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米栗カレンダ

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米栗久三郎による、1日1絵の、日めくりエッセイ。 3歳の「彼」の今日を綴ります。 こどものありようって、哲学だなあ…と思うのです。
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#毎日note

【米栗カレンダ 20200907】逃げるとか、逃げないとか。

こんなおかおのひとがいた! (おやつを食べながら、テレビのニュースを流し見していた彼。 と、ふいにはっとして立ち上がり、パッとテーブルによじ登った。 「こら、テーブルに乗っちゃだめだよ。」とオヤが言うのを無視して、 「こんなお顔のひとがいたのよ!」とテレビ画面を指差して言う。 そこには、某国の主席が映し出されていた。 「公園にいたのよ!」と3歳の彼は重ねて言った。 ああ、そう言えば今日行った公園に、幼稚園帰りの年上の子どもたちが来ていて、その中にこの主席によく似

【米栗カレンダ 20200905】おなら=おもいやり

きいてね、いいおとするからね〜 (すっくと立った彼は、オヤにお尻を向けると、 「聞いてね、いい音するからね〜」 と言うなり、プッとおならをし、ぱっと振り返ってにやっと笑った。 どこで覚えたんだか、おならを笑いにすり替えるなんて、なんとも幼稚園児らしい発想だ。くれ●んし●ちゃんみたいだ、まったく。 彼はオヤが疲れた顔をしていたり、考え事をしてぼうっとしていると、すかさず「これを見て!おもしろいからね」を体現してくれる。 こどもって、思いやりの塊だ)

【米栗カレンダ 20200904】気持ちを上向きにする、たった一つの冴えたやり方

なにか、おもしろいことない? (毎日は、大きな波風無く過ぎていく。 風邪をひいたり、喧嘩をしたり、好きだった遊びに飽きたり、仲よしだと思っていた子とそんなでもなくなったりしながら。 彼「『何か面白いことない?』って言って。」 オヤ「何か面白いこと無いかな?」 彼「あるよ!」 そう言って、彼の大好きなミニカーのカードを持ってきたり、ダンスを見せてくれたりする。でも逆に、 彼「何か面白いことある?」 と尋ねられた時に、面白いことをオヤが提案できないと、彼は悲しそう

【米栗カレンダ 20200903】元には戻らないのだ。

きのうは、ちょっと、ないちゃったのよ。 (彼が大事にしている、おもちゃの郵便飛行機がある。 そのプロペラ部分が、いつのまにか折れて失くなっていた。 プロペラが壊れてる!そのことに気づいた彼は、おんおん泣いた。 オヤは急いで、失われたプロペラ部分に竹串を切って、ボンドで貼り付けた。 「これで、色を付ければプロペラになるよ。」 と言ってなだめたけれど、彼はしばらく泣いていた。 次の朝が来て、ボンドが乾いているプロペラをチェックした彼は、つぶやくように言った。 「昨

【米栗カレンダ 20200902】踊りなさい、誰も見ていないかのように。

(暑さと土砂降りの日だった。 彼と砂場にいたら、灰色の雲が流れてきて、ぽつぽつからあっという間に激しい雨になった。 彼はと言えば、雨もものともせずに砂遊びを続行。 しかしお風呂でシャワーを浴びているかのごとき豪雨が来て、やっと立ち上がった。そして「シャワー!」と大喜びで踊りだした。 『踊りなさい、誰も見ていないかのように』(A・D・スーザ)を地で行くようなはしゃぎっぷりだった。 家に入ってくれたのは、雷がゴロゴロ聞こえだしてから。 はしゃいだおかげで、この夜は早寝

【米栗カレンダ 20200901】(絶対)面白いから!

うごくから、みててね〜 (パンを片手に、椅子の上にすっくと立ち上がった彼。 そして、もう片方の手で、シャツをめくっておなかを丸出しにした。 「動くから、見ててね〜」と言うなり、パンをもぐもぐ食べてみせる。 するとお腹が動く。 「動いてるでしょ?!面白い?」と自慢げに言う彼。 つい先日、図鑑で人体の構造のページを見ながら、食べたものがお腹で消化される…ことを知ったから動きを確認したくなったのだろう。 3歳の彼の脳内では、食べたらすべり台のようにパンがお腹の中を滑り

【米栗カレンダ 20200831】寂しすぎる、こっち見て!

ぎゅっとするおとなになって! (彼は最近、眉根を八の字にして「寂しいお顔」の演技をする。 その顔になっている彼を見つけたら、オヤは、 「ああ、寂しい子がいる!こっちにおいで、ぎゅっとしてあげる。」と言うのがお約束だ。そう言うと、彼は寂しいお顔のまま駆けてくるので、それをギュッと抱きしめてやる…(何の芝居なんだろう?) が、先日、オヤは洗濯物をたたくのに気を取られて、寂しい子の演技にきづかなかった。 すると彼は、きっぱりと、 「寂しすぎる!こっち見て!ぎゅっとする大

【米栗カレンダ 20200830】期間限定独裁者

(夜の9時半。やっと寝たかな?と思った3歳の彼がガバっと起き上がり、 「のどが渇いたの」 と言う。 パパが麦茶をコップにいれて持ってきたら、 「ママが淹れて来るのよ!」とコップを突き返してくるので、「せっかくパパが淹れてくれたのにそれは酷い!」とママが怒ると、彼は号泣して抵抗。最近、この「ママが」が多い。 着替えを手伝うのも「ママが!パパやだ」 シリアルに牛乳を注ぐのも「ママが!」 熱いごはんをフウフウして冷ますのも「ママ!パパはフウフウしないで!」 と、仕事

【米栗カレンダ 20200829】シュールなループ

スピード、出しすぎちゃって! (3歳の彼をチャイルドシートに乗せて高速道路を走った。 彼は大好きなトミカのミニカー『クラウンのパトカー』を握りしめながら窓外をゆく「タイヤ3つのトラック!」「ジープ!」「交通パトロールカー!」「タンクローリー!」と車両の走りを楽しんでいた。 途中、SAに車を止めたら、パトカーが入ってきた。 「本物のパトカーだ!」と目を丸くした彼。さっそくパパと手をつないで、リアルパトカーにダッシュした。 パトカーは、SAで接触事故を起こしたらしい2台

【米栗カレンダ 20200827】タマシイの個性

これたべてみて。すごうく、おいしいから。 (パパがカレーを作った。 それをひとくち食べて「おいしい。」と目を丸くした彼。 「よかった。」とパパは言う。 すると彼は、スプーンでカレーをすくうと、さっとママに差し出して、 「食べてみて。すごうく、おいしいから。」 いやいや、ママのお皿にも同じカレーがあるよ……と思いつつ、ありがたくそのスプーンのカレーを食べる。「おいしいね!」 その言葉に満足気に頷いた彼は、また一匙すくって、今度はパパに。 「食べてみて。」 いや

【米栗カレンダ 20200826】壊したつもりで壊せてない。

アメリカの大統領の夫人が、歴代大統領婦人の植えた薔薇やチューリップを根こそぎ引き抜いてしまったらしい。 そして自分の気に入った庭に作り変えたらしいけど、 歴史を壊して自分らしい場所を作るというこの行為……何かに似ている。 そう、砂漠の国の過激派がバーミヤンの仏像を破壊したり、遺跡を爆破したのとそっくりだ。 破壊は快感を伴うから、キモチイイんだろう。 でも歴史的存在を消しても、歴史を消すことなんてできないから、時間が経てば無常感に苛まれるんだろうなぁ…… だって歴史

【米栗カレンダ 20200825】オヤは関係ない

「こういうすべりかた、してみただけ!」 (ソファに駆け上がろうとして、床に置いてあった(自分で投げ捨てた)タオルに足を取られ、盛大に滑って転んだ彼。 泣くか…と思いきや泣かず、キリッとオヤを振り返るなり、 「こういう滑り方をしてみただけ!」 と、言い放った3歳児。 滑ってもわざと滑ったのだと主張する意地っ張り。(転んじゃった、テヘっ)と可愛い笑いに転がさない、ストレートな表現を選ばないところに遺伝子を感じる。 『親譲りの無鉄砲で…』というのは、夏目漱石の【坊っちゃ

【米栗カレンダ 20200824】共感されない

なに、とってるの? (シャベルですくい上げた砂を、ワゴンにザザっと入れる。 砂場で、彼はそれを何度も繰り返した。 他に誰もいないからいいものの、かなりの砂埃がたちこめる。 汗をかいているから肌に砂が張りつくし、 ゴホゴホと咳き込むことにもなる。 が、いいこともあった。 微細な砂ホコリのおかげで、虹がたったのだ。 急いで写真に撮っていたら、彼が「何、撮ってるの?」とお尋ねになる。 「虹だよ。」と写真を見せたら、 「ふうん。」と興味なさげに、また土木作業に戻っ

【米栗カレンダ 20200823】苦味がある

びーるはままのなの。 (母はビールを飲みたかった。 3歳児は父(下戸)とスーパーへ買い物に行き、餃子の皮とビールを買った。 レジの店員さんに教えてあげた。 「ビールはママのなの。」 店員さんは、子ども嫌いなのか、ただ疲れていたのか、何の反応もせずに子どもの発言を無視して料金を告げ、お金を受け取り、買い物は終了した。 (こんなひともいるんだな。) と3歳児なりに理解したらしい。 子どもにニコニコしてくれる人もいれば、できるだけ関わりたくない人もいる…小さな声に聞