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認知症になると、世界はこう見えている。

私は常々「認知症の介護を始める前に、認知症になった人から見えている、感じている世界を知ることが大切である」と言ってきた。
それらを自分で書いて本にしてしまっているくらい、たくさんの人に知ってほしい知識だと思っている。

認知症の治療薬は今のところ存在せず(進行を遅らせる薬はある)、高齢化社会では遅かれ早かれ、身内や親しい人が認知症になる可能性は十分にあり、残念ながら避けて通ることは難しい。

介護をする側の視点や、介護の方法などを教えてくれる本は、以前から多数存在していたが、本人の目線から見えている世界を教えてくれる本は、最近になってようやく多く目にするようになってきた(と感じる)。

中でもこの『認知症世界の歩き方』は、難しい言葉を使わず、イラストを使い、とてもわかりやすい表現で教えてくれる。
介護を始める前に読む本としてお勧めだ。

『認知症世界の歩き方』
筧 裕介/樋口直美/認知症未来共創ハブほか


すでに介護を始めている人には、目新しい情報はないかもしれない。
しかし「どうしてこんなことを言うのだろう(するのだろう)」と思っている人には、ぜひとも読んでもらいたい。

認知症とはどういうものか、ということに重きをおいた本なので、対処方法などは載っていない。ただ、認知症の世界を当事者の視点で知っておくと、日々の接し方や対応策がとりやすくなる。認知症の方がとる言動や行動には、全て意味があることを教えてくれる。

それでも、この本を読めばすべての認知症の視点を学べるか、というとそれも違うと思っている。いちばん重要なのは、その方が歩んできた歴史。その人がとる行動の裏には、その人の過去が関係している。その人の人生と、認知症の典型的な症例を照らし合わせて、はじめてその人の言動と行動を理解できるのだと思う。(そしてこれがめちゃくちゃ難しい)

介護を終えた今読んでみると、認知症介護あるあるばかりで、母との懐かしい思い出がいくつも甦る。母の介護を始める前に出会いたかった本。

#読書の秋2022

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