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中編

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少し長めの怪談です。
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記事一覧

動物にまつわる説話『鹿』

動物にまつわる説話『鹿』

T県U市近郊〜喫茶店マスターの話〜

「個人経営でそこまで広い店ではありませんし、付近にお店自体が少ないのでお客さんとよく話をするんですよ。まあ聞き耳立てるだけの時もあるんですが、その時は常連の方1人だけだったのもあって他愛の無い世間話をしてたんです。町内の誰それさんが、みたいな。平日はいつも6時に店を閉めるんですが……夕方5時ちょっと過ぎてましたかね。
 髭面の男性が1人いらっしゃったんです。ひ

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A家にて【怪談】

A家にて【怪談】

大学構内にある食堂で、友人のAが突然
「うち、幽霊出るっぽいんだよね」
と訳の分からない事を言い出した。
幽霊だか妖怪だか、はたまたUFOだかの類いは全く信じていない私には、冗談の中でもかなりランクの低い冗談だとしか映らなかった。
「ふぅん」
と適当に相槌を打つと、Aは続けて
「それで最近凄く困ってて……全然夜眠れなくて」
などと付け加えた。顔を見れば確かに目の下に大きなくまが出来ているし、全体的

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しんこう住宅

しんこう住宅

私は今部屋の内見に来ている。
この春から気持ち新たに生活を始めようと思い立ち、親しんだ地元を出、遠く離れた所に居を構えようと思ったのだ。

「はー、和室があるんですね」
「そうですね、日当たりも良いですし、ここで瞑想される方も多いそうですよ」
「なるほど。心が整いそうですね」
「ちなみにこの部屋は1階なのもあって、自家菜園される方もいらっしゃいます」
「自家菜園! へぇ、そういう利点もあるんですか

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線路脇の廃屋にて

線路脇の廃屋にて

 ある路線のすぐ脇に一件の廃屋がある。周りにある家々には住人がいるが、そこだけは長いこと誰も住んでおらず、解体される事もなくただ建っている。市や町が解体しようと試みたが、何故かことごとく失敗してしまうと言う。
 そこにはある女性の霊が出るのだそうだ。
 その霊は決まった時間になると二階の窓際に現れ
「ぎゃーーーーーー!!!!!」
 と叫び声を上げて倒れこむ。それから暫くして階段を這って降りて来て、

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神のシュトーレン

神のシュトーレン

※作中に一部差別用語が使用されておりますが、そういった意図は一切ありません。
世界より差別と貧困、虐めや戦争が無くなる事を祈って
※また、クリスマスを楽しんでしまった為、第七夜(最終話)は明日更新します🎄
皆さんメリークリスマス🎄🎅✨🎁🦌

第一夜【始まり】

 その男はかくも不憫なる人生を送っていた。
 学友恩師共に恵まれず、高校を出る事も叶わなかった。些細な食い違い嫉妬意味の無い苛め

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その息遣いを私は覚えている【後編】

その息遣いを私は覚えている【後編】

「何してんの!!!」
 言葉を聞き終わる前に襟が私の首をキュッと締め、更に後方へと引っ張る力によって体が持ち上がり、勢いそのまま今し方すり抜けて来た柵にぶつかった。
 私の行動を口汚く罵りながら消えていく車と、それに対して似たような罵声を浴びせる人影が、痛みに耐える私の面前にあった。
「ちょっと大丈夫!? あいつ全然前見てなかったしさ、ほんとじじぃはクソばっかだよ、まじで。次会ったらバンパー凹ませ

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その息遣いを私は覚えている【中編】

その息遣いを私は覚えている【中編】

 まともに見れた物では無かった。
 いや、例えまともだったとしても多種多様な花に彩られ、毎日欠かさず見ていた寝顔と何ら変わらない穏やかな顔をしているリクを、どうして私が面と向かって虹の橋へと送り出す事が出来るだろうか。
 どうにか直してくれたのだと言う。今見えている顔の反対は、飛ばされてコンクリートの上を滑ったせいでとても見られたものではなかった。
 様々な手続きが終わり、家に戻ってお気に入りの玩

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その息遣いを私は覚えている【前編】

その息遣いを私は覚えている【前編】

ハッハッハッハッ…

 枕元で聞こえる荒い息遣いが私の眠りを妨げる。
 頭だけ動かして見ようとしても、そこには暗闇が広がるだけで何もいない。
 1度母と一緒に寝て貰った事があったが、母には何も見えていないし聞こえてもいないようだった。無論、私にも姿は見えてはいない。幻聴だと思い込もうとしても、余りにはっきりとしたその音が私の心を大きく揺さぶり、震わせる。
 聞こえなくなる様にと布団を頭から被ると、

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組織液状化症【不思議な話】

組織液状化症【不思議な話】

人の約70パーセントは水分で出来ている。
その割合が徐々に増加する「組織液状化症」、通称SLS(sells liquefaction syndrome)という病気が見つかった。人のみならずその他動物にも感染し治療が著しく困難であり、感染力自体もそれなりだった。
一度感染すると水分量の多い部位から体組織が更に液状化していき、軟骨等の比較的硬い部位に移り、最終的に頭蓋骨等の内骨格、或いは甲羅等の外骨格

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彷徨える夕暮れ【怪談】

彷徨える夕暮れ【怪談】

「良い子にしないと夕暮れがやって来るよ。夕暮れはお前の影を飲み込んで、終いにはお前も飲み込んで、綺麗さっぱり消し去っちまうんだ。そうなるともう誰にも会えない、誰にもだよ。ママにもパパにもばあばにも会えないんだ。だから良い子にしてなきゃいけないよ」
というのが、幼き私を叱る時の祖母の決まり文句でした。何で怒られてしまったのかははっきりと思い出せませんが、初めて聞かされたのが確か年長組だったので言って

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闇と山の怪【怪談】

闇と山の怪【怪談】

「・・・・・・・・・・・・ここどこだ」
これもさっき通った岩に見える。その木も草も、石の割れ目さえも同じに見える。崖を登っては降り、森を抜けてもまた似たような景色に戻ってくる。それ程高い山ではないはずなのに、民家一つ、鉄塔一つ見当たらない。太陽はすっかり尾根に隠れてしまい、影や物の輪郭は溶けて混じり、自分の足元を照らす懐中電灯のみが確かだった。

六合を越えて山道に突き出た針葉樹を潜り抜けた拍子に

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或る部屋

或る部屋

これは数年前、知人のKから聞いた話である。

Kの実家は京都の中央区にある二条駅から歩いて10分程度行った所にあるらしく、軽く築100年は越えているそうだ。昔ならではの瓦屋根に木で出来た門戸、色褪せた塗り漆喰の壁が古き良き時代を感じさせる。

 そんなKの実家の2階には、半ば開かずの間と化した8畳程の部屋があると言う。そこには掛け軸があり、どの角度から見ても描かれている女と目が合ったり、誰もいない

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振り向くな【ホラー】

振り向くな【ホラー】

仕事が終わり、いつも通りに電車に乗ろうとしてエスカレーターの列に並んでいた時の事です。

今日の夕飯はどうするかなとネットで調べながら、そういえば冷蔵庫に何があったか思い出そうと、何気なく携帯から目を離して顔をあげました。
「……ん?」
気の所為かもしれませんが目の前の女性と目があった様な気がしたのです。後ろに並んだ人が気になってつい後ろを向いてしまう事もあるでしょう。もしくは歩いて降りる人もいま

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巷で噂のエスカレーター【怪談】

巷で噂のエスカレーター【怪談】

12、エスカレーター

近所に幽霊が出ると噂のエスカレーターが存在する。そのエスカレーターはJRの駅に直結する比較的新しい物で、幽霊が出そうには微塵も見えない。しかしながら、噂は近隣に住む子供から大人まで知っているし、実際に出くわしたと言う人が後を絶たない。
その噂の内容は多少の差異はあれど、大まかにはこうだ。
「雨の降る日に、時間の遅い電車を利用しようとすると霊が現れ、あの世に引きずり込まれる」

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