#15 安心できる居場所
息子は、別室登校をはじめるようになると、家に真っ直ぐ帰ってくることがなくなりました。
「家に帰りたくない。あの家はぼくの家じゃないから。」
父親は単身赴任中で平日は家にいないけど、父親の影を常に感じる家。
息子は、不登校の底の頃に父親に「出て行け!この家はもうおまえの家じゃない!」と一方的に怒られた事にとても傷付いていました。
その嫌な記憶が家具や壁に染み付いていたみたいです。
息子は、家に直接帰らずに、私の実家に帰宅するようになりました。
実家には、息子の弟分である大好きな猫たちがいて、息子にすごく懐いてて、いつもピッタリくっついて寄り添ってくれたし、両親も息子を歓迎してくれました。
心が安まる場所、安心安全でポカポカに温かく・フワフワ柔らかい息子の大切な居場所でした。
両親は、息子にいろんなお仕事をお願いしたり、息子をすごく頼りにしてくれて、息子からたくさん笑顔を引き出してくれました。
息子がどうやっても自宅に戻るのを嫌がったため、平日は実家、週末は自宅に戻り家族3人で過ごすことになりました。
私の両親は、息子の不登校についても何も言わず、今まで通り接してくれて、不登校を問題にすらしていませんでした。
「こんなことくらい大したことじゃない。○○(息子)みたいな良い子はいないよ。こんな程度で子育てが大変なんて言ってたらバチが当たるよ」って母は笑っていました。
それから、私の兄の壮絶な反抗期の体験を話して聞かせてくれて、
「あの頃、何度も2人で死のうと思ったけど生きてて良かった。お兄ちゃんを殺してたら可愛い孫たちにも会えてないし、社会に与える損失は大きかったよ。」って私なら絶対に耐えられそうにないほど辛い話を笑い話に変えていました。
兄は破天荒な性格で、すごーく親に迷惑をかけていたけど、今では兄弟の中で一番親孝行をしたがっているし、お金も家族の中で一番稼ぐようになりました。
ことあるごとに、両親を食事に誘ったり、旅行に誘ったりと両親をとても大切にしています。
兄の姿は、私の希望になりました。
兄もすごく繊細だったけど、その繊細さを武器にして兄にしかできない仕事をしている。
それに、
母に出来たんだったら、私にだってできる。
息子が将来、ちゃんと自立して人様のお役に立てるように、目の前の息子としっかり向き合おう。
私が諦めなければ、息子の手をはなさなければ、必ず思いは伝わるから大丈夫。
私もこの経験を笑い話にしてやろう!
実家でお世話になると、困ったことが1つ。
実家では、一日中テレビをつけっぱなしにしていて、私が消しても消しても、父がテレビをつけました。
両親は電子機器の制限や禁止には協力的ではなかったので、「何がダメなの?別にいいでしょ」って感じで、息子には電子機器を全面的に禁止していましたが、実家ではテレビが見られる状態でした。
息子の電子機器の依存が酷くなるんじゃないかってすごく怖くて…その頃は不安で不安で仕方がなかったです。
でも、隣で一緒にテレビを見ていると、テレビに映る人のモノマネを息子がするようになりました。
それが、すごく似てるし面白くて。
ずっと気付かなかったけど、「息子ってこんな力があったんだ!」って感動しました。
1つ息子の力を見つけると、次々にたくさん息子の力が見つかり、こうやって息子の力を探していけばいいんだってわかりました。
今までは、頭ではわかったつもりになってたけど、これは頭で理解するものではなくて、身体を通して理解するものなんだってやっとわかりました。
それからは、お互いモノマネをしあって、お腹を抱えて大笑いして、たくさんコンプリメントもしました。
すると、息子がとても嬉しそうに私の言葉を受け取っていくんです。
伝える言葉なんて下手でもいいんだ。
気持ちはちゃんと届いているんだな。
気持ちが通じ合っている時に伝える言葉には魔法があるみたいに自信の水がたくさん入っていくように感じました。
今まで、なかなかコンプリメントをしても息子に届かないもどかしさがあったけど、息子の心の深い深いところに届いた感じがしました。
お母さんはあなたの力が見えますよ。
とっても素敵な力が見えますよ。
あなたはどんな問題だって乗り越える力がありますよ。
だから大丈夫。
お母さんはあなたのことを信じています。
息子の力を見ることで、私の中の不安のドキドキが減っていくのを感じました。
そして、息子の力を使って何ができるのか考えるとワクワクしてきました。
このドキドキは不安のドキドキじゃなくて、ワクワクのドキドキ。
息子と心を繋げてコンプリメントをしていく。
一緒に楽しみながら、
すると自然と笑顔になっている。
息子と一緒にいる時間がとにかく楽しくて、息子の笑い声がとっても愛おしくて。
そんなかけがえのない時間を持てたことは、息子が不登校にならなければ味わえませんでした。
息子は安心できる居場所にいたから、表情も豊かに素直な表現ができるようになってたのかな。
安心できる居場所ってとても大切なんだなって実感しました。
まだまだ身体症状も酷く、大変な状況ではあったけど、少しずつ変化を実感できるようになっていきました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?