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文学

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文学作品の感想、考察、解釈。 米文学のみならず、日英文学も含む。 「これからこれを読む/観る」は含めていない。
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#サリンジャー

J. D. Salinger "A Perfect Day for Bananafish" が目指すこと

J. D. Salinger "A Perfect Day for Bananafish" が目指すこと

はじめに

 J. D. Salingerの短編集 "Nine Stories" の1作目に "A Perfect Day for Bananafish"(柴田元幸訳:「バナナフィッシュ日和」)という作品が収録されている。まずbananafishとは何かということになるが、Seymour Glassは次のようにSybil Carpenterに語っている。

当然のことながら、これは実在しない架空の

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J. D. サリンジャー『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア―序章―』感想

J. D. サリンジャー『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア―序章―』感想

『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章』 (野崎孝・井上謙治 訳、新潮文庫)

『フラニーとズーイ』以上に読みにくくわけのわからない作品。

「大工よ―」はシーモア結婚式の日の様子をバディが書いたもの。が、シーモアは出てこない。簡単に言うと、ドタキャンしたから。何が書かれているかというと、バディが取り巻かれている環境。シーモアがどのような人物か、会話を通して少しずつ明らかになっていく。

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2024年に読んだ/観た米文学作品まとめ

2024年に読んだ/観た米文学作品まとめ

今年読んだ/観た米文学作品をまとめました。感想や考察を書いた作品には作品名にリンクを貼り、その記事に飛べるようにしていますので、ぜひお読みください(この記事の目的は、このように羅列をしていく中で私自身が「これ読んだなあ」と振り返ることです。それ以上でもそれ以下でもありません)。
※公開後、一覧の下にコメントを追記しました。

①トニ・モリスン『青い眼がほしい』

②エドガー・アラン・ポー『ポー短編

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J. D. サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』感想

J. D. サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』感想

サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』(金原瑞人 訳、新潮文庫)

作品ごとに何かしらを述べた『ジム・スマイリーの跳び蛙』の記事とは異なり、ここでは短篇集全体について述べることにする。

サリンジャー短編集(和訳で文庫として出ているものとしてはこれで最後)。

収録されているうちはじめの6作はホールデン関連。「マディソン・アヴェニューでのささいな抵抗」と「

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