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好きなnoteたち

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#短編小説

私からのサイン、一瞬だから見逃さないで

私からのサイン、一瞬だから見逃さないで

また一つ恋を始めてしまった。私は何かを始めるのが上手で、終わらせるのが下手だってことを自分が一番知ってる。恋は落ちるもの、かもしれないけど私は敢えて落ちに行ってる感が否めないしなんなら穴を掘っているのは自分かもしれない。月が満ちて欠ける一連の流れにはなんの狂いもないように私が何もしなければ何も始まらなかったのに、分かってて行動に移してしまう愚かな私だった。それでも君のことをもっと知りたいと思ってし

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おっちゃんの場所

おっちゃんの場所

おっちゃんへ

おっちゃん、おっちゃんの場所ちゃんと取ったるで。ママさんに一番近いスナックの一番奥の席。

この席には、誰も座らさへんで、おっちゃんの席や。

おっちゃん、おっちゃんは、ネジ作ってたんやろ。自慢のネタやったもんな。いっつもネジの話してた。

学校出てからすぐ町工場で働いて、毎日、油まみれになって働いた話、よう聞かせてもろたわ。ぼくの腕つかまえて手のひら開かせて、きれいな手しとるやな

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短冊に願いを

短冊に願いを

小さな笹の枝と短冊を持って、君が僕の部屋にやってきた。

僕たちが一緒に過ごす、はじめての七夕の日。

7月7日。

君はピンクと青のペンを僕の机の引き出しから出しながら、僕に尋ねる。

「なに書く?」

興味深げに僕に聞く君。

「なに書こうか?」

少し考える僕。

僕をじっと見つめる君。

「世界平和かな」って僕がつぶやいてみたら、君はちょっと不満げな顔をした。

きっと君は君の短冊に、

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恋愛小説家

恋愛小説家

朝、カーテンの閉まった部屋で私はただ指を動かしつづけ、コンピュータに文字を打ち込んでいる。

あなたのあまい囁きが心に響きわたる。私を「あいしてる」と言うあなたの唇の動きを見つめながら、私も同じように唇を動かして「あいしてる」と囁き返した。ベッドで抱き合う私たち二人を朝の優しい陽射しが包んだ。

私は泣きながらこの情景を言葉に落とし込む。

穏やかで緩やかで愛あふれる文章を生み出す。

でも私

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