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7~9月の読書記録

最近お気に入りの読書スタイル。
それはNintendo Musicほっと一息のプレイリストを流しながら、コーヒーを飲みつつ読書。

アロマキャンドルやお香があれば、なお良し!

できるだけネタバレを伏せて書いていますが、
一部ネタバレも含みます。


本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む(かまど/みくのしん)

今年読んだ本の中で、いちばん読んでよかったと思えた本。

本を読んだことがないオモコロライター・みくのしんさんが『走れメロスを読むという体験を、
オモコロライター・かまどさんが記事にしたところ、SNSで大バズり。

『走れメロス』の記事に加え、『杜子春』などの新作を書籍化したのがこの本だ。

こんなに全力で、楽しそうに、しかもティッシュを駆使しながら『走れメロス』を読める人がいたのか…

読書が苦手なみくのしんさん。
だけど感受性が唯一無二
本の中の主人公と本気で会話し、本の中の景色や気候を現実のように味わう。

”路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。

みくのしん 「黒い風……すごい表現だね。純粋なメロスなのに、白とか赤じゃなくて”黒”で例えるんだ」
かまど 「たしかに。泥だらけでなりふりかまってないイメージなのかな?」
みくのしん 「言われてみれば、キレイなだけじゃないガムシャラな勢いは”黒”の方が感じるかも」
かまど 「こいつ、本当に本読むの初めてか?」

本を読んだことがない32歳が初めて「走れメロス」を読む日 オモコロブロス

自分一人ではこんな読書体験はできない。
この本を読むと、みくのしんさんの豊かな感受性を借りて読書ができる。

そしてなんと『変な家』の作者である雨穴さんが、この本のために書き下ろしで短編小説を寄稿している。

かまど 「雨穴が突然 やっぱり私が何か書きましょうか? と言ってきた」
みくのしん 「そんなことある???」
雨穴 「もう、せっかくなら行けるところまで行ったれ!と」

【出版記念】みくのしんとかまどが雨穴と話す日 オモコロブロス

雨穴さんがわざわざ書き下ろしまで寄稿した理由が、
みくのしんさんへの怪異の恩返しで笑ってしまった。

塾講師として小中学生に国語を教えていた時期もあったので、その時期に戻ってこの本を薦めたい…!

「こんなに自由に本を読んでいいんだよ!」と伝えたい。


黒蜥蜴(江戸川乱歩)

自分を読書沼に引き摺り込むきっかけになった江戸川乱歩。
黒蜥蜴くろとかげ』も最後までハラハラドキドキしながら一気に読んでしまった。

黒蜥蜴と呼ばれる不思議な女性と、
名探偵・明智小五郎による、追いつ追われつの物語。

暗黒街の女王とも呼ばれる黒蜥蜴。
左腕にトカゲのタトゥーを入れているのが名前の由来。

今にもそれが、肩から頸、頸から顎、そして彼女の真赤なヌメヌメとした、唇までも、這いあがって行きそうに見えながら、いつまでも同じ腕にうごめいている。
真にせまった一匹のトカゲの入墨であった

黒蜥蜴

黒蜥蜴のタトゥーの描写だけで、この表現力!
色っぽいながらも、只者ではなさそう。

そんな黒蜥蜴は知り合いの青年から
「ひとを殺してしまったけど、捕まりたくないから逃走資金貸して。」
と相談を受ける。

黒蜥蜴は「逃げ出すなんて愚の骨頂」とお説教。
自首を勧めるのかと思ったが、黒蜥蜴はそんな単純な女性ではなかった。

「あなたが死んでしまうのよ。雨宮潤一という人間を殺してしまうのよ」
「え、え、なんですって?」 
潤一青年は、あっけにとられて、ポカンと口をあいて、暗黒街の女王の美しい顔をみつめるばかりであった。

黒蜥蜴

こうして暗黒街の女王と名探偵の知恵比べ対決が幕を開ける。

黒蜥蜴の華麗な手腕に
「いいぞ、もっとやれ!」と思ってしまう自分すらいた。
大悪党なのにセクシーでたまに情をみせるから、なんだか憎めない。
まるでルパン3世の不二子ちゃんのよう。

序盤にトリックと黒幕が書かれているのに、
最後まで結末が気になりページを捲る手が止まらなかった。


破戒(島崎藤村)

身分差別の名残が残っている明治時代の物語。
穢多えた“という身分のものは差別を受け、
普通に生活することすら難しい。

主人公の丑松うしまつも“穢多“の出身であった。
だが丑松は父親の"戒め"を守っているおかげで、小学校教員として普通の暮らしを送っている。

『たとへいかなる目を見ようと、いかなる人に邂逅めぐりあはうと決して其とは自白うちあけるな、一旦の憤怒いかり悲哀かなしみに是この戒いましめを忘れたら、其時こそ社会よのなかから捨てられたものと思へ。』
斯う父は教へたのである。

破戒

友達もいるし、恋もできる。
でも戒めを破ったら、一瞬にしてすべてを失うという不安定さ。

そんな丑松には尊敬している人がいる。
解放運動家の“猪子いのこ“という人物。
猪子は身分を隠さず、差別と戦っていた。

主人公はそんな猪子に憧れの気持ちを抑えきれなくなっていく。
「自分のことを知ってほしい。
でも戒めを破るわけにはいかない。」

主人公は戒めを破るのか、守り続けるのか
葛藤し続ける主人公を、手に汗握りながら見守った。

明治時代のこの文体に慣れるまではかなり疲れたけど、
その価値がある読書体験ができた一冊。


好きを言語化する技術 (三宅香帆)


「これはnoteを書く上で参考になる!」と思った本だったので、
単独で読書感想文noteを書いた。

気になる方は良ければこちらを読んでくださると嬉しいです!

蜘蛛の糸・杜子春(芥川龍之介)

みくのしんさんが芥川龍之介の本を読んでいるのを見て
「芥川龍之介、自分でも読みたい!」
となり、中学生時代に買ってもらったこの本を本棚から取り出して読んだ。

芥川龍之介の本は難しそうに見えて、児童向けの話も多くて読みやすい。

有名な『蜘蛛の糸』『杜子春』『トロッコ』などを含めた短編集で、
子供から大人まで楽しめるような物語がピックアップされている。

中学生の頃は『蜘蛛の糸』が大好きだった。
初めて読んだとき
「良いことをしたら、ちゃんとお釈迦様が見てくれてるんだ」
と嬉しくなった。

犍陀多かんだたにならないような生き方をしよう」
と、その後の人生の教訓になっている。

大人になってから好きになったのは『杜子春』だ。

中学生の頃、親のありがたみや愛情を全然わかっていなかった。
大人になってからこのシーンを読んでボロボロ泣いた。

「心配をおしでない。私たちはどうなっても、お前さえ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王が何と仰っても、言いたくないことは黙って御出で」

杜子春

自分を犠牲にしてまで子供を守ろうとする親の愛。

本当の生き方を見つけた杜子春。
自分も人間らしい生き方をしていこう。


蜘蛛の糸・地獄変(芥川龍之介)

自分の中で芥川龍之介ブームが再来。

この短編集に収録されているのは、大人向けの物語が多め。
特に印象的だったのは『地獄変』と『邪宗門』の2つ。

『邪宗門』では『地獄変』に登場した大殿様の息子が登場。
父親と性格が正反対で、心優しく冷静沈着な若殿様。
そんな若殿様に好きな女性が出来て、良い感じになる。

そんな中いかにも怪しい“摩利信乃法師まりしのほうし”が、不思議な力を使い信者を獲得して勢力拡大中だった。

そして摩利信乃法師は、若殿様が想いを寄せる姫様に接触…!
他のお坊さんと能力者バトルにまで発展…!!
印を結んだり、スタンドを発現させたりなんでもアリ…!
というめちゃくちゃアツいところで

""未完""

「えーーーー!!嘘だーーー!!!嘘だと言ってくれ!!芥川!!」
と一日中嘆いた。

タイムスリップできるなら、芥川龍之介の生きている時代にいってこの続きを書かせたい。

「こんな思いをするくらいなら、読まなければよかった」
とまで思った。

ロッキン・ホース・バレリーナ(大槻ケンヂ)

筋肉少女帯のオーケンによる青春ロック小説

これは最近買った小説ではなく、高校生の頃に買ったもの。
高校生の頃は軽音楽部でロックバンドをやっていたこともあり、
ロック小説を持ち運んでいるのがカッコいいと思っていたのだ…

大人になってから初めて最後まで読んだ。
なんで高校生の頃にちゃんと読まなかったんだろう…

ロックバンドのバカな男3人組の耕助・ザジ・バン
何にでも領収書を切るマネージャーの中年オヤジの得さん
そして途中で拾ったビジュアル系バンドを追っかけるゴスロリ娘の町子

この異色の組み合わせでメジャーデビューをかけたツアーをするという物語。

馬鹿なことをしてはしゃぎながらも、ライブハウスで自分たちの音楽を奏でる3人組の姿を見て、
なんだか懐かしい気持ちになった。

高校生の頃に読んでいたら、彼らの立場になって読めたのかな…

ザジが吠える。バンが笑う。耕助が歌い続ける。
一体となったうねりは野原がステージを去るまで続いた。

ロッキン・ホース・バレリーナ

でも今の自分はマネージャーの中年オヤジの立場なのだ。
このマネージャーは、夢に敗れたロックオヤジ。
過去の自分を、この今を生きるロックバンドの少年たちに重ねているんだろう。

闇雲で、怖いものなど何もなくて、でもいつか何かに怯えていたあの頃の俺たちだ。

ロッキン・ホース・バレリーナ

かっこいいロックおやじの姿を見て、なんだか昔のバンド仲間に会いたくなってしまった。
10年ぶりに連絡を取ってみようかな…


こころ(夏目漱石)

プレミアムカバーや期間限定カバーに弱い

書店で真っ白なカバーに惹かれて購入。
ネットで本を買う機会も増えたけど、書店じゃないとこういう買い方をできないよね。

主人公は"先生"と慕う男性に出会い、グイグイ距離を縮めていくのだが…
いかんせんコミュ力が高すぎる!

先生は人と関わるのが苦手で、影のある人物。
とにかく生きづらそうな人間なのだ。

人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手をひろげて抱き締める事の出来ない人、
――これが先生であった。

こころ

そんな先生に主人公は惹かれて、先生がこっそりお墓参りをしているところにまで突撃する。
これには先生も困惑…

自分はどちらかというと先生側の人間。
だから、この何にでも踏み込んでくる主人公が少し苦手だった。
だけどこの主人公だからこそ、先生の閉じ切った“こころ”を開かせられたのかもしれない。

そして苦悩の果てに先生が書いた手紙には愛情・嫉妬・友情すべての感情が詰まっていた。

妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存して置いて遣りたいのが私の唯一の希望なのですから

こころ

これが『こころ』のブックカバーが白だった理由…
思わず本を抱きしめてしまった。

MICUNOSIN 生(みくのしん)

表紙の英文、なぜか読める・理解できる!

『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』のみくのしんさんが、コミティアで頒布した同人誌。
同人誌といっても薄いエッチなやつではない。
みくのしんさんの日記が纏められている。

みくのしんさんの入院日記が、この本の大半を占める。

入院日記というと暗い話になりそうなものだが、
みくのしんさんは入院生活と病院食を堪能していた。

病院食の食レポが秀逸で、読んでいると病院食が食べたくなるというよくわからない体験をした。

俺は飯が好きだ。
飯が好きだからこそ、このビジュアル(きざみ食)が駄目というかもしれない。
が、この飯の美味しいところを探せる。
というか、今は見た目が悪いけど、愛のある見た目なのだ。

MICUNOSIN 生

この文章が特に好き。
きざみ食に対しての愛のある見た目という表現に、心があったまる。

みくのしんさんが沼津に行った時の日記は、つらくなった時に何度も読み返した。

今でもやってる。
今でも頑張ってる。
今でも泣いてる。
今でも失敗する。
今でも反省するけど、
今でもまた間違える。
それでも、なにより、今でも続け続けている。

MICUNOSIN 生

性格は明るく、仕事も順調なみくのしんさん。
でも夢だった芸人を諦めたり、人に言えないほど悔しい経験や思いもしながら、
頑張ることを続けてきた。

続けた結果、今のみくのしんさんがある。

自分も頑張り続けようと、この本に元気をもらっている。
まさに自分にとっての人生のバイブル。

まだBOOTHで購入できます!



ここまで読んでくれた方、ありがとう…!

皆さんもお気に入りの読書スタイルを見つけて、読書を楽しんでみませんか…!

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