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『直感・共感・官能のアーティスト思考』:創造性を引き出す新しい思考法
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著者・松永エリック・匡史さんについて
松永エリック・匡史さんは、15歳でプロミュージシャンとしてデビューした後、経営コンサルタントへと転身した異色のキャリアを持つ人物です。現在は青山学院大学地球社会共生学部学部長や事業構想大学院大学の特任教授として活躍し、音楽とビジネスの両分野で培った知見を活かして「アーティスト思考」を提唱しています。その多彩なバックグラウンドから生まれる独自の視点が、本書の魅力をさらに深めています。
本書の核心:「アーティスト思考」とは何か?
本書の中心となる概念は「アーティスト思考」です。松永さんは、これを「アーティストが作品を創り出す主観的で創造的なプロセス」に焦点を当てた思考法と定義しています。従来の「アート思考」が作品そのものやその解釈に注目するのに対し、「アーティスト思考」は創造の過程に重きを置いています。
この思考法は、直感・共感・官能という3つの感性を軸に展開されます:
直感:物事の価値を瞬時に捉える能力。知識や経験に頼らず、新しいアイデアやソリューションを生み出す力。
共感:他者の感情やニーズに寄り添い、それに合致した価値を提供する力。
官能:五感をフル活用して得られる体験。視覚、聴覚、触覚などを通じて、ユーザーとの精神的な結びつきを強化する要素。
これら3つの感性を組み合わせることで、従来のビジネス手法では生み出せない革新的な価値が創造されると著者は述べています。
本書の構成と主要なポイント
本書は4部構成で、各章が具体的な事例や理論を交えながらアーティスト思考の実践方法を解説しています:
第1部:なぜ「アーティスト思考」が必要なのか
ここでは、「アート思考」と「アーティスト思考」の違いが明確化されます。また、現代社会でイノベーションが阻害される原因として、「5つの壁」(固定観念や既存ルールなど)が挙げられ、それらを乗り越えるためにアーティスト思考が有効であることが説明されています。
第2部:過去から学ぶアーティスト思考
歴史的な偉大なアーティストたち(音楽家や画家など)の活動や作品から学ぶべきポイントが紹介されています。特に、「模倣から始まり、独自性へと進化する」というプロセスが重要だと強調されています。
第3部:ジャズとミニマルミュージックに見る革新的思考
この章では、ジャズやミニマルミュージックといった音楽ジャンルがどのように革新を生み出してきたかが掘り下げられています。特にジャズにおける即興演奏は、「暗黙知」を活用した創造性の象徴として取り上げられています。
第4部:未来に向けたアーティスト思考
最後に、これからの時代に必要なマインドセットとして「破壊と創造」「コラボレーション」「自己肯定感」の重要性が説かれています。未来志向でイノベーションを起こすためには、自分自身の感性を信じることが不可欠だと述べられています。
本書の特徴と魅力
1. 実践的な内容
本書は単なる理論書ではありません。具体的な事例やエクササイズが豊富に盛り込まれており、読者は自分自身で「アーティスト思考」を実践できるようになります。例えば、「子ども時代に憧れたものを書き出してみる」「五感を意識して日常生活を見直す」など、シンプルながら効果的な方法が紹介されています。
2. 音楽とビジネスの融合
松永さん自身が音楽家として活動してきた経験を基にしているため、本書には音楽的な比喩や事例が多く登場します。これによって、抽象的になりがちな概念も具体的でわかりやすい形で説明されています。
3. 感性重視の新しいビジネス手法
従来のデザイン思考やロジカルシンキングとは一線を画し、「感性」に重点を置いた手法は、多くの読者に新鮮な気づきを与えるでしょう。特に、「理論だけではなく、自分自身の直感や共感力も大切」というメッセージは、多くの人々に響く内容です。
読者へのメッセージ
本書は、ビジネスパーソンだけでなく、クリエイティブな仕事に携わる人々や、新しい発想法を求めている全ての人におすすめです。「自分には創造性なんてない」と感じている人でも、この本を読むことで、自分自身の中に眠る可能性や感性を再発見できるでしょう。
また、本書は単なる成功術ではなく、「自分らしく生きるためにはどうすればいいか」という問いにも答えてくれる一冊です。現代社会で求められる新しい価値観や働き方について深く考えるきっかけになるでしょう。
まとめ:次世代型イノベーションへの道標
『直感・共感・官能のアーティスト思考』は、新しい時代に必要な発想法とマインドセットを提供してくれる一冊です。2024年4月1日に発売されたこの本は、多様化する現代社会で競争力を持つためには何が必要なのか、その答えを示しています。
松永エリック・匡史さんが提唱する「アーティスト思考」は、単なるビジネス手法ではなく、人間としてどう生きるべきかという根源的な問いにも応えてくれるものです。この本から得られる洞察は、一人ひとりの日常生活にも応用できるものであり、新しい価値観や行動指針として役立つでしょう。
自分自身の直感を信じ、人々との共感を大切にし、五感で感じ取る世界から新たな価値を生み出す。この本は、そのプロセスへの道筋を示してくれる貴重なガイドブックです。「次世代型イノベーション」を目指す全ての人々へ、この本との出会いが新しい可能性への扉となることを願っています。