永平寺東京別院にて(後編):「悦び」という字が教えてくれた、本当の喜びのかたち
はじめに
みなさん、こんにちは。
昨日は、東京にある「大本山永平寺東京別院長谷寺」での法脈会についてお話しさせていただきました。
今日は、その3日間で感じた「喜び」について、少し掘り下げてお話ししたいと思います。
「喜び」を表す漢字たち
「喜び」って、漢字一つとっても奥が深いんです。
たとえば、皆さんが最初に思い浮かべる漢字は何でしょうか?
おそらく多くの方が、喜怒哀楽の「喜」を思い浮かべることでしょう。
でも実は、「喜び」を表す漢字は他にもたくさんあるんです。
たとえば、俳優の豊川悦司さんの名前にある「悦」という字。
この漢字も、「喜び」を表します。また、慶弔の「慶」という字も同様です。
特に私が今日お話ししたい「悦」という字には、とても深い意味が込められています。
それは「自分の中から自然と湧き上がってくる感情」や「心のしこりやわだかまりが取れた時の安らぎの感覚」を表すんです。
つまり、普通の「喜」が外からの刺激で生まれる喜びを表すのに対して、「悦」は自分の内側から生まれてくる喜びを指すんですよね。
法脈会という特別な3日間
さて、今回の法脈会には20名から30名ほどの参加者がいらっしゃいました。30代の若い方から80代の方まで、本当に幅広い年齢層の方々が集まってくださいました。
私たち係は朝4時30分に起床し、夜8時頃まで参加者のサポートを行います。具体的にどんなことをするかというと...
朝一番の点呼取り
お部屋の忘れ物チェック
お手洗いへの案内
食事のお手伝い
お風呂の準備
就寝の準備
など、本当に様々です。
正直なところ、3日間休む暇もないような状態で、体力的にはかなりハードでした。
でも、不思議と疲れを感じる暇もないくらい、充実した時間が流れていきました。
おばあさまとの心温まる出会い
その中で、特に印象に残っている方がいらっしゃいます。
80歳、もしかしたら90歳近いおばあさまです。
実はこの方、あるお寺の住職の奥様だったんです。
おばあさまは私に、ポツリポツリとお話ししてくださいました。
「このイベントのことは、ずっと前から知っていたのよ。でも、なかなか参加する機会がなくて...」
「コロナが明けて、自分の年齢を考えたら、これを逃したら次はないかもしれないって思って。思い切って参加することにしたの」
「生かされている」ことの気づき
おばあさまは膝が悪く、階段の上り下りが大変そうでした。
私たちは手を取ってサポートし、忘れ物がないよう何度も確認し、たくさんのお話に耳を傾けました。
そんなある時、おばあさまがしみじみとおっしゃいました。
「本当に、いろんな人の支えがあって私は生きているんだなぁ」
「仏教では『諸行無常、諸法無我』って教えがあるでしょう?私たちは本当に、たくさんの御縁の中で生かされているんだってことを、今回身をもって感じたわ」
その言葉を聞いた時、私の中でも何かが響きました。
普段何気なく過ごしている日常の中で、私たちは本当にたくさんの方々に支えられているんですよね。
内から湧き出る喜びの大切さ
最後の日、おばあさまは「残り少ない人生の思い出に」と、私たちと一緒に写真を撮ってくださいました。
「帰ったら住職に報告するのが楽しみ」と、本当に嬉しそうにおっしゃっていました。
人生には、たとえば新しい車を買った時のようなわかりやすい喜びもあれば、家族のために何かをしてあげられた時のような、そっと心の中でじんわりと感じる喜びもあります。
また、たとえば...
長年叶えられなかった夢が、やっと実現した時
誰かの役に立てた時
頑張っていた誰かが、成長する姿を見た時
心配していた相手から「ありがとう」と言われた時
そんな風に、形には見えないけれど、確かに心の中で感じる喜びがありますよね。
おわりに
この3日間で私は、「悦び」という漢字の持つ深い意味を、改めて実感することができました。
物質的な豊かさも大切ですが、時には立ち止まって、自分の中から湧き出てくる喜びに気づく時間を作ってみるのも良いかもしれません。
そんな心からの喜びに出会える瞬間を大切にし、そういった経験がたくさん生まれるような生き方を、皆さんも心がけていただければ嬉しく思います。