シリーズ: 学校の勉強は世の中で役に立つのか?その①「シートベルトかピカチュウか。」
よく言われることの一つに、「学校で習ったことは世の中では役に立たない」という話があります。このことはとても深い問題を抱えているので簡単に片づけられる話ではないのですが、僕は全然そんなことはなく、むしろ役に立てようとしていないに過ぎない、と思っています。あらゆる側面から証拠をあげることは出来るのですが、例えば分かりやすい例で「交通事故に逢った際、シートベルトをしていなかった人の死亡率は、ベルトをしていた人の●●倍であった」といった話があります。
短絡的に考えてしまうと「だからシートベルトをしていた方が安全である」ということになってしまいがちですが、実はこのことからだけでは、シートベルトをしている方が安全だとは言えないのです(もちろん、結論的にはシートベルトをしている方が間違いなく安全かつ、そもそも義務ですので、ちゃんとベルトをして下さいね)。
例えばですが、「ピカチュウのぬいぐるみを車に置いている人の死亡率は、置いていない人の数分の一である。だからピカチュウはご利益がある」という話になると分かりやすいと思います。仮に死亡率が低いことが事実だったとしても「ピカチュウはご利益がある」はいくらなんでも違うとすぐわかることでしょう。これがシートベルトと言った「普通に考えると装着した方が安全」という先入観のある事象となると途端に思考停止してしまうのです。
どういうことかと言うと、シートベルトをしない人はそもそも遵法精神が低く、速度違反や乱暴な追い越し運転など危険行為を頻繁に行う傾向が強い可能性があります。その場合、実は多くの死亡事故に結びついた原因となる要因はシートベルトではなく、運転者の気質かもしれないのです。このことを統計学では「原因となる変数・要因が統制されていない状態」と言います。
本当にシートベルト装着の有無が死亡率に関係しているかどうかは、場所・時刻・天候・明るさ・周辺状況・環境などすべての要素がほぼ同じ状況の事故を複数比較して死亡率を比べるというのが最も正確なやり方です。こんなことはもちろん不可能なので、「確からしい」原因を探ることになるわけですが、先ほど書いたようにそもそも事故の原因として「運転者の気質」といった要素の方が重大事故を起こす要因として大きければ、シートベルトの有無は関係ないという結論だって出せてしまうのです。
統計学をしっかり学んだ人であれば、このような「なんとなく確からしい」説明はすぐに見破ってしまいます。未だによくある、「絶対儲かる〇〇」といった話でも、基礎的な数学や統計の知識さえあれば絶対にそんな話はないとすぐ分かるはずです。
学校で学んだことのすべてが社会でそのまま生かせるとは限りませんが、少なくとも多くの局面で役に立つことは間違いありません。ぜひ学校で習ったことを現実世界でどうやって活用するか、そういった考えに立ちたいものです。