20分の1、ということになります。
経済産業省「通商白書2020」によるとサブサハラアフリカ(アフリカ大陸のサハラ砂漠以南の呼び名)のGDP成長率の推移は5%前後で推移、2020年は感染症の影響でマイナスとなっています。
当然、国によって全く状況は異なります。同白書では、国のタイプを原油輸出国(アンゴラ等)、その他資源集約国(ブルキナファソ等)、非資源国(ベナン等)、脆弱国(ブルン等)、観光依存国(カーボベルデ等)に分けて分析しています。これによると、非資源国はプラス成長を維持し、観光依存国はマイナス幅が大きくなっています。
東南アジア諸国とサブサハラアフリカのGDP上位7カ国のGDPを比較してみましょう。
ナイジェリアと南アフリカが特に大きく、タイとマレーシアの間、他はスリランカと同等か少なくなっています。
アフリカの輸出入額の割合を日本企業のアフリカ進出を支援するオンラインプラットフォームANZAでみてみます。
まず、輸出では原油や鉱石などの鉱物性資源が多く占めています。
輸入では、原油のほか、電気機器や自動車、穀物などが多く占めています。
先ほど見た通り、第1次産業の割合が多いことがここからも伺えます。
これにより、他地域に比べ域内貿易が少ない(下図)ことがアフリカ貿易の特徴となっています。つまり、第1次産業が多く、域内で補完関係にある産業が育っていない、ということです。
では、輸出入の相手国はどのような国でしょうか?再び「通商白書2020」から輸出入それぞれの上位7ヵ国の割合のデータをご紹介します。
アフリカの輸出相手国上位7か国の割合(2019年)
アフリカの輸入相手国上位7か国の割合(2019年)
報道などでもありましたが、改めて中国の進出が激しいことが分かります。
そして日本は登場しません…
最後に、アフリカにある8つの主な地域協力機構をご紹介します。
→アフリカ。日本の関与が少ないことは貿易のデータを見ても明らかだが人口や資源などからも重要な地域である。今後日本とアフリカとの関係はどのようになっていくだろうか?
5月26日(水) 高速道路の総延長は○○○○○km!?
1969年のこの日、大井松田IC~御殿場ICが開通し、東京から愛知県小牧市まで346kmにおよぶ東名高速道路が全線開通した、「東名高速道路全通記念日」です。
高速道路。
今回は、民営化されたんだよな、ぐらいの認識しかありませんでしたので、改めて調べてみました。
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構「高速道路機構ファクトブック2020」の<道路関係四公団民営化の枠組み>が端的にまとまっています(下図)。
高速道路を作り続けた結果、40兆円もの債務を抱えることになり、高速道路の建設・更新、管理、料金徴収を担う「東日本高速道路株式会社」「中日本道路株式会社」「西日本道路株式会社」の3社と、高速道路の保有・債務返済を担う「日本高速道路保有・債務返済機構」が作られた、というのが大枠です。
高速道路の建設は各道路会社が担うんですね。で、完成したら機構側に債務とともに引き渡し、その後、各道路会社は料金収入を減資に機構に貸付料を支払い、機構はそれを原資に債務を返済する、という仕組みです(下図)。
同機構「高速道路機構の概要2020」によると、令和元年度末時点でその総延長は10,360km、年間利用台数は35.8億台となっています(下図)。
全国で1日あたり約980万台が利用している計算になります。
気になる安全面ですが、高速道路における死傷事故率(1万台の自動車が1万キロ走行した場合の事故件数)は、平成18年度から約6割低下しているそうです(下図)。
各道路会社では、「安全・安心の確保」、「快適なサービスの提供」という2つのテーマに対して、死傷事故率、逆走事故件数、渋滞損失時間などの指標ごとに目標値を設け、改善を図っています(下図)。
こうした取り組みで40兆円もの債務は減っているのでしょうか?同概要に債務返済計画と実績がありました(下図)。
おそらく金利の大幅な低下もあると思いますが、計画を上回るペースで債務の削減が進み、11兆円を超える返済がなされて債務が3割ほど減少しています。
機構が抱える債務の返済は進んでいますが、各道路会社の経営はどうなのでしょう?
直近通期決算である、令和元年度決算(2020年3月期)では以下の通り、機構に賃借料も払い、メンテナンスもし、利益も出しています。
☑️ 東日本高速道路株式会社 料金収入:8,574億円、賃借料:6,211億円、経常利益:137億円
☑️ 中日本道路株式会社 料金収入:6,897億円、賃借料:4,915億円、経常利益:163億円
☑️ 西日本道路株式会社 料金収入:7,982億円、賃借料:5,708億円、経常利益:96億円
(各社HPより上記項目のみ抜き出し)
足元では感染症の影響が気になります。通期決算の発表は6月のようですが、各社通期見通しを公表していて、いずれも初の赤字決算を予想しています。が、収入の変化に賃借料が変動する仕組みがあり、料金収入の落ち込みほど大きな赤字にはならないようです。
☑️ 東日本高速道路株式会社 料金収入:7,014億円(4.1%減)、賃借料:4,689億円(23.3%減)、経常損失:60億円
☑️ 中日本道路株式会社 料金収入:5,714億円(17.1%減)、賃借料:3,763億円(23.4%減)、経常損失:95億円
☑️ 西日本道路株式会社 料金収入:1,370億円(17.2%減)、賃借料:4,463億円(21.7%減)、経常損失:75億円
(各社HPより上記項目のみ抜き出し)
独特な仕組みで支出も減るという要因もありますが、JR各社の数千億円にもなる赤字決算に比べると影響は少ないと言えそうです。
→感染症の観点から車での移動が増え、中古車も売れているという報道も見かける。CO2削減の観点からは鉄道の方が圧倒的に有利だが、アフターコロナでは移動手段はどうなるだろうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
ゴルフ場。減ったとはいえ大きな市場ですね。多くの産業でユーザーの高齢化は悩みですからどうなるか気になります。
アフリカ。全く不勉強な領域でほぼ全て知らないことばかりでした。
高速道路。改めて勉強できましたし、足元の状況も知ることができました。
みなさまの頭の体操になったものがひとつでもあれば嬉しいです。
このような投稿を昨年7月から続けています。以下のマガジンにまとめていますのでご興味あればご覧ください。
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