見出し画像

文語俳句集 「紅葉川」150句 〜文語体の作品集〜

俳句にご興味のあるnoteのみなさまに俳句の様々なことについてご紹介していく記事です


文語俳句集「紅葉川」150句
はじめに

今年の秋の作品を中心にまとめました。

文語体、歴史的仮名遣い、古典的切れ字を基本にして詠んだ俳句集です。

伝統的な作品を楽しめますが、同時に一定の読みづらさがあります。

読者のみなさまにはご負担をおかけしますが、ご興味がありましたらご覧になってみてください。

*作品はすべて既発表句です
*資料用としてまとめたものです
*文語・口語の図を記事末に記しています


「紅葉川」
文語体俳句

あさがほやはためきて咲く風の空


かるく吊ればかるく風鈴響きけり


秋風鈴はるばると鳴り止みにけり


落ちかかるわが身のかげや墓洗ふ


つかふ水手に添ふ秋となりにけり


せんさうや首の折れたる大向日葵


おのづから空あふぎけり門火焚く


秋の蝶かぜのすきまを飛びにけり


かげ曳きて坂のぼるなり墓まゐり


はかまゐり三代つづくへいわかな


おのづからうまるるかげや盆の月


こほろぎにゆるしてをりし心かな


しづまる木ふえてゆくなり蝉の秋


ことごとくかぜのかたちや秋の雲


沈黙にあつまりしあかとんぼかな


ゆふぞらやくづれをただす雁の列


手をつけてかがみのなかや水の秋


ゆびさきに脈かよふなりつゆの玉


吸ひつきてひとさしゆびや露の玉


あらそひてみな墓の中身にしみぬ


ほそき枝すこししなるや小鳥来ぬ


浮く舟や湖面ながるるあきのくも


浜にでて秋の野あそび果てしかな


家系とはすゑひろがりやあまの川


かがやきて底の見えざる銀河かな


掃くおとやかぜ吹きまじる台風後


秋神輿すなはちみのりゆたかなり


すずめらの陽をついばむや大刈田


かげりつつあたりつつ日や紅葉山


月ほどにしづかなりけり虫のこゑ


羽ちらしてたたかひにけり羽抜鶏


せいりうやみづくさの花みづの底


大ゆふやけとほく敦煌ありにけり


おほどほりかなたまで陽や秋夕焼


大ガラスまどいちめんの花火かな


秋蝶のたましひは日にさまよへり


蓑虫はときをたびしてをりしかな


絮とばすすすきも母でありしかな


吹きほそるほかなし路地の秋の風


失せしみちやまにいくつや葛の花


秋まつりかげをゆたかに灯しけり


ランタンも銀河明かりも真白かな


あさがほのみな空色でありしかな


蔕とればさらさら種やたうがらし


なかにはにたえずけはひや鶏頭花


枝さきにつんとみのりし檸檬かな


死も生もはえてをりけりきのこ山


背後より鳥わたり行くながめかな


ふとそらにみちびかるるや望の月


望の月こよひひとりにひとつかな


かほよりもこころ明るき月見かな


いま夜の明くる国ありあきのくれ


竹の葉やさわぎておとす露のつぶ


啄木鳥のこだまも山のゆたかさや


秋の鳶そらをえらびしこどくかな


ゆくみちはかへりみちなり秋夕焼


蓑虫にうつろひやまぬけしきかな


流星やひと夜ふた夜とうつくしき


窓の辺やおのが手で消す夜学の灯


いけといふいけ名月をうつしけり


名月や富士五湖といふおほかがみ


すこしづつかほののぼるや観月会


ぜんこくの俳友さんとつき見かな


観月やいくまんのかほうつくしき


観月会名残りのころとなりにけり


待つこころこよひ満ちたり望の月


ながるるやいろ濃くもつれ天の川


沈黙やはたして見ゆるほしづき夜


いちりんのかげやうつろふ菊日和


菊大輪遅々と手入れをしてをりぬ


霧の森つかみどころのなかりけり


道あまた景色あまたやあきのくれ


まだすこし空見えてをり秋の暮れ


もみぢ且つ散るを掃きけり寺の門


曼珠沙華業を見つめてゐたりけり


弁慶草こまごま咲きてあはれなり


をとこともをんなともなく山粧ふ


さはやかやさざなみ立てて歩む川


秋の鷹かぜにのりてはやすみけり


ちさき鯊ちさき針にて釣りにけり


月のさす一ト間鬼城をおもふかな


雲きれてかほあらはるる月見かな


葉がくれのはなでありけり鳳仙花


金閣のわきに且つ散るもみぢかな


秋の鷹ひと飛びにそらわたくしす


なほ寄する波のしぶきや台風あと


五歩あるき鹿たふるるや銃のおと


すくふ手や瀬々にかつ散る紅葉川


棹さして知られしられずもみぢ舟


紙ぶくろかほのぞかせし林檎かな


鷹ばしら風のはしらでありしかな


山霧はこころとともに晴れにけり


せんねん後にせんねん後や鐘の秋


月光にからすの濡れてゐたりけり


たいやうを呼びつきを呼び芒かな


いが栗に楊枝をつかふ和菓子かな


コスモスや海のかぜまた山のかぜ


むくどりのくろき大群来たりけり


きつつきのときをり突つく心かな


仏手柑この世かの世にかをりけり


絵ふでとる青のじだいの秋思かな


あふぎみてひろひはじめぬ鬼胡桃


にはたづみ雲の行く水澄みにけり


そらといふまさをき籠や小鳥とぶ


鯊釣りや日がなひたひた波のおと


千々にとぶ一かたまりの帰燕かな


つややかにつかふ絵ふでや黒葡萄


秋の蝶永久にたましひ舞ひにけり


照るかほやふたへにみへに大花火


えだまめをすず振るやうに収穫す


山柿は実を落としつつもみぢかな


大鳥居うみにうつるや秋ゆふばえ


ともしあふ瀬戸大橋としまじまと


よこたはるいぬの寝息も夜長かな


菊大輪おのおのの美を咲かせけり


猿子鳥あかこぼれとぶこえだかな


日をたたふ蘆の穂絮となりにけり


ほそりゆく道や折りとる花すすき


満ちてよりはやひとつきや十三夜


初霜やすなはちしろきかはら屋根


今さらにわかることありぬくめ酒


やはらかに箸をつかふや焼秋刀魚


たくさんの葉かげに生るや大南瓜


じんせいのしづかなりけり銀木犀


灯火親しわが身のほかはしんの闇


見あぐればだれもかげなり後の月


木のしたに日ごとの毬や栗ひろふ


さいげつのながるるさまや天の川


月といふはるけき自然あふぎけり


日に花をささげてをりし野菊かな


たましひのさきばしりをり秋の蟻


路地裏にころがる靴やあきのあめ


銀杏ちるすなはち季節ちりにけり


みづたまりのぞく鴉やあきのくれ


ほしぼしの出でて宇宙の花野かな


島一つせめにせめるやいなびかり


山芋を蕎麦もろともにすすりけり


瓦斯灯のむかしをてらす夜霧かな


流星や夜ごとやしなはれしこころ


やはらかに芯とほりけり破れ芭蕉


やすやすと牛蒡引かせぬ大地かな


入る山やすなはちひびく鹿のこゑ


そのおくにしろひとすぢや霧の滝


句のしんにあるものや色変へぬ松


醸造所日あたるぶだうもみぢかな


こまごまとすすきの光ちりにけり


しろじろと葉をふちどりぬ秋の霜


どんぐりも山の地層となりにけり


日だまりをえらびし猫や冬ちかし


さいげつは銀杏照葉として散りぬ


以上
作品発表順


▽俳句の読みくらべがしたい方はこちら▽
文語体・口語体・しゃべり言葉


◇文語・口語の大まかな図

下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です

◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体

◇口語=口語体=現代語=書き言葉
         ∟==話し言葉

◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い


いつも
ご覧いただき
ありがとうございます


*作品は主にXに投稿したものです

*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります


◇関連記事◇


この記事が参加している募集