『詩』祝祭
イングリッシュガーデンを切り抜いて
窓辺に飾る 豊潤な
花の香りと色彩たちが 遠景の
なだらかな紫の峰と共演をする
青空と 涼やかな風がある それらのものたちを
自ら祝福するかのように
私は歌を歌いたい
これらの美しいものたちの前で
君にはダルシマーをお願いしよう
花々の香りと色彩の その一部分でできた
蜘蛛の糸のように繊細な弦を 慎重に
それでいて力強く 君のマレットが叩くのを
私は待っている
潮の香りが包んでいる 西の方の
小さな田舎の港町で
ターミナル駅に程近い
都会のオフィスビルの一室で あるいは海を越えた
古い歴史と伝統の街で
私は私を生きてきた
私を通り過ぎた人や
私が離れていった人や たくさんの
仕事や遊興や生活が
すべての人と同じように私にもあった
私は喜び 私は笑い 私は涙し
時には激しい怒りに身悶える夜もあった
そうやって 私は私を生きてきて
今ここにいる
切り取られたイングリッシュガーデンと 窓の向こうで
共演を求めてやまない風景と
君たちとともに この避暑地の一室に
枠の白い 外開きの窓を開いたら
花の香りも色彩も
流れていってしまうだろうか? 君の叩く
ダルシマーの弦は失われて この部屋に
失意だけが残るだろうか? 私の今日までの人生の
ある一時期のような顔で
いいえ、と花々が首を振る
香りも色も押し留めようと 窓辺で風が
行き過ぎるのをためらっている そうして
君のマレットが最初の一音を
慎重に なおかつ大胆に
香りを弾いて叩き出す 私の今日までの人生と
このひとときを
荘厳に 祝福するごとき輝く音色を
なんとまあ、切り抜かれた
窓辺のイングリッシュガーデンに
人生が装飾されているかのようだ
ある作品からインスピレーションを受けて詩作をするのはこれが2度目です。(1度目はこちら)
このときは、ひとつの作品というよりはakaiki_shiroimiさんの「魚のアート作品集」というページに触発されたものでしたが、今回は押花作家フルレットさんの、こちらの「避暑地にて」というタイトルの作品からのイメージ。
とは言え、「プレバト」で夏井先生がよくおっしゃっているように発想をどれだけ飛ばすかが重要、ということで、押し花からイングリッシュガーデンに飛んでみました。内容は「避暑地」からの発想ですが、僕自身とは1ミリも(!)関係ありません・・・と言ってしまうとアレなので、わずかではありますが、自分のことも意識はしました。
中に出てくるダルシマーですが、打弦楽器、とでも言うのでしょうか、マレットあるいはハンマーという棒で弦を叩いて音を出す楽器です。noteで調べたところヒットしたのがこちらの方。
小松崎健さんというハンマーダルシマーの奏者です。
こちらのページ、10年も更新されていないようなのでリンクはどうかな、ともおもったのだけれど、実は、小松崎さんとは一度だけ、僕はお会いしたことがあるんです。
もう30年以上も前になるのでご本人は覚えていらっしゃらないとおもいますが、新婚旅行で北海道へ行った折、小樽運河の橋のたもとでダルシマーを演奏していらっしゃった小松崎さんをお見かけし、その音色にすっかり魅了されて、CDを購入したのでした。ダルシマーという楽器を知ったのもそのときです(そのCDがこちら)。
その後もう一度、名古屋でコミュニティペーパーの制作に携わっていた際、取材もしたことのある、ある喫茶店で小松崎さんの演奏会があると聞いてぜひ行きたいとおもったのですが、どうしても時間が合わず行くことができませんでした。
ただ、ダルシマーという楽器そのものはいろんな場所で耳にする機会があり、好きな音色なので今回詩の中に取り入れてみました。
ダルシマーの音色は、小松崎さんのYoutube動画他、いろいろと聞くことができるようなので、よろしければぜひご覧になってみてください。
あと、#なんのはなしですか の亜流? として 「なんの花? 詩? ですか」を書きたくて、この機会に。
今回はいろいろなことが繋がってできた詩です。いかがでしょうか?
今回もお読みいただきありがとうございます。
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