No.10 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」
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昼食を終え、COMVIM CENTERにあるオフィスに向かう。オフィスは、14Fと聞いている。レタントン側のエレベーターホールから入ると、エレベーターが両側にある。向かって左側のエレベーターに乗り込み、ボタンを押そうとすると、14Fがない。
(あれ、14Fないじゃん。逆側?)
そう思っていると、エレベーターは、下層階に向けて出発してしまった。
(あらら。まあ、下で乗り換えれば良いか)
B2に到着し、逆側のエレベーターに乗り換える。今度は14Fがあった。早めに自宅を出ていたので、時間も問題ない。
14FのSOCIAL VIETNAMオフィスの前に着き、軽く深呼吸をしてからオフィスに入った。中には、既に黒川社長が待っていた。
「よお!来たか。ちゃんと寝られたか?」
「お疲れ様です!はい!ぐっすりと!」
「じゃあ、早速始めるか、先に広い方の会議室に入っておいてくれるか?」
「はい」と元気良く返事をして、ノートPCを持って会議室に入る。すぐに黒川社長も入って来た。
「早速だが、明日から、1週間、ハノイ支店長の木崎と一緒に引き継ぎ訪問をしてもらう。木崎から連絡があるから、指示にしたがってくれ。」
「はい!承知しました!」
木崎支店長は、元々SOCIAL VIETNAMの社長だった。ホーチミンでの4事業を成長させた功労者だ。僕が入社した時には、既にベトナムに渡航していたため、全く面識はない。黒川社長がホーチミンに駐在し、木崎支店長は、ホーチミンで4事業を成長させたノウハウをハノイに移植するべく、ハノイに駐在する事になった。
その後、引き継ぎを終えた後の当面の動きなどを打ち合わせた。事前に聞いていたが、僕は人材研修、人材紹介、IT部門の管理兼営業として携わる事になった。ITは日本で行っていた事業の延長なので、何点か確認すれば問題ないが、人材研修と人材紹介は全くの素人だ。
「実務に関しては、明日から同行する木崎支店長によく聞くように」
「はい!承知しました!」
「あとは、今後、毎週土曜か日曜にミーティングをやるから、そのつもりで空けておいてくれ!」
「はい!」
この時は、やる気に充ち満ちていた為、土日のミーティングについても特に思うところはなかったが、なかなかにハードだ。
「よし!こんな所か。お前、この後まだ特に予定はないよな?」
「はい!全くフリーです!」
「今後一緒に働く、田島さんがこの後オフィスに来るから、市内を案内してもらえよ。」
「はい!ありがとうございます!」
(田島さん?また全然知らない方だ。海外事業は、日本の事業とは完全に別組織なんだな。)
噂をしていると、長身の女性がオフィスに入って来た。
「お疲れ様で〜す♪♪」
少し節のついた独特のトーンだが、爽やかに挨拶された。
「初めまして!田中と申します。宜しくお願いします!」
「田島です♪こちらこそ宜しくお願いしま〜す。」
「田島さん、田中がまだこっちに着いたばかりだから、市内を簡単に案内してもらえますか?」
「は〜い、分かりました。じゃあ、早速行きましょうか!」
「はい!では、黒川社長、ありがとうございました!」
「おう!またな!」
田島さんに付いて、オフィスを後にする。
「市内はまだ見て回ってませんか?」
「はい、ほとんどまだです!今朝、グエンフェ通り〜サイゴン川辺りを見て回りましたが。」
「そうですか!じゃあ、ビンタン市場に行きましょうか!」
「ビ………市場?はい!お願いします!(よく分からないけど…)」
とにかく、田島さんに着いて行く。COMVIM CENTERから、ビンタン市場までは、徒歩で15分程。道中、田島さんを質問攻めにしてしまった。田島さんは、SOCIAL VIETNAMで採用されたそうだ。元々、別の職種でベトナムで数年働いていたそうだが、日本へ帰国する必要があり退職した。その後、落ち着いた後にSOCIAL VIETNAMの求人に応募し、採用されたとの事だ。
(どうりで日本にいたSOCIALの先輩達も知らないはずだ。吾妻さんにしろ、田島さんにしろ、日本のSOCIALカルチャーとは違う人達だから、関わるのが新鮮で良いな!)
「田中さん!着きましたよ!これがビンタン市場で〜す♪」
「おー!これが!活気がありますねー!」
「中に入ると、もっと凄いですよ!貴重品に気を付けて、さあ行きましょう♪」
田島さんにリードされ、後ろを付いて行く。
ビンタン市場の中には、外とは比べ物にならない位のお店が犇めき合っていた。ガヤガヤと観光客相手にベトナム人のおばちゃん達が客引きをしている。よく聞くと、
「お兄さん!安いよ!買って行って!」
「You can fit it!! Plz look around!!」
(おお…流暢な日本語に、英語。このおばちゃんにお姉さん、たくましいな〜。)
感心しながら、田島さんとはぐれないように付いて行く。例に漏れず、僕にも客引きが来たが、ベトナムに来てからボラれ続けているので、財布の紐は、鋼鉄の如く固くなっていた。一通り見て回った後、
「田中さん、何か欲しい物はないんですか〜?」
「い、いえ、僕は大丈夫です。。」
「???」
頑なに固辞する僕に、一瞬怪訝な視線を向けたが、何事もなかったかのように話題を移す。
「ここは、オフィスからも近いので、必要な物があったら、ここに買いに来ると良いですよ!さて、田中さん、お腹空きません?」
「はい!お腹減ってます!」
時刻は、既に16:30を回っている。
「じゃあ、オススメのフォー屋さんがあるので、食べに行きましょう!」
「はい!フォー食べたかったので、ぜひ!」
僕らは、タクシーを捕まえて、乗り込んだ。田島さんが、タクシーの運転手に名刺のような物を見せて、何か言っている。やがて、タクシーは動き出した。
「今から行くお店は、私の一番オススメのお店なんです!田中さん、好き嫌いはありますか?」
「いえ!僕は何でも食べられます!今朝は、家の近くのブンチャーを食べました!」
「そうですか!葉っぱも入れて食べました?」
「はい!…あれ?でも、正確には、葉っぱで巻いて食べましたけど。。食べ方が分からなくって。ハハハ。」
「ですよね!私も始め分からなくって!一応あれは、つけ麺なので、つけ汁に葉っぱを入れて、麺を付けて食べるのが一般的みたいですけど。」
他愛もない話をしていると、目的地であるフォー屋さんに到着した。ここでも田島さんがリードして、テキパキとオーダーしてくれる。
(田島さん、仕事が出来そうな人だな〜)
「ここは、メインメニューが一つしかないんです。サイドメニューは一応あるんですけどね!でも、いつも私もフォーしか頼みません。本当に美味しくって!」
「楽しみですね〜!」
お店は、まだ17:00にも関わらず、かなり人が入っている。待っている間、周りの人が美味しそうにフォーを食べる様子を見ていたら、余計にお腹が減ってきた。店員さんが、二人分のフォーを運んで来た。
「うわー!美味しそう!これは、流石に特殊な食べ方とかないですよね?」
ブンチャーの件で少しナイーブになっている僕が聞くと、
「ないですよ!ハハ。強いて言えば、お好みでこの葉っぱ類を入れて食べます。」
「なるほど!」
そう聞くと、ワシっと手に収まるだけの葉っぱやもやしをフォーの器にブチ込んだ。田島さんも、(え、いきなりそんなに行くの?)と目が点だ。僕はそれに気付かず、
「頂きまーす!(ズルル)うん!美味い!」
「良かったです〜!田中さん、何だかベトナムでもやって行けそうですね!」
「え、そうですかね?」
「はい!食べた事のないフォーに、山盛りの葉っぱ入れて食べられれば、きっと大体大丈夫ですよ!やっぱり、食が合わないと大変ですからね〜」
「確かに。食が合わない人は大変そうですね。」
その後も、あまりの美味しさに、一気にフォーを食べ終えた。
「美味しかった〜。これで、フォーも制覇!」
「ベトナムには、他にも美味しいご飯が沢山ありますからね!色々チャレンジしてみて下さい!」
帰りの方面が一緒だったので、タクシーに乗って、一緒に帰った。田島さんが住んでいる所は、僕の住まいよりも少し遠いらしく、今日のお礼を言い、途中でタクシーから降りた。
自宅に帰り、メールをチェックすると、木崎支店長からメールが届いていた。明日の待ち合わせについてだ。「南屋」という木崎支店長が宿泊されているホテルのロビーに、朝6:30に待ち合わせとの事だった。「承知致しました。明日からお世話になりますが、何卒宜しくお願い致します。」と返信し、木崎支店長からも、「宜しく」とのメールを頂き、やり取りを終えた。
(明日から、ついにベトナム初仕事だ。分からない事だらけだから、新人に戻った気持ちで取り組もう!)
そう決意をして、待ち合わせ場所である「南屋」の場所を確認し、明日の準備を終え、その日は早めに眠りについた。
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