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発言する時に大事なのは、量ではなくタイミング(『荀子』非十二子篇)

今回取り上げるのは『荀子』非十二子篇からの言葉。

言いて当たるは知なり、黙して当たるも亦た知なり
(読み:イいてアたるはチなり、モクしてアたるもマたチなり)

『荀子』非十二子篇

発言してそれが道理に当たるのが知恵であり、沈黙してそれが道理に当たるのもまた知恵である、という意味。

つまり、口に出すべきときには発言し、黙るべきときには黙るというのが深い知恵のあり方である、ということですね。


仕事や日常生活においては、何かしら発言しなければならない場面が多く訪れます。

特に仕事では、会社の方針で「発言しない人は会議に出るな」と言われることもあるでしょう。

「船頭多くして船山に上る」とも言うように、物事を決めるときの人数はできるだけ少ない方がスムーズです。

これは会議でも同じで、人数が多い会議よりも、参加者が絞られている会議の方が、行われる会議の質は圧倒的に高くなります。

参加者それぞれの発言の機会も増えますし、全体で認識合わせをする際の人数も少なくてすむからです。

参加しない側にとっても、不要な会議に時間を取られなくて良いのはメリットだと思います。

会議は割と1~2時間くらい時間を取られるので、自分にあまり関係ない話を黙って聞いているよりは、自分のメインタスクに集中した方が生産性も上がりますよね。

Amazonが今のような巨大企業になった理由の一つに、「2枚のピザルール(Two Pizza Rule)」というものがあります。

Amazonの元CEOジェフ・ベゾスが提唱・実施したもので、会議の上限人数をピザ2枚を囲む人数までとするルールです。

ピザ2枚なので、上限はおよそ8人くらいですね。

たしかに、私も10人前後の会議よりも4~5人程度の会議の方が話がしやすく、会議も円滑に進むように感じています。

こういった事例を踏まえた結果、会社側としても会議の参加人数を少なくして生産性を向上させようと思うのは必然。

「発言しない人は会議に出るな」という方針になるのも道理でしょう。

ただ、個人的な感覚としては、こういった指示が出ると「何か発言しなくちゃ…」とプレッシャーを感じてしまうのです…。

私はもともと会議で発言するのが苦手なので、会議に臨む際には事前に話すことをまとめるようにしています。

会議が私の想定通りに進む分には問題ないのですが、予想していなかった質問や話の流れになってしまうと、なかなか会話に入り込むことができません。

そこで焦って頓珍漢な発言をしてしまい、失敗したこともあります。

自分の中で「発言すること」への意識が大きすぎたんですね。

昔、就活の時に何度も体験したグループワーク(特定のテーマに沿って初対面の就活生同士で議論するもの)が苦い思い出となっていることもあり、「会議では絶対に発言しなくてはならない」と思い込んでいたのです。

そこに、会社から「発言しない人は会議に出るな」という全体への指示が出たため、余計に焦ってしまったのでしょう。

ですが、『荀子』の言葉と出会ったことで、発言することだけがすべてではないのだと思えるようになりました。

大事なのは、今が発言すべき時かどうかを見極めること。

会議で発言することは大事なことですが、なんでもかんでも口を出せば良いというものではありません。

話の流れや内容によっては自分が口を挟む必要はありませんし、場合によってはあえて話さないという選択も必要でしょう。

荀子も次のように言っています。

黙するを知るはなお言うを知るがごときなり
(読み:モクするをシるはなおイうをシるがごときなり)

『荀子』非十二子篇

沈黙することの意義を知ることは、発言することの意義を知ることである、という意味。

発言と沈黙は表裏一体。

車の車輪のようなもので、どちらかが欠けてもうまくいかないのです。

発言すること自体にとらわれるのではなく、どのように発言するのか、ということを考えていきたいですね。

言いて当たるは知なり、黙して当たるも亦た知なり
(読み:イいてアたるはチなり、モクしてアたるもマたチなり)

『荀子』非十二子篇

口に出すべきときには発言し、黙るべきときには黙るというのが深い知恵のあり方である、という言葉をご紹介しました。

会議での発言が苦手でも、あまり深刻に考えなくて大丈夫です。

大事なのは発言すべき時に発言すること。

私は一時期、会議で多弁な人と自分を比較して劣等感を感じていましたが、今ではそれほど気にしなくなりました。

多弁じゃなくても、寡黙であっても、構いません。

まずは大事な場面で発言できるように、少しずつ練習していきましょう。


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凪平コウ@古典・歴史愛好家
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