![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150908710/rectangle_large_type_2_d6f654664f52f79ad0d76af840c0fd99.jpeg?width=1200)
『詩』八月 ⎯ 蝶の通る道 ⎯
蝶の通る道がある
蝶と妹と三人で
少年は愉快に駆け比べをする
道のそこここで白百合が
懸命に伸びをしてそれを見ている
白百合が祈りに似ているのは
八月だからだ
少年が複葉機に似ているのは
八月だからだ
(決してドローンなんかでなく)
妹が前に出ようとすると
少年がそれを押し止める
狂気という名の短剣が
少年の懐で汗に濡れる
八月でさえなければ ⎯⎯
駆け比べは終わったろうか
息を弾ませながら
少年は蝶と妹に笑顔を向ける
片袖で汗を拭いながら
妹も少年に笑顔を見せる
八月がふたりを包み込む
蝶はどこへ行った?
少年は妹に
道の向こうを指し示す
轍の真ん中に雑草が伸びて
それは輝くタワーとなって
果てない列となって
霞のなかに消えている
そのとき少年は思い出す
自分が蝶であったことを
妹が蝶であったことを
妹が懐かしい歌を口ずさむと
少年の懐で短剣が
古いオルガンの音色に変わる
歌に合わせて
どこやらから蝶が戻ってくる
八月のまんなか
ここは蝶の通る道なのだ
日本人にとって八月はやっぱり特別な月なのだとおもいます。
そんな気持ちを詩にしてみました。
今回もお読みいただきありがとうございます。
他にもこんな記事。
◾️辻邦生さんの作品レビューはこちらからぜひ。
◾️詩や他の創作、つぶやきはこちら。
◾️大して役に立つことも書いてないけれど、レビュー以外の「真面目な」エッセイはこちら。
◾️noterさんの、心に残る文章も集めています。ぜひ!