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『掏摸(スリ)』最新作『カード師』で話題!中村文則のおすすめ作品。闇社会に翻弄される男を描いた小説
例えば、誰かの財布を拾ったとき、交番に届ける時間が無かったら、あなたはどうしますか?
今回ご紹介する小説はスリ師のお話でして、冒頭、こんな豆知識が載ってたよ。落し物は、ポストに入れても警察に届くんだって。便利ね。
財布はポストに入れれば、郵便局から警察に行き、免許証の住所に戻る。
ただ、調べてみたら、日本郵政の公式サイトではアナウンスされていませんでした。やむを得ない場合をのぞいて、交番に届けるのが良さそう。
今回は、2021年5月に最新作『カード師』が発売されたばかりの、中村文則さんによる『掏摸(スリ)』をご紹介します。こちらは、スリ師をしている男の話です。
スリ師と闇社会をめぐる物語
主人公は、東京で生きる天才スリ師の男。
物語は、この男が、駅で2人の人間から財布をすり、デパートのトイレで中身のチェックするところから始まります。
財布には、その人間の人格や、生活が出た。携帯電話と同じように、その人間の秘部、人間が身につけるあらゆるものの核として、中央にあった。
なんかね、冒頭からどきどきするの。この文章通り、盗んだ財布から、驚きの秘密が暴かれたりして。まぁ、物語の本筋ではないんだけども。
1人目、初老の裕福そうな男から盗んだ財布には、会員制の売春クラブのカードが出てきたり、2人目のホストの財布からは覚せい剤が出てきたり。
「わたしの財布には何が入っていたかな?」って、どきどきした。
ある組織に目をつけられ、周りの人を巻き込んでいく
お話としては、主人公が、これまでの人生で出会った人間のなかで「最悪」と思っていた男、木崎に再会するところから動き出します。
木崎は闇社会の人間で、むかし、主人公は強盗をさせられたことがあったの。で、木崎のバックには、恐ろしい組織が隠れていて(こう書くと、なんか全然怖くなさそう)、逃げようものなら、命の危険が……!
再会後も、色々な危ない橋を渡らされて――ってお話です。
光が目に入って仕方ないなら、それとは反対へ降りていけばいい
少年の頃、こう思ってスリに手を出した主人公。大人になって、他人に人生を支配される状況になった今、何を思うのか、が描かれた作品です。
200ページ弱の小説なので、サラッと読める1冊。
文庫本には、著者、中村文則さんの解説も掲載されており、より物語を味わえるのでおすすめです。ちょっとダークなお話を読みたい人は、ぜひ。
冒頭で紹介した、最新作『カード師』はこちら。中村さんは、ベストセラーになった『教団X』といい、ほの暗い世界と感情が入り混じった物語が多くて、こちらもその流れが好きな方におすすめ。
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