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クラシックを貶す人、貶さない人

Xでめんどくさいことを書いてしまった😅

これは実際に以前から不思議に思っていて、クラシックのアーティストに否定的なことを書く(つまり「貶す」)ことにものすごく嫌悪感を表明するクラシックファン(クラオタと呼ぶと嫌がりそうだからこう呼ぶ)のタイムラインを見ると、クラシック以外のことには平気で文句を言ってたりする。

何なのだろう、この徹底のなさは。

「他人をむやみに批判すべきではない」ってことを言ってるのではなかったのだろうか?

私は否定的な意見は全然問題ないと思っている。
ただ、Xでは結構な確率で本人がエゴサーチしているので、フォロワー数の多い本人に引用ポストされたりする炎上リスクはある。

だから私は、熱狂的なファンのいる現役アーティストについては極力触れないようにしているが(まさに地雷である)、すでに物故したアーティストならそこまで気を遣う必要はあるまいと思っている。

だって、「黒澤は嫌い」とか「三島は苦手」とか当たり前に言うのではないだろうか。それなのにクラシック界隈では「好きな人もいるのに、わざわざ否定的なことを言う意味がわからない」などと言われる。

こんな言説を聞くと、芸術ジャンルとして未熟なんだなと思う。それとも私が知らないだけで、文芸界隈も「川端康成好きな人もいるのに、川端嫌いって言うな」とか言われるんだろうか。

とはいえ、貶し方に滲み出るのが人間性、品格である。
私はボロクソにこき下ろしてるファンとは絡みたくないので、フォローしないようにしている。
「○○は聴く価値がない」とか「お金を無駄にした」とかその類。

私はときどき「否定的なことを書いてあるけど、読んでいて嫌な気持ちがしないのがいい」と言われる。それはありがたい。
芸術(パフォーマンス)の批評と人格の否定は別物だ。

「ファンなら褒めることはあっても、貶すなんてもってのほか」みたいな気運が苦手。
「自分は批評は書きません」と言ってる人がコンサートの感想を平気で書いている。
同じようなもんじゃないの? 貶したら「批評」で、褒め称える行為はファンの純粋な言動ってこと?
私からすれば好意的な感想だって批評のうちだと思うが……。

人間生きていれば、周りの人や物事について意見や感想を述べたくなる。特にSNSなんて、ROM専の人でなければ日々何かしら発信しているわけだから、わざわざ不特定多数の人向けに発信する内容って意見や感想であることが多い。

私は否定的な内容も含めて、そういう諸々を発信したい。その方が人間らしいと思うし、「クラシック関係の批判はしないけど、ニュースや外食の批判は書くね〜」みたいな“別腹”感覚は私には理解できない。

結局、「クラシックについて否定的なことを書かない」というのが本人にとって一種の美学になっているのだろう。「それでこそクラシックファン。あれはよくてこれはダメ、みたいに言ってるのはファンではない。ただの評論家気取り」ってことなのかも。

私はスコアを見て聴いてないので音楽の理解も浅く全然評論家ではないと思ってるのだが(意外とそれが伝わってなくて評論家気取りだと思われたりする)、推しのアーティストにも平気で否定的なことを書くから(高関健のマラ5やカーチュン・ウォンのブル9)、ファンにはなりきれていないのだろう。
みうらじゅんが「全肯定するのがファン。あれはよくてこれはダメとか言ってるのはファンではない」と言っていたらしい。
いまの芸術受容はファンどころか推し文化だから、推しのやることは全肯定、仮に不満があっても異議を唱えるなどもってのほかなのだ。

そうはいっても、いまはレビューや口コミが溢れる世の中。誰だって一度はAmazonやGoogle mapのレビュー書いたことあるんじゃないの?
しつこいけど、クラシックについては書かないのにレストランのことなら悪く書けるってのが私にはわからないなぁ。だって「私はプロみたいに演奏できないので、批判的なことは書きません」と言ったところで、料理人だってプロですよ?  

私はマケラに対しても批判的なことを書いてるが、それは実際に二度聴いてるからでもある。実際に聴いてないアーティストを批判してもなぁと思う。

マケラなんか昔のカラヤンみたいにみんなが褒め称えてるから、貶す人がいたっていいのでは?  それこそ批評の多様性というか、よく思わない人の理由からそのアーティストの芸術を捉え直すきっかけにもなるのではないかしら。

私がマケラを苦手にしているのは、マーラーにしてもショスタコーヴィチにしても楽しそうな表情でゲームをプレイするように指揮する姿が音楽に込められた作曲家の思いと相反するように感じるからだ(もちろん見た目だけの話ではなく、音楽自体も合わなかったが)。

マケラが好きな人はあの指揮姿をどう思ってるのだろう?  そこから発展して「終始ニコニコしながらショスタコーヴィチを指揮するのはアリか?」といった問いも生まれる。
否定的な評価は、音楽について考えるきっかけにもなるというのが私の見解である。

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