聖なる土曜日の過ごし方
1週間のうち、一番気分が上がるのは何曜日か。
この論争は時代が令和になっても、未だ盛り上がりを見せている。
果たして金曜日?それとも土曜日?
わたしは現在、曜日感覚が失われてもおかしくない職に就いているので、気分が上がる曜日など、そもそもない。シフト制ですからね。
前職も、学校の先生をやっていたうえ、月曜日から土曜日までもれなく授業があったので、休日は日曜日だけ。なんなら貴重な日曜日すら部活動で失われることもしばしば。
そうなると、必然的に気分が上がるのは、土曜日の夜のみということになる。そこから布団に入って入眠し、日曜の朝を迎えようもんなら「ああ、わたしのなけなしの休日が、24時間を切った……」と絶望である。
朝を迎えられればまだいい方で、起きたら「昼!」なんてざらである。そうなるともう絶望どころの騒ぎではない。
そこで、わたしは土曜の夜を延長する作戦に出るのだ。
つまり、寝ない。寝たら土曜日が終わるのである。(浅はか)
ほとんどの社会人の方は、土日休みなのだと思う。
この物語に登場する人たちも、土日休みだ。
朝日新聞夕刊に連載されていたものを全面改稿したもので、作家10年目にして3年ぶりの長編小説なのだそう。
この物語は、一貫して「いかに充実した土曜日を過ごすか」を極めようとする登場人物たちばかりである。そもそも、主人公の小和田くんがほぼほぼ作中寝てる。主人公なのに。そして、如何に土曜日を怠けて過ごすかに人生をかけているのである。
さらにそこに花を添えるのは、謎の正義のヒーロー、ぽんぽこ仮面である。
狸のお面をかぶりマントを翻すその様は、当初不審者と間違えられ警察に追われるなど。
ぽんぽこ仮面は小和田くんに、2代目を継がせたい。
小和田くんは怠けたい。
アルパカに似た人はぽんぽこ仮面の正体を突き止めたい。
様々な登場人物たちが、己の求める土曜日を追い求め、わちゃわちゃぐちゃぐちゃと京都の街を文字通り走り回る様子は、あまりにも滑稽である。
自分の土曜日を振り返ったとき、「怠ける」に全振りする日もあれば、「可能な限り行動する」に全振りする日もある。
まさにわたしは気分次第で「小和田くん」にこそなれるし、「ぽんぽこ仮面」にこそなれる。日によって二人の登場人物になれるというのは、ちょっとだけ得した気分になれる気がする。
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