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お箏の演奏会は楽しい! お箏の演奏会に行くといろんな曲、いろんな情景に出会うことが出来ます。 どんな物を聴いて、何を感じたのか。素人が聴きに行った演奏会の感想を、綴ります。
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「鈴木麻衣 箏リサイタル」

「鈴木麻衣 箏リサイタル」

鈴木さんの演奏は、何より音が、美しい。
一音一音、すべての音がキラキラ輝く光の粒のように、会場を満たしてくれます。
プログラムは、箏(十三絃箏)で、古典曲と現代曲。二十五絃箏で、新作を含めた2曲。
4曲すべてがソロ演奏で、その美しい音を、存分に味わうことができました。
 
演奏はもちろん、設営も照明も、随所に鈴木さんの細やかな心配りが感じられました。
古典曲にしても現代曲にしても、その曲調は今、巷

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「笹原絵美・佐原詩音 作曲二人展」

「笹原絵美・佐原詩音 作曲二人展」

同門の先輩後輩でいらっしゃる、現代作曲家の佐原詩音さんと笹原絵美さん。
「ささはら、さはら、って似てるね」と、今回の二人展が動き出したそうです。
どちらの作品も過去に聞いたことがあります。
そんなお二人が「箏」を軸に新作発表とのことで楽しみに伺いました。
 
プログラムは、前半が佐原さん、後半が笹原さんの曲です。
勇ましい「戦太鼓」で幕を開け、途中、既存の曲を挟み、秦の始皇帝の中華統一をモチーフに

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日原 藤花維柯 箏曲 古典の会Ⅱ

日原 藤花維柯 箏曲 古典の会Ⅱ

今をときめく演奏家であられる日原藤花維柯さんの古典の会。
前回2022年10月に開催され、今回は第二回になります。
今回は会場が銕仙会能楽研修所とのことで、とても楽しみに伺いました。
 
お箏(三味線も尺八も)は、特に古典の曲の場合は、能楽堂や木造の古民家で聴くのと、PAの入ったホールで聴くのとでは、全然表情が変わります。
マイクで拾いきれない、たくさんの音がなっています。
いや、音ではなく、もは

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「The Modern Vol.3」

「The Modern Vol.3」

久松彩子さんと吉川由里子の現代曲を取り上げたデュオです。
久松さんは久松雅紗恵さん、吉川さんは吉川雅楽巴里さん。
お二人の演奏は、2022年8月に国立能楽堂で開催された「第二回 奥田雅楽之一 演奏会」
の「清経」(合奏)で拝聴しています。
今回はお二人での演奏とのこと、また現代曲とのことで、とても楽しみに伺いました。
 
1曲目「絃の春秋」(いとのしゅんじゅう)は箏の一音から始まります。
その一音

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「亀山香能 箏曲コンサートⅤ ―語り伝えて―」

「亀山香能 箏曲コンサートⅤ ―語り伝えて―」

山田流箏曲家の亀山香能さんのコンサート。
2019年から始まった「箏曲コンサート」の5回目になります。
 
ご承知の通り、お箏にはざっくり分類すると、生田流と山田流という2つの流派があります。
山田流は、「山田検校が、河東節や謡曲を参考に、物語のような内容を持った新しい箏曲として江戸で創始した流派」(文化デジタルライブラリーより)ということで、軽やかな箏の音にボリュームのある歌が特徴といえます。

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「ラガヴーリン62 第10回記念公演 箏・三絃・胡弓コンサート」

「ラガヴーリン62 第10回記念公演 箏・三絃・胡弓コンサート」

東京藝術大学邦楽科生田流箏曲同期生の会の演奏会です。
62とは、大学を卒業された年とのこと。
それから30ウン年?
それぞれが演奏活動を続けられてきて、このコンサートで一同に会します。
 
大学に入るまでのバックグラウンドも、卒業してからの環境も音楽性も様々。
ある意味、メンバーの共通点は、あの時あそこに一緒にいた、というだけと言っても過言ではないと思います。
そんな方々が、30年以上もそれぞれの

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「東京雅びの会 箏演奏会 Vol.11」

「東京雅びの会 箏演奏会 Vol.11」

1994年に新しい邦楽システムを作ろう、と旗揚げされた「雅びの会」。
その東京支部の演奏会です。
 
入り口でチケットを提示すると、モギリの方が「どうぞ楽しんでいってください」と声をかけてくださいました。
そのお言葉通り、たっぷり楽しませていただきました。
 
全14曲。
自身も箏を演奏する作曲家達の、弾いて楽しい、聴いて楽しい曲が次から次へと現れます。
演奏者は、プロアマ問わず、箏の流派も問わず

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「和と洋の響演 上下天光 其の参」

「和と洋の響演 上下天光 其の参」

バリトン・ピアノ・篠笛・箏という不思議な4人組。
音楽の玉手箱を開けたかのように、きらめく曲が次から次へと現れて、目を離す、もとい、耳を離す隙もありません。
実は超絶技巧満載らしいのですが、それを全く感じさせず、さらりと演奏されている4人をみていて、以前パーカッショニストの會田瑞樹さんがおっしゃっていた言葉を思い出しました。
「音楽の下僕たれ」
まさに、音楽の下僕たる4人組です。
 
前半は、二人

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「木村麻耶 箏リサイタル ~音楽でシエスタ~」

「木村麻耶 箏リサイタル ~音楽でシエスタ~」

西国分寺で古民家を再生した建物で1983年からクラシックのハウスコンサートを開催されている「りとるぷれいミュージック」さま。
今回登場されたのが木村麻耶さんです。

いつも思うのは、お箏はどこで演奏されるかによって、音が大きく変わるということ。
桐の木でできたお箏は、木造の建物の中で演奏されると、本当に柔らかい「お箏らしい」音になるとしみじみ感じます。
ホールで聴くことが多いですが、そんな建物での

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「第三回川瀬露秋の会 ~懐い継なぐ~」

「第三回川瀬露秋の会 ~懐い継なぐ~」

紀尾井ホール小ホール。
生田流箏曲白秋会を率いるお家元の会。
江戸時代の曲を、箏・三味線・胡弓で演奏。

と聞くと、
堅苦しそう、かしこまって聞かなくてはならなくて、そして眠そう。
そんなイメージを持たれるかもしれません。
しかし、そのイメージが覆る「演奏会」ではなく「ライブ」でした。
 
幕開けは2面の長磯箏で「みだれ/京みだれ」
長磯箏は、豪華な装飾がなされたお箏です。
蒔絵や螺鈿、鼈甲で彩ら

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「箏と写ー生々流転」

「箏と写ー生々流転」

千葉県誕生150周年記念いちかわ芸術祭のイベントの一つとして、開催されたコンサートです。
市川市にある千葉商科大学の学生制作映像によるコラボレーション・コンサートとのことで、中山法華経寺本院大客殿にて開催されました。
 
会場は、お寺の大広間。
バックの襖には、河瀬 蛙友氏による水墨画「敦煌莫高窟・三危山」が描かれています。

演奏された5曲のうち3曲は、そのふすま絵に、曲に合わせて制作された映像

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「音のカタログVol.11」

「音のカタログVol.11」

邦楽器を使った曲を作る、西洋音楽の作曲家さん達のグループ、〈邦楽2010〉によるコンサートです。
前回は2021年10月に第10回が開催され、お邪魔しました。
いろんな曲が次から次へと登場し、とても楽しかったことを思い出し、今回も足を運びました。
 
作曲家の方は、普段は、ご注文があって初めて、曲を作るのでしょうか。
依頼者の意向や、制約の中で作曲されることが多いのかなあと思います。
 
この「音

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「野坂惠璃二十五絃箏リサイタル ~繋~」

「野坂惠璃二十五絃箏リサイタル ~繋~」

二十五絃箏を作られた野坂操寿さんの娘さんでいらっしゃる、惠璃さんのリサイタルです。
とても、とても、素敵でした。
 
「赤とんぼ」
右手の爪音からトンボが飛び回り、左手からは茜色から藍色に移り変わる空と秋の空気が立ち上ります。
「雪は降る」
音が鳴っているのに、雪に吸い込まれた無音の世界が広がります。
辺り一面、真っ白で、何も見えず、何も聞こえない世界。
音が鳴っているのに。
「胡哦」
美しい美し

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「明日佳ソロ琴ライブ「明日、佳人になれ #2」」

「明日佳ソロ琴ライブ「明日、佳人になれ #2」」

明日佳さんの、待望のソロ琴ライブ。
とても良かった!面白かった!楽しかった!
美しい和室で、PAもエフェクターも無し。
目の前で演奏される箏音をダイレクトに浴びるという、とても贅沢な時間でした。
明日佳さんのまっすぐな演奏は、とても清々しくて、心が洗われるようでした。
 
ポイントは3つ
1.箏の生音
2.アナログ
3.お客様
 
プログラムは、
前半は明日佳さんオリジナル曲で「世界を駆ける、お琴

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